膨大する国債残高と個人ができるインフレ対策の2020改訂版を作りました。基本的な内容は同じですが、数字を新しいものに改訂しました。
<私と連れ合いの会話>
借金大国ニッポン
連れ合い:国は毎年借金を増やしているけど、どれくらいになっているの?
私:2018年のGDP比で言うと、日本は236だからGDPの2.4倍だね。
連れ合い:他の国はどうなってるの?
私:昔、ハイパーインフレに苦しんだドイツは、60と低い。アメリカは共和党が小さな政府を目指していたりしてるから、108。英国86、フランスは96。
連れ合い:それじゃあ、日本は異常に高いわね。ちょっと前に財政危機と言われていた南欧はどうなの?
私:イタリアが130。
連れ合い:イタリアより国債残高の多い日本って、やばくネ?
私:今は、とりあえず大丈夫。
債務残高の国際比較(対GDP比)(2018年)
(出典)IMF “World Economic Outlook Database”(2018年4月)
(注1)数値は一般政府ベース。
(注2)本資料はIMF “World Economic Outlook Database”による2018年4月時点
国債を買い続ける日銀
連れ合い:その国債は誰が買っているの?
私:少し前までは国民や金融機関が買っていた。
連れ合い:国債を買うにはお金が必要だけど、国民はお金をそんなに持っているの?
私:団塊(1947~1949年生まれ)の世代を中心にシニア世代が、いっぱい貯蓄しているから、今は大丈夫。それに、日本銀行も大量に買い続けている
連れ合い:でもこんなに国の借金が増え続けると、いつかは国民の貯蓄も底をつくんじゃない?
私:そうだね。それに、団塊の世代は引退する人が増えてて、後期高齢者の仲間に入りつつあるから、生活費や医療費などでどんどんシニア世代の貯蓄は減っていくね。
連れ合い:それじゃあ、買う人がいなくなるじゃない?
私:それで、今は日本銀行がどんどん買っている。
連れ合い:でも、いつまでも買い続けられるの?
お札を刷り続けると国が儲けて国民が損をする
私:お札を刷り続ければできるよ。お札は日本銀行券というくらいだから、日本銀行がどんどん刷れる。
連れ合い:どんどん刷るとどうなるの。
私:今あるお札の、2倍になる。
連れ合い:そうすると、みんながお金持ちになるの?
私:みんなが持つお札の枚数が増えるけど、それはお金持ちとは言わない。
連れ合い:それってどういうこと?
私:インフレになるから、お札の価値が半分に下がる。
連れ合い:マジか。それってやばくネ?ほかに変わることは有るのかな?
私:銀行預金も額は変わらないけど、価値が半分になる。そしてGDPの金額は2倍になる。国債の額は変わらないけど、国の負担は半分に減る。
連れ合い:そうすると、国は儲かるね。
私:国は儲かるけど、その反対に損する人もいる。
連れ合い:それは誰?
私:銀行に預金している人、郵便局に貯金している人、そしてタンス預金している人。現金と預貯金で半分のものしか買えなくなるからね。
連れ合い:個人が持っている財産の中で銀行預金の割合ってどのくらいなの?
私:家の金融資産のうち、5割だね。アメリカは1割、ヨーロッパは3割だから、日本は極端に現金、銀行預金と郵便貯金の割合が高い。
インフレ税、インフレタックス
連れ合い:国の借金が減るのはいいけど、それを国民が肩代わりするって、マジ、やばくネ。ところで、インフレって言えば、日銀はインフレ率を2%にしようとしているけど、それも、国の借金が減って、国民がそれを肩代わりするってこと?
私:その通り。インフレ率2%が10年続けば、複利で22%だから、銀行預金の場合には価値が2割減るってことだね。
連れ合い:サラリーマンが積み立てている財形貯蓄なら、価値が減らないんじゃない?
私:日本生命の財形貯蓄の予定利率は0.7%だけど、最近のインフレ率は1%前後だから、財形もだめだね。「財形貯蓄」でなく、「財産減損」だね。小規模企業共済の予定利率は1.0%だから、場合によっては損をするかもしれない。国民年金基金は1.5%だから、わずかにインフレ率を上回っているね。ただし、小規模企業共済などは税金の控除ができる点も考える必要がある。
連れ合い:厚生年金は大丈夫かな?
