トラッキングエラ―

 今日は「トラッキングエラー」について、金融機関等の用語解説で勉強しましょう。
最初は東京証券取引所の用語解説です。

トラッキングエラー

インデックスなどに連動することを目指すパッシブ運用において、ファンドやポートフォリオなどとベンチマークとしているインデックスの乖離の度合いを示す尺度。通常、リターンの差を示すベーシスポイント(bp)で表示されます。
カタカナ語を中心に、用語解説を引用します。

インデックス :

インデックスとは、市場の動きを示す指数のことです。例えば、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)は日本株式の代表的なインデックスです。インデックスの値動きを見て、市場全体の状況を推測することができます。

パッシブ運用 :

株価指数に連動する投資等により、市場の平均的なリターンを目標に運用を行うことを言います。

ファンド(投資信託):

投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品です。

ポートフォリオ :

運用対象として保有する株式、公社債、短期金融商品など、保有資産の構成内容のことです。
本来は「紙ばさみ」の意味ですが、海外では有価証券は紙ばさみに挟んで保管されることが多かったため、保有資産の構成内容を「ポートフォリオ」と称するようになったといわれています。ポートフォリオの決定には、さまざまな理論があり、これらポートフォリオ選択理論に基づいて資産配分比率が決定されます。

ベンチマーク

目標基準、または対抗指標。運用の世界においては、その運用実績を測定し、評価するための基準をいいます。
日本の株式の場合は、日経平均やTOPIXをベンチマークとすることが多く、投資信託の場合は、その運用対象に対応したインデックスがベンチマークとなることが多い。

ベーシスポイント:

1%の100分の1、つまり0.01%のことで、例えば、10ベーシスポイントは0.1%です。

トラッキング・エラーとトラッキング・ディファレンス

ここからはバンガード社による説明を勉強しましょう。

定義は会社ごとに異なる

トラッキング・エラーの定義は、ETFのプロバイダーによって異なります。

トラッキング・ディファレンスとトラッキング・エラー

「ETFのリターンとベンチマークとなるインデックスのリターンの差」という単純な定義をするプロバイダーもいますが、これは実際にはトラッキング・ディファレンスを指しています。トラッキング・エラーの正式な定義は、トラッキング・ディファレンスの標準偏差を年率化したものです。つまり、トラッキング・ディファレンスが一定の期間においてETFのリターンがベンチマークのリターンからどの程度乖離したかを計測するのに対し、トラッキング・エラーはトラッキング・ディファレンスの変動性を計測するものです。

例えば、トラッキング・エラーが50ベーシスポイントであれば、当該期間中のトラッキング・ディファレンスは、およそ3分の2の確率で50ベーシスポイントの範囲内に収まることになります。トラッキング・エラーが低いということは、トラッキング・ディファレンスの変動性が小さいことを意味します。

長期運用にはトラッキング・ディファレンス

長期間のトータルリターンの最大化が主な目的ならば、トラッキング・エラーよりトラッキング・ディファレンスの方が重要でしょう。しかし、短期間のパフォーマンスの一貫性が重要で、変動性を最小化したいのならば、トラッキング・エラーを重視すべきです。

乖離と平均リターンのどちらを選ぶか

以下に示した仮説ケースの場合、長期的なリターンを重視している投資家にとっては、トラッキング・エラーが高くても「ファンドA」の方が優れた選択かもしれません。一方、リターンがベンチマークからあまり大きく乖離しないことを重要視する投資家にとっては、平均リターンが低い(つまりトラッキング・ディファレンスのマイナス幅がより大きい)にも関わらず「ファンドB」が魅力的かもしれません。

実際にファンドを比較する場合、トラッキング・ディファレンスとトラッキング・エラーの間にはここまで明確なトレードオフ関係が見られることはないかもしれません。ファンドを選択する前に、資産配分やインデックス運用の手法、コストといったその他の要因の評価が必要です。

トラッキング・エラーとトラッキング・ディファレンスが生じる主な理由

理想的な世界では、ETFはベンチマークを完璧にトラックするため、トラッキング・ディファレンスもトラッキング・エラーも存在しません。しかし、実際には多くの要因が作用しており、理想の実現を難しくしています。
それを表にまとめたのが下の表です。
トラッキング・ディファレンスに影響する要因 ネガティブ ネガティブまたはポジティブ ポジティブ
●ベンチマークに関連する要因
  インデックスの変更または銘柄入れ替え
  証券の流動性の低さ
●ETFやファンドに関連する要因
  経費率
  その他のコスト(手数料など)
  サンプル法・最適化法
  運用スキルおよび経験
  セキュリティーズ・レンディング(証券貸出)
  購入および解約の手数料(ファンドに対する支払い)
  フェアバリュー・プライシング
  キャッシュ・ドラッグ

手数料

手数料はパフォーマンスを引き下げるため、マイナスのトラッキング・ディファレンスを発生させる最も一般的な要因となります。総経費率(TER)には含まれない取引コストなど、ファンドに係る全ての手数料の評価が肝心です。

流動性

流動性も要因となる可能性があります。例えば、コモディティー(商品)や通貨、新興国市場のETFでは、ポートフォリオを構成する原資産証券の流動性の低さや時として変動性の高さが原因となり、トラッキング・エラーが発生する可能性があります。

ファンド・マネジャーの運用能力

全てのインデックス・ファンドのマネジャーの能力は等しいわけではありません。いつ完全法を利用し、いつサンプル法や最適化法を利用するのが適切か、優れたマネジャーならば理解しているものです。また、インデックス構成銘柄の変更や再構築、資金の流出入などについても精通している必要があります。

フェアバリュー・プライシング

フェアバリュー・プライシング(公正価格による評価法)は、世界中の金融市場において時差から生じる価格のずれを修正するために設計された戦略です。フェアバリュー・プライシングが適用されるのは、市場価格が最新ではなく、証券の実際の(公正な)価値を反映していない可能性があるためです。

一部のETFプロバイダーは、保有している証券の価格が国内市場の取引時間内ではあるものの、その証券が取引されている主要市場または取引所の取引終了後に発生した出来事の影響を受けた場合、フェアバリュー・プライシングを適用しています。こうした方針は、海外証券の評価において極めて一般的です。フェアバリュー・プライシングは、ETF保有者にとってはコストおよび潜在的には税金の増大につながりかねない短期的売買を阻止する要因になり得ます。

セキュリティーズ・レンディング(証券貸付)

証券貸付は投資信託投資信託、ETF、年金基金および保険会社の間では一般的な慣行で、自身のポートフォリオ内の証券を貸付料と引き換えにブローカー・ディーラー、ヘッジファンドおよび投資銀行に貸し出すものです。証券の借り手は、借り受けた証券の価額より高い価値の担保(一般的には現金または国債)を預け入れます。貸し手は貸し出しによる手数料に加え、この現金担保の再投資によって利息も得られます。

証券貸付は、貸付料がETFの費用の一部を相殺することでパフォーマンス改善につながるため、投資家にとって恩恵となり得ます。投資家がどの程度の恩恵を享受するかは、運用会社の貸付収入の取り分によって左右されます。

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