今年の1月から新NISAが始まり、陰に隠れがちなiDeCoですが、どちらを優先すべきでしょうか。
東証マネ部!の解説では、年齢によって単純に分けていますが、私からすれば、これがすべての人に当てはまる正しい方法とは思えません。
私は子供たちに、iDeCoを優先するようにアドバイスしています。その理由は、iDeCoの方が節税効果が高いので、その節税した資金で新NISAにも投資できるからです。
新NISAとiDeCoはどちらを優先すべき?賢く使い分ける方法は
東証マネ部!2024/02/22
年収別のiDeCoの節税効果
iDeCoは節税効果が高い制度なので、年収別の投資割合を考えてみましょう。
<年収からみるiDeCoの節税効果の目安>
上図は年収と所得税率・住民税率、年間の掛金24万円(毎月2万円×12か月)の場合の節税金額をまとめたものです。
所得税率は、年収から計算される課税所得に応じて5%から45%まで、7段階あります。
上の条件で計算すると、
・年収400万円~450万円未満…所得税率5%
・年収450万円~650万円未満…所得税率10%
・年収650万円~1000万円 …所得税率20%
となります(細かい数字は上表のとおりです)。
なお、住民税率は所得税率に関係なく一律10%です。
したがって、所得税率が高いほど、iDeCoの節税効果も高くなります。
仮に、年間24万円(月2万円)をiDeCoで積み立てる場合、節税できる金額は
・年収400万円~450万円未満…年間3万6000円
・年収450万円~650万円未満…年間4万8000円
・年収650万円~1000万円未満…年間7万2000円
となります。年収が高いほど節税効果が高くなることがわかります。
上記の解説では、iDeCo積立額が年間24万円ですが、上限額の66万円をかけると
・年収400万円~450万円未満…年間99,000円
・年収450万円~650万円未満…年間132,000円
・年収650万円~1000万円未満…年間198,000円
となります。これが、私の子供たちにiDeCoを優先させ、しかも最高限度額を掛けさせる理由です。
フィデリティ投信のホームページ
【女性と投資コラムVol.40】iDeCoとNISA、優先するならどちらを先にすべきですか?
iDeCoとNISA、どちらも魅力のある制度ですがバランスが変わりそう?
- 税制優遇がきわめて強力だが限度額は小さく、また中途解約要件の厳しいiDeCo、
- iDeCoには及ばないものの税制優遇は魅力的で、限度額についてはiDeCoを上回るNISA、
という対比図があります。
2023年現在ではどちらも魅力的だという印象です。私はセミナーなどの機会では「iDeCoファースト」で考えましょうと話をしています。
ところが、2024年からスタートする予定の新しいNISAでは、利便性、利用限度額などが大幅にアップデートされることになりました。これにより、NISAの情報がたくさん世の中にあふれはじめ、「NISAが有利なのでは」「2つやらなくてもNISAだけでいいのではないか」という雰囲気ができはじめている気がするのです。
改めて、制度の条件をチェックし、「NISAとiDeCo、始めるならどっち?」という話をしてみたいと思います。
税制メリットを比較すればiDeCoに軍配、解約の自由度に着目すればNISAに軍配
まずは、2制度を比較しながらポイントを整理してみましょう。
- 年間投資可能額:NISAに軍配。2023年からの新しいNISAは年間360万円まで入金可能。iDeCoは働き方によって年14.4~81.6万円と種類も多く複雑なのもわかりにくい。
- 積立上限額:iDeCoに軍配。上限の制限はなし。ただし1年あたりの積立額が小さいので大きく積み立てるには時間がかかる。NISAは1800万円までの上限がある(購入時の価格で考える。売却等をすれば翌年に余枠は再利用できる)。
- 中途解約制限:NISAに軍配。証券市場が開いていれば原則として中途解約は自由。iDeCoは売買は自由だが、受け取りは60歳以降が原則。
- 利用対象者:NISAが有利。18歳以上の成人で、日本に居住していれば年齢の上限なし。iDeCoは20歳以上65歳まで(60歳以上は制限あり。また将来的には70歳までに拡充の見込み)。
- その他:口座開設手続きは圧倒的にNISAが簡単。iDeCoは提出書類が多い(特に会社員が社内で押印書類をもらう必要があるのは面倒)。
ほとんどの項目でNISAが有利ですし、上限額のところもあまり問題にならないところです。こうみると「やっぱりNISAだけでいいのでは」という気がしてきます。
限度額が小さいからこそ「あえて」iDeCoを優先してみたい
限度額が小さい、中途解約が難しい、ということは一見すると「使わなくてもいい」というイメージがありますが、私はむしろ「それこそがiDeCoを利用するポイント」ではないかと考えます。
一見するとウイークポイントのようですが、見る角度を変えることで、活用の妙味に変えることができるからです。
「少額をコツコツ長期にわたって積み立て」をすると考えた場合、むしろiDeCoのほうが心理的な節目をつけやすくなります。「私は企業年金のない会社員なので、とにかくこの上限月2.3万円を老後の積立としてがんばろう」とか「私は会社に企業年金もあるので月1.2万円の枠しかないので、むしろこの枠は税制優遇を取り逃さないようフル活用しよう」と考えてみるのです。
むしろ「年360万円まで投資できる? いやそんなお金はないからNISAはいいです」と思考停止しかねません。普通の人ほどそうなってしまいます。
また、「老後の生活資金を取り崩さずに積み立てていく」というテーマを考えるとき、中途解約できないことはプラスに転じます。
お金のやりくりがちょっと大変になったとき、あるいは大もうけしてしまい気が緩んだとき、ついつい中途解約の誘惑にさらされますが、制度そのものが「あなたの老後のお金ですから、ここはガマンですよ」とあなたを止めてくれます。
これは、長生きをする可能性が男性よりも高く、また高いリスクを取った高額入金を必ずしも好まないことが多い、女性の資産形成においても有用ではないかと思います。
おろせないことをデメリットからメリットに変えてみよう
人生100年時代と言われるようになっています。もはや「60歳までおろせない」ことはデメリットではありません。
統計的に見ると女性の96%は60歳まで存命です。ほぼ間違いなく自分の生活のために受け取ることができます。
所得税・住民税の控除対象となるメリットはNISAにはなく、また受け取り時の非課税枠は十分にあるので、多くの人はiDeCoを無税で受け取ることができるでしょう(有税になった場合も、60歳一括受け取りあるいは年金受け取り時の税率は低いため、現役時より損になることは考えにくい)。
公的年金に加えて、会社の退職金・企業年金制度があれば老後の不安は大きく軽減されます。これに加えてiDeCoやNISAで資金作りをしていた人は、きっと余裕をもったセカンドライフを楽しめるはずです。
老後に長生きすることも女性の特長です。平均寿命では男女差が6.1年あり、できれば多くのお金を残してリタイアしたいところ。
やはり「まずはiDeCoファースト」で考えてみましょう。iDeCoをしっかり限度額まで利用し、そのうえで余裕がさらにあれば「NISAセカンド」として2口座を作ってみましょう。
NISAについては上限は気にしなくてかまいませんから、無理のない範囲で活用し、あなたの資産形成に使えるだけ使っていけばいいでしょう。
資産形成における後悔の最たるものは「もっと早く始めておけばよかった」です(「もっと多く貯めておけばよかった」がおそらく次点でしょう)。ぜひ、ちょうどいい枠のiDeCoを先に活用してみてください。