膨大する国債残高と個人ができるインフレ対策(2018改訂版)6

(昨日の続き)

これから14年で崖に到達?

崖までの距離が560メートルだから、1年、2年で崖に到達してしまうことはないかもしれませんし、国民の貯蓄が増えれば、崖は遠ざかるのであるため、崖が目の前に現れるのがいつかを正確に予測することは難しいのです。財政の面から見ると、歳入拡大も歳出削減もリフレも難しいというのが最近の実態です。

日銀OBは、円を持ちたがらず、外貨を買いたがる。

ところで、14年かからずに崖までたどり着くことは有りうるのでしょうか。あり得ます。逆にもっと遅くなることもありえます。
経済評論家のブログを読むと「私の周辺でも日銀OBたちが、退官して退職金の運用を始めるや『円』を持ちたがらず金とかドルを買いたがることは、これまでもお話ししてきました。」とあります。また、この種の話は私自身も友人から聞いています。今は、このような日銀OBの日本円離れの動きがわずかだから、あまり問題になりませんが、多くの国民が同じ動きをするようになると、ドル円は高くなり、その結果インフレになります。諸外国の例を見ると、それは突然やってくるようです。その場合には、崖が急速に近づくことになるかもしれません。

ところで「崖」とは何でしょうか。

「崖」とは今までの平穏な生活が続けられなくなることです。自分の財産が大地のようにしっかりしたものと思っていたのに、その財産が突然崩れ落ちることです。第2次大戦直後に日本では、ハイパーインフレが起きてインフレ率が1万%になりました。つまり、1000万円の貯金があると思っていたのが5万円の価値しかなくなってしまったのです。あるいは、金利が高くなって、自分の勤めている会社が不況倒産になり、収入が無くなってしまうかもしれません。他には、円や国債の暴落も考えられます。円が暴落すれば輸入品が高騰して、生活が苦しくなります。国債が暴落すると、倒産する銀行も出てくるでしょう。そうなれば、その銀行から借り入れを続けられるのかという心配もあります。どちらにしても、安全だと思っていた前提が崩れてしまうことです。

崖が近付く要因は何でしょうか。

このことを考える要素の主なものは以下の項目ではないかと思います。

+①国債残高増加
+②ヘッジファンドによる仕掛け
+③家計の資産が海外に逃避
+④大地震(財政出動と建設需要などによるインフレ)
-⑤緩やかなインフレ(政府・日銀が目指している)
-⑥経済成長
-⑦本格的財政再建
±⑧日米金利差拡大

丸付き数字の前の+と-の記号は、崖に進む場合が+、崖から離れる場合が-です。そして、それぞれ、進む速さと影響度等が異なりますので、それを表にしました。

崖が近付く要因

進む速さ(最大5個) 影響度  (最大5個) 起る確率(最大5個) 備考
①国債残高増加 〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇 根雪がどんどん積み重なっている
②ヘッジファンドによる仕掛け +++ 〇〇〇 〇〇〇 崖に近づいてから突然仕掛けられる
③家計の資産が海外に逃避 ++++ 〇〇〇〇 〇〇〇〇 日銀OBを初めとしてすでに開始
④首都圏直下型・南海トラフ大地震 +++++ 〇〇〇〇〇 〇〇〇 それぞれ30年で70%~80%の確率
⑤緩やかなインフレ 〇〇 〇〇〇〇〇 インフレ税。インフレ率5%、10になる恐れ
⑥十分な経済成長 〇〇〇 他国並みが精いっぱい
⑦本格的財政再建 --- 〇〇〇〇〇 十分な増税はほぼ不可能
⑧日米金利差拡大 ± 〇〇〇 国債暴落なら日本の金利上昇

今の日銀の政策には出口がない?

国債残高増加は、毎年確実に進んでいます。
緩やかなインフレは、まだ起こっていません。
十分な経済成長は、世界経済が好調なので少し進んでいますが、国債残高を解決するには程遠い水準です。
本格的財政再建は、先延ばしの状態が進んでいます。
日米金利差はアメリカのFRB資産縮小の進行度合いが当面大きな要因になると思います。拡大すれば、円安になりインフレが進んで2%が達成されます。そこで金融緩和を止めて、国債価格が下落し日本の金利が上昇すれば円高要因になるでしょう。しかし日本の金利が上がった時に日本の財政はどうなるのでしょうか。財政赤字の急速な増大になると思いますが、これは実現可能でしょうか。これがいわゆる出口論です。

崖はどこか?

