毎月約5.5万円の赤字
金融庁が2019年6月にまとめた「高齢社会における資産形成・管理」によると、年金を受け取って生活をしながら夫婦が93歳まで生きる場合、毎月約5.5万円の赤字となり、30年間で約2,000万円の資金が不足するので、そのために貯蓄をしておくことが必要になります。
資産の形成・管理
この報告書の付属文書1「高齢社会おける資産の形成・管理での心構え 」では、長寿化が進行する中、資産寿命を延ばす観点から、個々人が各ライフステージ別にどういったことに留意すべきかを述べていますので、その中身を見てみましょう。
(1)現役期
⇒ 長寿化に対応し、長期・積立・分散投資など、少額からでも資産形成の行動を起こす時期
- 早い時期からの資産形成の有効性を認識する
- 少額からであっても安定的に資産形成を行う
- 自らにふさわしいライフプラン・マネープランを検討する
- 長期的に取引できる金融サービス提供者を選ぶ
(2)リタイヤ期前後
⇒ リタイヤ期以降の人生も長期化していることに対応し、金融資産の目減りの防止や計画的な資産の取崩しに向けて行動する時期
- 退職金がある場合、それを踏まえたマネープラン等を再検討する
- 収支の改善策を実行する
- 中長期的な資産運用の継続と計画的な取崩しを実行する
(3)高齢期
⇒ 資産の計画的な取崩しを実行するとともに、認知・判断能力の低下や喪失に備えて行動する時期
- 心身の衰えを見据えてマネープランを見直す
- 認知・判断能力の低下・喪失に備える
具体的金融機関、商品名が必要
以上、報告書のポイントだけを抜き出しました。役所の書いた報告書ですから、具体的な金融機関名とか商品名をかけないのがもどかしく、読む人にとっても、ほとんど役に立たない内容になっています。
新聞・雑誌は当てにならない
本来であれば、新聞、雑誌などが、具体的実名を挙げて解説すればよいのですが、残念ながら、経済紙や全国紙などは、金融機関が広告宣伝を大量に投入し、それらの企業に大金を支払っているので、読者のためになる情報を提供してくれません。一月5000円しか購読料を支払わない一般の個人投資家より、数十億円単位で宣伝広告費を支払ってくれる金融機関の方が大切なようです。
貯蓄のハック
それでは、アメリカの新聞で、貯蓄のハックを勉強しましょう。ハックhackとは、「物事をうまくやるためのこつ」のことです。以下は2020年10月30日のUSA TODAYの記事の拙訳です。
たくさん貯蓄するのに役立つのだが、過小評価されている、老後のための貯蓄の3つのコツ
従業員福利厚生研究所のレポートによると、労働者の半数弱が老後のために25,000ドル未満しか貯蓄しておらず、それらの労働者のうち、4分の1以上が1000ドル未満しか貯蓄していません。
リタイアが近づいているか、あるいは、老後が数十年先かにかかわらず、少なくともある程度のお金を今貯蓄して準備しておくことは大切なことです。お金が厳しい時には、そんなことがほとんど不可能であるように感じられるかもしれませんが、次にあげる三つの過小評価されている貯蓄方法によって、少しやりやすくなるかもしれません。
1.できればHSAを利用する
HSA
医療コスト節減口座health savings account(HSA)は、基本的に医療費のために設計された退職勘定です。自分のHSAに税額控除できるお金をかけることができ、長期にわたって成長させ、そのお金が適格な医療費のために引き出す限り非課税となります。
リタイア後だけで300,000ドル近く医療費に使う
融通の利く支出勘定と異なり、HSAは「使わなければだめになる」という方針に基づいています。つまり、今HSAに投資して、必要になるまで何十年もそのまま置いておくのです。フィデリティ・インベストメンツの調査によると、平均的高齢夫婦は、リタイア後だけで300,000ドル近く医療費に使うことになり得るということを考えると、HSAから引き出す非課税の貯蓄は、大いに役立つかもしれません。
high-deductible healthcare plan
HSAに関する注意事項は、掛け金を支払う資格を持つためには、high-deductible healthcare planに加入しなければならないことです。つまり最大で、個人では6,900ドル、家族では13,800ドル自分で支払うだけでなく、少なくとも個人では1400ドル、家族では2,800ドルの控除免責金額が必要です。
2.貯蓄している人が資格を持っていれば控除対象として請求する
旧来のIRA、Roth IRA、401(k)
貯蓄する人の控除は、退職勘定への掛け金に対する税額控除で、旧来のIRA、Roth IRA、401(k)です。言い換えると、リタイアのために単純に貯蓄することによって、税の支払額を引き下げることができるのです。
控除してもらうには、18歳以上である必要があり、他の人の税還付に依存することはできませんし、学生もだめです。
適用になる最高税額控除は毎年のリタイア勘定の50%で、調整後収入総額は年間で、個人なら19,500ドル、二人で申請している夫婦なら39,000ドルを超えることはできません。もし、収入がそれより多くても控除の資格があるかもしれませんが、20%か10%だけとなります。もし、年間所得が個人で32,500ドル、二人で申請している夫婦では65,000ドルを超えると、控除の資格が全くありません。
3.貯蓄率は1%だけ増やす
リタイアすると信じられないほどお金がかかる可能性がありますが、かなりの金額を貯蓄するために毎月何百ドルも増やす必要はありません。
実は、1%貯蓄額を増やすことによってリタイアのための貯蓄を数万ドルに増やせる可能性があります。フィデリティ・インベストメントの調査によると、35歳で、年収60,000ドルなら、給料の1%を貯蓄にまわすことによって(つまり毎週たった12ドル)、リタイアの年齢に85,500ドル近く総貯蓄を増やすことができるのです。
リタイアに備えることはつらいことかもしれませんが、貯蓄に活を入れることは、考えているほど難しいことではないかも知れません。ちりも積もれば山となります。今の小さな一歩一歩がリタイアまでに何千ドルもたまることになるのです。