私:これからは年金の受取額もインフレで実質的に減る。年金をもらうシニア層は、マクロスライドという訳の分からない名前の仕組みがあるので、インフレになったら、インフレで価値が減った部分を年金に反映するのではなくて2~3割くらいは年金を減らすことになっている。ただし、厚生年金や国民年金は長生きしてももらい続けられるという保険の機能があるから大事なんだ。だから社会保険と言うんだよ。
こんな風に、インフレになって、国民が国の借金を実質的に負担することをインフレタックス、インフレ税という。
連れ合い:それって、マジ、ヤッベ。でも、そんなことを続けている政権は、選挙で負けて、まともになるんじゃない?
私:今は国の借金をどんどん増やす政権を、国民が選んでいる。特に20歳前後の若者は、就職が好調だから今の状況を歓迎している人もいるみたい。でも、この状態はいつまでも続かないし、このままの状況が続けば続くほど、国の借金が増えるから、もっともっと深刻な状況に陥る。山高ければ、谷深し。もし、今の状況を立て直すとすれば、財政再建をするのと、日銀が国債を買うのを止めるのが基本になる。つまり、増税すると同時に金利を上げることだね。
増税すれば不況
連れ合い:増税して金利を上げたら、もしかして不況にならない?
私:今までお金をいっぱい使って借金しまくって来たから、大変なことになるだろうね。
連れ合い:そうすると、今のままだとインフレになって、国民がインフレ税を払わなければならなくて、逆に、国債増発を止めて金利が上がると、不況になるってこと?何とかならないの。
私:何とかなる可能性もゼロではないと思う。これ以上、財政状態や国債残高を悪化させずに、今進んでいると言われている第4次産業革命で、日本が圧倒的な競争力を付けて、今の2倍くらいのGDPに増やすことができれば、今の状況でしばらくいけるんじゃないかな。
連れ合い:そんな国際競争力を付けることが可能なの?
私:どの国も必死で頑張ってるから、日本だけが圧倒的に有利なることは考えられない。何事でも完全に不可能ってことはないけど、まず無理でしょう。
「アベノミクス」から「アトノミックス」へ
連れ合い:それじゃ、日本政府は何をすればいいの?
私:国の借金を全額なくすということは不可能だし、そこまでやる必要はない。ある程度の借金をすることは現代の各国政府には認められているからね。でも、せめて、他の先進国並みの借金体質、例えばGDPと同じ規模の国債残高にまで借金を減らした方が良いと思う。なぜなら、首都直下型地震、東海・東南海・南海地震などは、いつ起こるか分からないからね。あるいは、世界的な不況になった時に財政支出を増やせば、日本人や日本企業が、近い将来ハイパーインフレになると予測して、日本円をドルなどの外貨に大量に買えるかもしれない。そうすると大幅な円安になって、インフレがさらに加速する引き金になる恐れがある。このように、国の借金があまりに多額になれば、ハイパーインフレなどが起きやすい極めて危険な状態に陥ってしまう。だから、日本がその危険地帯から避難するには、
- インフレ税
- 増税
- 緊縮財政
の施策を実行する必要があると思う。この三つの施策の組み合わせは、「アベノミクス」ではなく、借金をしまくって散財した後の「アトノミックス」(後のmix)ということになる。そして、残念ながら、この時、ひどい不況やインフレなどを覚悟する必要があると思うよ。
連れ合い:なんとなくわかったけど、もっと大学教授とか立派な人も、そんな風に考えているのかな?あなただけの意見じゃないの?
私:清滝信宏プリンストン大学教授も、同じことを言っているので驚いた。「将来、日本が財政破綻になった時には、支出カット、税収増、インフレによる国債減価という3つの政策をどのような割合で発動するかがポイント」とおっしゃっている。この先生は、日本人として初めてノーベル経済学賞を受賞するか注目されているくらいの人だよ。詳しくは、「財政破綻―清滝信宏プリンストン大学教授」を参照してね。
<明日に続く>