お笑いタレント(最近はコメンテーター)のパックンは、子供の頃、貧しい生活をした経験から、今、お金持ちになってお金の心配がなくなったので、とてもいい気持だそうです。
しかし、普通の人にとって、お金があれば幸せになれるかどうかは分かりません。
日米二つの記事です。
2024年10月11日のCNBC Make itの記事を読みましょう。
More money tends to make you happier—even if you’re already rich, Ivy League researcher finds
アイビーリーグの研究者、お金が多いほど幸せになる傾向があることを発見
裕福な人ほど幸せになる傾向があることは、これまでにもさまざまな研究で確認されてきたが、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールの研究員マシュー・キリングスワースの新しい論文は、その仮説をさらに証明するものだ。彼の研究によれば、給与と幸福度の相関関係は、幅広い所得層にわたって極めて真実である。
「この関係の形は驚くほどシステマティックです」とキリングスワースはCNBC Make Itに語っている。「お金が重要でなくなる特定のポイントはないようです”。
キリングスワースの新しく発表された研究は、所得と幸福の関係に関する彼のこれまでの知見を基礎としており、お金と人生の満足度の間に正の相関関係があることを裏付けている。さらに、より多くのお金がもたらす心理的効果は、所得階層を問わず比較的同じであることを示している。
つまり、年収20万ドルの人と5万ドルの人がともに20%の昇給を受けた場合、幸福度の相対的な上昇幅はほぼ同じになる可能性が高い。
しかし、低所得者の方が昇給による物質的な影響をより多く感じるかもしれない。給料日前の生活から、毎月の貯蓄ができるようになるかもしれないし、一方、高収入の人は、すでに楽しんでいた経験が単にレベルアップするだけかもしれない。しかし、喜びを数値化するという点では、昇給の効果はほぼ同じだとキリングスワースは言う。
もちろん、他の多くの個人的要因も全体的な幸福感に影響を与えるかもしれない。
「お金は幸福の方程式に含まれる多くの変数のひとつであり、単一の変数が支配することはありません」とキリングスワースは言う。
誰もが「幸福のポートフォリオ」を必要としている
これらの調査結果は、より多くの給料を追い求めたくなるかもしれない。
「人々はより多くのお金を稼ぐと、自分の人生をよりコントロールできると感じる。
とキリングスワースは言う。「しかし、どのように余分なお金を稼ごうとするかによって、かえって不利になることもあります。結局のところ、何を買うか、いくら使うかではなく、「自分の生きたい人生を送れるかどうか 」なのだ。
お金を増やすことで、愛する人との時間を犠牲にしたり、自由な時間に趣味を楽しんだりしなければならないのであれば、余分な現金はあなたを幸せにしない可能性が高い。
「キリングスワースは言う。「幸せのために重要なことはたくさんあるので、人それぞれに幸せのポートフォリオが必要です。「お金は、私たちが以前考えていたよりも少しは重要であるように思えるが、それはまた、重要であるように見えるものの束の一つに過ぎない。
幸せのポートフォリオには、家庭、人間関係、キャリアなど、さまざまな要素が含まれる。
キリングスワースはまた、多くを犠牲にすることなく達成できる収入レベルを見極めることも提案している。楽しいことをしながら収入を最大化するにはどうすればいいか?
