財政破綻―清滝信宏プリンストン大学教授

◎今日のテーマ:日本の財政の行方と備え

次の危機は

日本経済新聞の8月14日第6面に「時論:リーマン後10年、次の危機は」という記事があります。その中で、清滝信宏プリンストン大学教授が、日本の財政について強い危機感を表しています。

低金利、高貯蓄率は続かない

現在のような低金利や高い貯蓄率がいつまでも続くとは考えない方が良いので、やがて、日本の貯蓄率がどんどん下がり、自国だけでは債務や償還の借り換えが間に合わなくなるとの予想です。

高金利を引き金として財政危機

外国人が大量に国債を買う時が来ると、金利を高くしなければならないので、それを引き金として、財政危機がやってくるというお考えです。金利が上昇したときに、日銀に国債を買わせて上昇を抑えるのは無理だとのご意見です。

財政破綻後の処方箋

財政破綻になった時には、支出カット、税収増、インフレによる国債減価という3つの政策をどのような割合で発動するかがポイントだとのことです。この3つの政策は、私がアベノミクスの後に訪れる「アトノミックス」と言っているものです。

アトノミックス

「アトノミックス」は、アベノミクスの後にインフレ税、増税、緊縮財政の3つの施策を、ミックスしたものです。つまり、「後のmix」です。

具体的には、ある程度のインフレになったところでインフレを抑制し、そこで、増税とともに財政緊縮策を取ることです。つまり、すべてをインフレ税に押し付けるのではなく、インフレ税、増税、財政削減の3つの施策をミックスして行うのです。この方法であれば、現預金を持っている人だけでなく、より幅広く国民が国の借金を負担することになります。

「アベノミクス」の後は「アトノミックス」へ

インフレ税、増税、財政削減の方法のどれをとっても、国の借金を全額なくすということではなく、せめて、先進国並みの借金体質、例えばGDPと同じ規模の国債残高、にしようという考え方です。ある程度の借金は、現代の国家には認められると思いますが、その借金があまりに多額になれば、ハイパーインフレなどが起きやすく、極めて危険な状態に陥ります。従って、日本がその危険地帯から脱出するには、インフレ税、増税、財政削減のデメリットを負担しなければならないと思います。この三つの施策の組み合わせは「アトノミックス」ということになるでしょう。そして、残念ながら、この時、ひどい不況を覚悟する必要があると思います。

「アトノミックス」を前提にした資産防衛

「アベノミクス」の具体的処方箋は、政府、学者などが考えるでしょうが、個人投資家は、そのような時代が間近に迫っているという想定の下で、自分の財産をどう守っていくのかを考える必要があると思います。

安倍政権下における、アベノミクスと金融緩和の継続は、将来の果実を先に収穫しているだけだと思います。そして、その収穫量が多ければ多いほど、将来の「アトノミックス」の道は険しいものになるでしょう。

なお、清滝信宏プリンストン大学教授は、日本人として初めてノーベル経済学賞を受賞するか注目されているそうです。

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