財政危機7:ヘリコプター・マネー

◎今日のテーマ:財政危機7 ヘリコプター・マネー

ヘリコプター・マネー

「ヘリコプター・マネー」とは、「日本銀行がドンドンお札を印刷して、そのお金で国債を引き受け、それを償還せずに永久国債にする。」という方法です。

あたかもヘリコプターから現金をばらまくようにする方法なので、このような名前が付きました。アメリカのの経済学者フリードマンが著書「貨幣の悪戯」で描いたものです。

世界中の不動産・株式を買える

この方法が有効であると信じている人がいるようです。このような発言に対して、松山幸弘キャノングローバル戦略研究所研究主幹は、次のように問い返すそうです。

「もし日本銀行が国債を買えば国の借金が消える、ということが正しいのであれば、

①政府が国債発行して国民一人ひとりに1億円配っても日銀が国債を買うのであれば政府の借金は増えない、

あるいは②日銀に国債を買ってもらった資金で日本政府が世界中の株、不動産を買い占めることができる、

ということになるが、本当にそんなことができると思うか。」

お金の量が2倍になれば、お金の価値が半分になる

私の考えた説明は以下の通りです。

日本政府が、国民に国債という形で借金をして、現在の国民が持っているお金の2倍にまで増やす。その時、物やサービスは以前と同じとすると、お金の価値が半分になるだけの話です。つまり100%のインフレになるということです。ところで、政府の国債と借入金は2018年末で1,100兆円を超えました。それでもインフレにならないのはなぜでしょうか。それは、お金を持っている人が使わずに銀行に預金をしているからです。使わなければ、インフレにはなりません。しかし、将来、いろいろな形でこのお金を使うことになるでしょう。

  1. 首都直下型や南海トラフ地震が起きて家が倒壊すれば、家を建て直すことになるでしょう。地震保険の限度額は、家計火災保険金額の30%~50%の範囲です。残りのお金は自分の資産から支払うことになります。建設資材の価格は高騰するでしょう。また、様々な復興施策が実施されるので、国債発行が加速するとともに、インフレも進むでしょう。
  2. 団塊の世代を中心に、今までお金を貯めてきた年代が、高年齢になるにしたがって預金を下ろして使い始めます。
  3. このブログの「財政危機4」で書いたように、資産を守る有力な方法は、外貨で投資信託などを買うことです。その結果、円を売って、ドルを買うことになります。つまり、円というお金を使うことになります。従って、円安になりますから、外国から買うものが高くなり、インフレになります。食品だけでなく、医療関係の薬品なども海外から輸入されているので、今後インフレは進みます。

なお、ヘリコプター・マネーも量が小さければ問題が無いようです。例えば、ドイツはGDP比で60%の国債を発行していますが問題は無さそうです。それではいくら以上になれば問題になるのでしょうか。それは、国債をどれほど国内で消化しているか、外貨をどれほど保有しているか、経済成長率がどれ程高いかなどで違ってくるでしょう。