キャリアに上昇志向があるのなら、「週に2、3時間余分に働くことで、最終的にもっと収入を得ることを考える価値があるかもしれない」と彼は言う。そのようなトレードオフは、より高い給与があなたの人生の満足度にどれほど大きな影響を与えるかという点で、価値があるかもしれません。
一方、高収入が見込めるからという理由だけでキャリアを追求し、それに満たされないのであれば、おそらく給料だけでは望む幸福は得られないだろう。
「稼げるものを稼ぎ、人生の他の側面に幸せを求めれば、本当に幸せな人生を送ることは十分に可能です」とキリングスワースは言う。
次に日本のレポートを読んで見ましょう。
2020.3.23のMUFGホームページの記事です。
年収800万円が幸福度の限界点?年収と幸福度の関係とは
大学生や就活生の中には、「いくら稼げるかを軸に職種を選ぶ」「幸せな生活のためにお金がほしい」と考える人もいるのではないでしょうか。しかし、年収が高いほど幸福なのではなく「年収800万円が幸福度のピーク」という研究結果があります。今回は、年収と幸福度の関係を考察し、20代の人生設計で何が大切かを検討します。
一般的に、「高年収な人がうらやましい」「もっとお金持ちになりたい」と考える人は多いでしょう。「年収が高い=幸せ」という考えは、多くの人が無意識に抱いています。しかし、この思い込みに疑問を呈する研究があります。2015年にノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のアンガス・ディートン教授は、年収と幸福度の関係について興味深い研究結果を発表しています。
この研究によると、年収が7.5万ドル(約800万円)を超えるとそれ以降は、年収と幸福度の相関があまり見られないというのです。この研究結果をかみ砕いて説明すると、年収800万円までは年収が上がるに従い幸福度が上昇しますが、それ以降は年収が増えても幸福度はあまり変わらないということになります。
先ほど紹介したのはアメリカの研究ですが、実は日本でも内閣府が年収と幸福度に関する調査結果を発表しています。内閣府が2019年に実施した「満足度・生活の質に関する調査(第1次報告書)」でも、年収と幸福度の興味深い関係が示唆されています。
調査はWebで行われ、「現在の生活にどの程度満足しているか」について0~10点の11段階で質問したもの。調査結果によると年収100万円未満の人の幸福度は平均5.01、年収700万円以上1,000万円未満の幸福度は6.24で、1.23の差が開いています。
一方、年収1,000万円以上2,000万円未満の幸福度は6.52で、年収700万円以上1,000万円未満と比べて0.28しか差がないのです。アメリカの研究同様、やはり年収800万円程度を目安として、年収が幸福度に与える影響が薄れていくといえそうです。
さらに同調査では、年収3,000万円以上になると、逆に幸福度が下降するという衝撃的な結果となりました。幸福度は、年収3,000万円以上6.6、年収5,000万円以上6.5、年収1億円以上6.03と緩やかに下降していきます。年収1億円以上の人の幸福度はなんと、年収700万円以上1,000万円未満の人の幸福度よりも低いことが明らかになりました。
“いろいろな年収を経験した人”による面白い考察が、世界的なQ&AサイトQuora(クオーラ)に掲載されていたので、見てみましょう。
この人は「美容師」「ドラッグストア」「医療分野の新規事業開発」といった複数の仕事を経験し、年収200万円から1,000万円までを体験しています。また、年収1,500万円、2,000万円、1億円の友人を持つそうです。
そして自身の体験から、「年収600~800万円くらいが生活するうえで特にストレスを感じることもなく、我慢もしながらたまに贅沢する、だからこそ贅沢が楽しく感じられる」ラインだと結論を述べています。この人の体感としては、年収800万円を超えると「同じ水準で遊べる友人が少なくなる」「欲があまりなくなる」のだそうです。
また、友人を見ていて、年収1,000万円を超えると「付き合う層が青天井になり、再び自分がみじめになる」「収入を安定して得ることが難しくなり、収入を維持する負荷・ストレスがかかる」と考察しています。さらに、年収1億円の友人に関しては、「同じ感覚で対等に遊べる気の合う友人を見つけるのが大変」であり、「孤独」だと表現しています。
こうした高年収経験者の感想は、先ほど紹介した調査結果と同じ傾向を示していると言えそうです。
ここまで見てきた調査結果や感想に対して、「結局いくら稼げば幸せになれるの?」「自分は800万円よりも上を目指したい」といったさまざまな意見が出るでしょう。
大切なのは、「年収が高い=幸せ」という固定観念に縛られることなく、自分なりの人生のゴールを設定することです。
「どんな人生を実現したいか」をまっさらな気持ちで考えたとき、そこに浮かぶイメージは、お金のことだけではないはずです。例えば、先ほど見た内閣府の調査でも「友人との交流頻度」が高い人ほど、満足度が高くなるという結果が出ています。
イメージを具体化すると、「高年収で、仕事の成績がよく周りに一目置かれ、休日には好きなだけ海外旅行に行き、友人や恋人、家族との時間を楽しみ……」といったさまざまな要素が出てきます。お金は、人生の幸せを決めるうえで、1つの要素でしかありません。
また、「高年収だと仕事で忙しく、趣味に時間を割けないかもしれない。自分は年収が高いことより、趣味にたっぷり時間を使い、気心の知れた仲間たちとたくさんの時間を過ごせる方が幸せを感じられそうだ」といった結論に達する人もいるでしょう。
逆にここまで突き詰めて考えたうえで、「やはり高年収なくして人生の幸福はあり得ない」と考えるなら、覚悟を決めて突き進むのも1つの選択肢です。
幸福の形は人によってさまざまです。一概に高年収であることだけが、幸せとは限りません。「いくら稼げば幸せになれるのか?」という問いに対する答えは、「いくら稼いでも幸せになれる場合もあるし、なれない場合もある」です。
20代は人生の方向性を決めるうえで非常に重要な時期です。20代のうちに抱いた価値観や人生設計は、その後の長い人生において、羅針盤となり続けるでしょう。