先日ラジオで、ある話が紹介されました。
「投機は悪いもので投資は良いものだと思い込んでいる人がいますが、投資と投機を善悪で判断すべきではないと思います。
自分の知り合いに、デイトレーダーのような売り買いをしている人がいます。その人の行為は投資ではなく、投機です。
その人は天才的なデイトレーダーで、利益をたくさん出しますが、その利益をほとんど、金銭的に恵まれない人たちに寄付します。」
という内容でした。
ここで、投資と投機について、改めて確認することにします。
最初は、一般社団法人 全国銀行協会 の解説です。
貯蓄と投資・投資と投機の違い はじめての金融リテラシー
資産運用するにあたって、「貯蓄と投資」「投資と投機」の違いを理解することが大切です。貯蓄とは、お金を貯めて蓄えること、貯蓄に対して投資は、将来が有望な投資先に、長期的に資金を投じることです。そして、投資に対して投機とは、相場の変動を利用して利益を得ようとする短期的な取引であり、相場によっては大きな損失が発生する可能性があります。投資には必ずしも元本保証があるわけではありませんが、長い目でお金を増やしていくところが、投機とは異なります。
次は、野村アセットマネージメント です。
投資と投機の違いとは? 株式の取引はどちらなのか?
資産形成していくにあたり、預貯金のみで積み立てていくという考え方もありますが、一部を株式などの資産に投資すると、リスクはあるものの、資産形成のスピードアップが期待できます。
しかし、株式投資はやはり怖い、ギャンブルなのではないか・・・と考えられている方もいらっしゃるでしょう。そこで、今回は、投資と投機の違いについて改めて考えていきたいと思います。
投資と投機の違い
まず、筆者の考える投資と投機についてご説明させて頂きます。
投資とは
何らかの付加価値を生み出す資産を購入し、長期的に保有し続けていくこと
投機とは
資産価格の動く方向を予測し、上がるか下がるかに賭けて売買を行うこと
これだけでは漠然としていて分かりづらいかと思いますので、もう少し具体的にご説明していきます。
投資とは?
まず投資ですが、対象資産は何か付加価値を生み出すものである必要があります。具体例としては、株式や不動産といった資産が挙げられます。
株式の場合、株式会社は世の中に商品やサービスといった付加価値を提供することで売上を上げ、そこから費用を差し引いた後に、利益を生み出します。株主は利益の一部を配当として受け取り、残りは内部留保として事業拡大に向けた投資などに振り向けられるわけです。
不動産の場合、オフィスビルや賃貸住宅などでは家賃を生み出しますので、オーナーはそれを定期的に受け取ることができます。もちろん物件の修繕や管理などにある程度の費用は発生しますが、差し引き後の部分はオーナーが手にできるリターンとなります。
このように株式や不動産といった資産は、時間はかかるものの、着実に付加価値を生み出し、資産価値が増大していく資産となっています。
ただし、その資産が市場で実際に取引される価格は日々変動しますので、イメージとしては次のグラフのようになります。
短期間での資産価格は、市場の需要と供給、センチメントなど、様々な要因で上がることもあれば下がることもあり、非常にランダムな動きのように見えるかもしれませんし、資産価値も必ずしも増大しないかもしれません。しかしながら、5年、10年、20年と長期的に保有し続けていれば、資産価値の上昇に伴って、トレンドとしては資産価格も上昇していくことが期待されるわけです。
投機とは?
次に投機について考えてみたいと思います。
価格が変動する資産であれば、先程例に挙げた株式であっても投機的な売買を行うことができます。今回はわかりやすくするために、金の塊を例に考えてみましょう。
金の塊を1kg購入したとしましょう。5年経っても、10年経っても、金の塊1kgは1kgのままです。金の塊が自己増殖して、購入した1kgが1.5kgに増えたとか、2kgに増えた、といった話を聞かれたことはないでしょう。
一方で、金の価格は日々変動しています。次のグラフをご覧ください。
時間が経過しても金の塊1kgは1kgのまま変わりませんが、金の価格は市場で取引されており、日々変動しています。
安いときに買って高くなったときに売却できれば、利益を出すことはできますが、そのように、価値ではなく価格の変化にのみ着目した取引は投機だと考えています。
株式取引は投資?投機?
投資と投機の違い、ご理解頂けたでしょうか。では、株式について改めて考えてみましょう。
株式であっても、今日買って明日売る、など、短期間で売却益を出すことは可能です。しかし、それは投資ではなく、投機的な取引と言えるでしょう。というのも、今日から明日という短期間で対象会社が生み出す利益の金額は1年間の365分の1に過ぎませんし、その利益の増加分を市場の価格が適切に反映することはまずないからです。
株式取引は、短期的に行えば投機的なものとなり、長期的に行えば投資的なものになると言えるのではないでしょうか。
最後に米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏の言葉を紹介させて頂きます。
If you’re an investor, you’re looking on what the asset is going to do, if you’re a speculator, you’re commonly focusing on what the price of the object is going to do, and that’s not our game. -Warren Buffett
「もしあなたが投資家なら資産がどう動くかに着目している。もしあなたが投機家なら普通は資産の価格がどう動くかに注目している、そしてそれは我々のゲームではない」(ウォーレン・バフェット)
みなさんは投資家になりますか?それとも投機家になりますか?