今後10年ぐらいたつと、ヘッジファンドが仕掛けたり、家計の資産が海外に逃避することが起こる可能性もあります。
その動きは、突然、一気に加速する恐れがあります。その時には、その動きを止めることができるのでしょうか。世界的な自由経済が定着している中で、それを実施することは容易なことだとは思えません。

膨大する国債残高と個人ができるインフレ対策(2018改訂版)5

(昨日の続き)

<インフレになっても、デフレになっても、どちらでも困らないようにするには、どうすればいいでしょうか。>

連れ合い:それじゃあ、インフレになっても、デフレになっても、SPY(アメリカSPDRのS&P 500の ETF)を中心にして、1306(TOPIX連動型上場投資信託のETF)もあわせて買うのが良いのか。そして、米国の金利が上がってきたら、少し米国債も買うのが良いかな。

私:そうだね。1~2年では上がったり、下がったりするけど、5年、10年と、我慢して持っていれば、上がってくる。日米のETF以外にも、VGK(バンガード®・FTSE・ヨーロッパETF)とVWO(バンガード®・FTSE・エマージング・マーケッツETF)も少し持っていると分散化できるので安心かもしれない。

連れ合い:それって、私たちが今までやってきたことだ。その結果には、満足している。その方法が良いってことね。

(おしまい)

<以下は詳細な説明です。>

膨れ上がる国債の現在の状況

国債が毎年増えていても、まだ、個人の預貯金があるから大丈夫だという説明を聞くことがあります。
それではどのような状況になると問題なのでしょうか。2016年の終わりごろ、個人の金融資産が1800兆円あるけど、そのうち400兆円が住宅ローンなどの負債だとすると、実質的な資産は1800-400=1400兆円しかない計算になります。その時点での国債を840兆円とすると、残りの1400-840=560兆円が今後の国債増発分を吸収できることになります。毎年増える国債が40兆円だとすると、あと14年経つと国債増発の引き受け資産が無くなることになります。

崖まで560メートル

これを崖にたとえてみましょう。1兆円を1メートルとします。日本は毎年、40メートルずつ、財政の崖に向かって進んでいます。崖までは残り560メートルです。崖まではまだ560メートルあるから、差し迫った恐怖を感じている人はまだ少ない様です。しかし、毎年確実に崖に向かっています。崖までの間には背の高い草むらや森や霧が立ち込める中にいるようなもので、今の日本人には、目の前のものしか見えません。もしドローンがあれば崖が近付いていることが分かるのですが、草丈が高いので崖は見えません。だから、あんまり心配する人がいないのです。国会議員は14年も先のことより、来年、再来年の自分の選挙当選の方が、はるかに大事なのです。

戦争直後、日本は200倍のハイパーインフレを経験

他の国も国債を増発することは有りますが、これほど早いスピードで崖に向かっているわけでは有りません。過去において、ハイパーインフレに苦しんだドイツは、崖に近づくことに対しての警戒心が強いのです。しかし、日本は過去のことをすぐに忘れてしまいがちです。第2次大戦後にハイパーインフレで、物価が200倍になったり、預金封鎖したことを語り継いでいる人はあまりいないようです。崖まではまだまだ遠い道のりなのだし、将来的に消費税増税などの手段を講じれば崖から遠ざかることもできると思っているようです。

ドイツは国債残高を減らし、米国はあまり増やさない中、日本だけ着実に増加

他の国も国債残高が一定程度ありますが、日本ほどひどくは有りません。例えて言えば、崖までの距離が1000メートルもあれば崖に落ちる心配はまず有りませんし、崖に向かって進む速さが遅ければ崖に落ちる心配は有りません。ドイツは崖から遠ざかっていますし、アメリカもリーマンショックの後の2012年以降は止まっています。もし仮に、崖の高さが高くない国であれば、つまり、借金もGDPも小さい国であれば、IMFなどに助けてもらえるかもしれませんが、日本ほどの経済大国が、これだけの借金を抱えていては、救済できないと言われています。