リタイヤした人はインフレを乗り越えられるか?

インフレが続いていますが、リタイヤ後に頼りになるは年金とリタイヤ時の貯えですから、この二つの要素がどうなるかを考えておく必要があります。

年金に関しは、国民年金と厚生年金の公的年金が重要ですが、マクロ経済スライドによって、インフレに十分追いつけないことになりそうです。このことについて2023年4月20日のYAHOO!ニュースを見てみましょう。


マクロ経済スライドによる給付水準調整の影響を反映した場合の効果

わが国の公的年金では、賃金・物価の変動に加えて公的年金被保険者の減少率や平均余命の延びを反映して給付水準を自動調整する「マクロ経済スライド」が2004年に導入されています。

それにより、今後は、年金受給開始時点(65歳)での年金額が現役世代の手取り収入額の何%かを示す「所得代替率」が現行の約60%から約50%前後まで中長期的に低下することが見込まれています。

所得代替率は、現役男子の手取り収入に対する年金額の割合を示した相対指標であり、現在見込まれている所得代替率の減少は、分子である「年金額の減少」よりも分母である「現役男子の手取り収入の増加」による影響のほうが大きいことが要因です。

2019年財政検証における新規裁定者の年金額は、ケース6(実質経済成長率▲0.5%)を除きおおむね横ばいか微増で推移する見通しです([図表1])。

[図表1]新規裁定者の年金額の見通し(出生中位・死亡中位)

また、既裁定者の年金受給後の年金額の見通しをみると、マクロ経済スライドによる給付水準調整の影響は、早期に受給開始する先行世代ほど大きく影響を受けるものの、将来世代への影響は限定的です。

ケース3(実質経済成長率0.4%)では、受給開始後の年金額の減少幅は先行世代ほど大きく将来世代ほど小さくなっています([図表2])。

また、1964年度生まれ以降の世代では、35年後(100歳時点)の年金額は増加に転じる見通しとなっています。

一方、ケース5(実質経済成長率0.0%)では、経済前提を厳しく想定しているためどの世代も年金額は減少するものの、それでも減少幅は先行世代ほど大きく将来世代ほど小さくなっています([図表3])。

以上のとおり、マクロ経済スライドによる給付水準の自動調整は、所得代替率では約2割の減少となっています。


このように、公的年金は約2割減少するので、自分で貯えに励むかもしれません。しかし、ここでもインフレの影響を十分に考える必要があります。The Motley Foolの2023年7月25日の記事を読んで見ましょう。以下は拙訳です。


高インフレがアメリカ人の退職楽観論を直撃

リタイヤ時の貯えは昔より小さくなりました。これは幻想ではありません。

ブラックロックが米国の退職年金加入者を対象に行った新しい調査によると、過去2年間で、特に若い世代を中心に、退職貯蓄が “軌道から外れている “と感じているアメリカ人が増えていることがわかった。

仕事、仕事、仕事

かつては退職といえば、40年以上にわたる勤労を現金に換え、ゴルフをしたり、果物が入っている器の絵を描いたり、その他の情熱的なプロジェクトを追求したりする自由が得られる、アメリカ人にとって楽しみな時期だった。しかし、仕事後の生活への旅は、多くの人が準備不足を感じ、明確で達成可能な目的地もない、不安な旅となっている。

ブラックロックの調査によると、2年前には70%近くが望んでいたライフスタイルでリタイアできると回答したアメリカ人が、現在では半数強にとどまっている。ブラックロックは、複数年にわたる高インフレ、景気後退懸念、不安定な金融市場など、いくつかの要因を指摘している。その結果、多くのアメリカ人が以前の予定よりも長く働かなければならなくなった。

目的意識を持って働き続けるアメリカ人もいれば、ただ給料が欲しいだけのアメリカ人もいる。アメリカの平均退職年齢は約64歳だが、調査対象者の30%近くが退職を先延ばしにするつもりだと答えている。

そしてこのような不安は、マルチタスクでテクノロジーに依存するZ世代(最年長は20代半ば)に最も多い。ブラックロック社の調査によると、職場で貯蓄をしている人の56%が自分で投資を管理する自信がないと回答しているが、Z世代では71%に上った。大学ローンの平均的な負債は過去10年間3万ドル前後で推移しており、最高裁がローン免除について一刀両断したことで、若年層は支払いの再スタートと将来のための貯蓄をどうするつもりなのかをナビゲートすることになるだろう。

お金に関して学校で何を学びましたか?定年退職や一般的な経済不安は、金融リテラシーの欠如に起因することもある。しかし、パーソナル・ファイナンス教育を推進する動きは高まっている。非営利団体Next Gen Personal Financeによると、昨年、6つの州が学校で生徒にお金について教える方針を採択し、現在、22の州が卒業のために1学期分のパーソナル・ファイナンス・コースを義務付けている。10代でない人たちは、まだ自己責任だ。

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