次は、三菱UFJ信託銀行株式会社 です。
投資と投機の違いとは? 目的やリスクを考えて資産形成の方法を選ぼう
資産を増やす方法「投資」と「投機」には、目的と期間の違いがあります。投資と投機の違いや資産形成をする上で自分に合った方法を選ぶ考え方を解説します。メリットやデメリット、どのくらいリスクを取れるかを考えて、投資や投機を慎重に選択しましょう。
投資と投機の違い
投資と投機の大きな違いは、目的と期間です。
投資の目的は、売買による値上がり益を得ることのほか、長期で保有することで株であれば配当金・株主優待、不動産であれば家賃収入等で利益を得ることです。さらに、税金の軽減やインフレヘッジ等資産の保全目的で運用されることもあります。
一方、投機の目的は、投機先の価格が上がるか下がるかを予想して値ざやによる利益を得ることを目的として、株やFX、仮想通貨等に資金を投じます。
投資は、長い目でコツコツとお金を増やしていき、投機は短い期間で大きな利益を得ようとするものです。
投資とは
「投資」とは、投資対象の成長や価値そのものに期待して出資することです。資金を投じることで、投資先の会社や国が社会全体の生産活動に役立ち、社会の発展と共にその果実を値上がり益という形で得られるでしょう。
投資のメリット
投資のメリットは、複利効果が得られるという点です。複利効果は、投資資金の運用によって得た利益をさらに運用することで利益を大きくしていくことです。投資信託のように運用をプロに任せて、長い年月をかけて運用することで資産の増え方は大きくなっていく傾向にあるでしょう。
投資のデメリット
投資のデメリットは、必ずしも利益が出るとは限らないという点です。長期的な展望で企業の成長ならびに株価上昇を期待して資金を投じたにも関わらず、予測に反して株価の低迷が続く出来事も起こり得ます。途中でいつでも売却し換金することはできますが、そのタイミングで利益が出ていなかった場合には損失を確定させることになってしまいます。
投資は、投資先の発展や経済成長へつながり、その恩恵を投資家は受けることができます。例えば、株式投資では、企業の利益や将来の成長は短期間で達成できるものではなく、長い年月をかけて成果が出てくるものです。投資により資産を増やすには、結果が出るまで長い時間を要すると考えておいた方がよいでしょう。
投資が向いている人
長期で資産を増やしていく投資の特徴から、20年から30年先の老後に備えて資産形成を目的とした運用に向いているといえるでしょう。長期にわたり運用を継続する、あるいは少しずつ積立投資をしてお金を育てていきたい人に向いています。
投機とは
「投機」は、短期的な価格変動による売却益だけを狙って取引をおこないます。
投機をする投資家は投機筋と呼ばれ、株式に限らず、為替、金等の商品を対象に世界の各市場で投機がおこなわれています。企業や国の成長とは関係なく、その瞬間の需給や一時的なニュースに大きく反応する値動きを追い、その瞬間を逃さず売買します。取引開始から、ある程度利益が出たところで手放し、その価格の差額を収益にします。
投機のメリット
投機のメリットは、短期的に利益が期待できるという点です。数分のうちにも値動きがあるためタイミングを逃さなければ一日で大きな利益を得られることもあるでしょう。
投機のデメリット
投機のデメリットは、短期的に大きな損失を生んでしまうこともある点です。投機する先や売却するタイミングを誤れば、一瞬にして大きなマイナスを被ることもあるでしょう。
マネーゲームといわれることもある投機では、頻繁に市場動向や値動きをチェックし、取引時間中は売買画面に向かうことになります。リアルタイムに損益が変化していくため、素早く取引することができないと大きな損失を被る可能性があるでしょう。
投機が向いている人
投機は、個人でもデイトレード等が容易な環境であるため、売買画面に向き合う時間があればチャレンジできます。ただ、大きな損失が出るリスクがあるため、資金に余裕がある人の方がよいでしょう。短期間に大きな資金を作り出したいという人には向いています。
間違えやすい「ギャンブル」と投機
投資と投機の特徴を整理したところで、投機はギャンブルに似ていると感じた方もいるでしょう。ここでは、ギャンブルと投機と投資の違いを解説します。
ギャンブルは、運営者(胴元)が利益を得るために賭け金から手数料を差し引いた金額を勝敗に応じて支払います。運営者に資金(手数料)が残るようになっているため、参加者の損益の合計はマイナスになるでしょう。
一方、投機は胴元はなく利益は勝者総取りとなるため、ゼロサムゲームと表現されることがあります。短期間でハイリスク・ハイリターンを狙うため、勝てば大儲けが期待できる分、負ければ大きく損をするリスクがあるという点では、ギャンブルと似ているとも考えられます。
また投資は、投資先の資産総額が増加することで参加者全員が得をするケースが理論上はあり得ます。実際はさまざまな要因が絡み合い、全員が利益を手にできるわけではないため、正しい知識を身につけて、自身のリスク許容度の範囲内で運用しましょう。
老後資金は短期の投機より長期の投資で考えよう
老後のための資産形成には、「投機」ではなく、長期で資産を増やす目的の「投資」で備えることが適切です。投資は、慎重に投資先を選び時間をかけておこなうことができます。
長期に渡り少しずつ資金と投資タイミングを分散し、リスクを適切に抑えることで安定的な資産づくりを目指すべきでしょう。老後資金が形成される頃には、その投資資金は、巡り巡って社会全体を豊かにします。未来の自分達の住む街、国を作っているという意識で投資をしてはいかがでしょうか。
まとめ
投資は長期的に資産を運用してコツコツとお金を増やしていき、投機は短い期間で大きな利益を得ようとするものです。「投機」は、短期的な価格変動による売却益だけを狙って取引をおこないます。
時間と資金に余裕のある人は、「投機」により短期的にお金を増やすことも可能です。時間はかかっても堅実な運用をしたい人は「投資」を考えた方がよいでしょう。また、長期的な視点で「投資」により資産形成をおこないながら、「投機」的な運用も時々おこなうという方法もあります。
それぞれの特徴を踏まえ、自分の環境に合った資産形成を考えてみませんか。