(昨日の続きです。)
◎今日のテーマ:投資信託の日米コスト比較3
なぜ、日本では高コストのアクティブファンドばかりが売れて、低コストのインデックスファンドが売れないのでしょうか。その理由を、昨日に続きて述べ、最後に金融庁とメディアへの要望事項をまとめました。
⑦ 身近な成功体験者
財形貯蓄の凋落
昭和の終わりころの時代には、財形貯蓄が華やかで、年率5%以上の利回りでした。株式や投資信託のように元本割れする恐れがないので、5%という利回りは非常に魅力的でした。サラリーマンは、同僚や先輩も財形を利用しているので、安心して財形貯蓄を始めました。ところが、現在はそのような金融商品を利用している人が、周囲にいません。親の世代が利用していた財形貯蓄は、銀行預金タイプは金利0%、生命保険タイプでは金利が0.7%ですがインフレ率にも届かないかも知れません。
DCは銀行預金が9割、iDeCo、つみたてNISAは少額で歴史が無い
会社のDC(確定拠出年金)はデフォルトが銀行預金のため、利回りはゼロです。iDeCoは、税法上有利な点もありますが、毎月1万円や2万円で十分な金額ではありません。つみたてNISAも年間40万円しかつみたてられませんから、将来の住宅購入、教育資金、老後の蓄えには極めて不十分です。そして、DC、iDeCo、つみたてNISAとも歴史が浅いので、誰の意見を参考にして良いのか分かりません。
課税される特定口座用商品の相談相手
上記三つの制度だけでは、金額的に不十分ですから、課税される特定口座を利用した投信積立、ETF、インデックスファンドを買う必要がありますが、これについては、ほとんど相談相手はいません。相談相手のたくさんいる環境を整備すべく関係者が努力してほしいものです。なお、相談相手として良いのは、金融機関に勤めるプロではなく、知識は完璧でもなく、判断も誤ることがあるけれど、自分の利益のために判断するのではない、素人です。そしてこのような人が、周りにいる人たちの資産運用成績が良いという結果がハーバード大学の研究論文に発表されているそうです。
各部門に対する要望事項
金融庁
つみたてNISAについては、金融庁が活躍して、低コストのインデックスファンドの商品化実現に向けて努力されてきました。しかし、その影響力はつみたてNISAという制度の枠内に留まっているのが現状ではないでしょうか。年間40万円という限度額では、個人の蓄財としては少額で、不十分です。金融庁に要望することは以下の通りです。
- つみたてNISAの限度額を上げる。
- つみたてNISAの資産をそのまま相続できるようにすることによって、高齢者の利用を促進する。その結果、親世代である高齢者が、つみたてNISAに対して理解を深め、子供世代に利用を推奨できるようにする。金融庁のターゲットは若者世代のようですが、「将を射んとする者はまず馬を射よ」ではないでしょうか。
- 投資信託の月次レポートなどにおいて、コスト、リターン、リスクを1ページ目に分かりやすく表示する。コストが、3ページ目に目立たなく書いてあるので、個人投資家は分からないのです。八百屋さんでも、野菜の原産地と価格は、目立つところにはっきりと表示してあります。
- 使用する単語についても、「信託報酬」では、投資家が「自分受け取れる報酬」と勘違いする人もいるようです。顧客の立場に立った言葉、例えば、「投資信託保有費用」などに統一すべきです。「信託財産留保額」は何を意味しているか分かりませんから、「投資信託売却費用」ではどうでしょうか。顧客の立場に立った分かりやすい用語が望まれます。
メディア(新聞・雑誌)
低コストのETF、例えば、インデックスファンド(1306(TOPIX連動型上場投資信託のETF)、SPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)、VOO(バンガード社のS&P500のETF)、<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド、eMAXIS Slim 先進国株式インデックス)が個人投資家に知られずに伸び悩んでいる原因は、新聞や雑誌がその良さを記事せずに、広告主の売りたいアクティブファンドばかり記事にしているからだと考えられます。メディアは、広告主のためではなく、個人投資家のための記事に力を入れてほしいと思います。