膨大する国債残高と個人ができるインフレ対策(2018改訂版)5

(昨日の続き)

<インフレになっても、デフレになっても、どちらでも困らないようにするには、どうすればいいでしょうか。>

連れ合い:それじゃあ、インフレになっても、デフレになっても、SPY(アメリカSPDRのS&P 500の ETF)を中心にして、1306(TOPIX連動型上場投資信託のETF)もあわせて買うのが良いのか。そして、米国の金利が上がってきたら、少し米国債も買うのが良いかな。

私:そうだね。1~2年では上がったり、下がったりするけど、5年、10年と、我慢して持っていれば、上がってくる。日米のETF以外にも、VGK(バンガード®・FTSE・ヨーロッパETF)とVWO(バンガード®・FTSE・エマージング・マーケッツETF)も少し持っていると分散化できるので安心かもしれない。

連れ合い:それって、私たちが今までやってきたことだ。その結果には、満足している。その方法が良いってことね。

(おしまい)

<以下は詳細な説明です。>

膨れ上がる国債の現在の状況

国債が毎年増えていても、まだ、個人の預貯金があるから大丈夫だという説明を聞くことがあります。
それではどのような状況になると問題なのでしょうか。2016年の終わりごろ、個人の金融資産が1800兆円あるけど、そのうち400兆円が住宅ローンなどの負債だとすると、実質的な資産は1800-400=1400兆円しかない計算になります。その時点での国債を840兆円とすると、残りの1400-840=560兆円が今後の国債増発分を吸収できることになります。毎年増える国債が40兆円だとすると、あと14年経つと国債増発の引き受け資産が無くなることになります。

崖まで560メートル

これを崖にたとえてみましょう。1兆円を1メートルとします。日本は毎年、40メートルずつ、財政の崖に向かって進んでいます。崖までは残り560メートルです。崖まではまだ560メートルあるから、差し迫った恐怖を感じている人はまだ少ない様です。しかし、毎年確実に崖に向かっています。崖までの間には背の高い草むらや森や霧が立ち込める中にいるようなもので、今の日本人には、目の前のものしか見えません。もしドローンがあれば崖が近付いていることが分かるのですが、草丈が高いので崖は見えません。だから、あんまり心配する人がいないのです。国会議員は14年も先のことより、来年、再来年の自分の選挙当選の方が、はるかに大事なのです。

戦争直後、日本は200倍のハイパーインフレを経験

他の国も国債を増発することは有りますが、これほど早いスピードで崖に向かっているわけでは有りません。過去において、ハイパーインフレに苦しんだドイツは、崖に近づくことに対しての警戒心が強いのです。しかし、日本は過去のことをすぐに忘れてしまいがちです。第2次大戦後にハイパーインフレで、物価が200倍になったり、預金封鎖したことを語り継いでいる人はあまりいないようです。崖まではまだまだ遠い道のりなのだし、将来的に消費税増税などの手段を講じれば崖から遠ざかることもできると思っているようです。

ドイツは国債残高を減らし、米国はあまり増やさない中、日本だけ着実に増加

他の国も国債残高が一定程度ありますが、日本ほどひどくは有りません。例えて言えば、崖までの距離が1000メートルもあれば崖に落ちる心配はまず有りませんし、崖に向かって進む速さが遅ければ崖に落ちる心配は有りません。ドイツは崖から遠ざかっていますし、アメリカもリーマンショックの後の2012年以降は止まっています。もし仮に、崖の高さが高くない国であれば、つまり、借金もGDPも小さい国であれば、IMFなどに助けてもらえるかもしれませんが、日本ほどの経済大国が、これだけの借金を抱えていては、救済できないと言われています。