老後資金における年金・商品等の利率比較・利用 2

<昨日からの続き>

老後資金には様々なものがあります。それらについて、現状の金利を再確認し、資金全体の中で、それぞれの資金をどう利用するかを考えます。

2.国民年金

長生きのリスク

利率は基本的に0%ですが、長生きしても受け取れます。現代は、早く死ぬリスクだけでなく、長生きしてしまうリスクもあります。そのリスクに対応してくれるのが国民年金です。

老齢基礎年金

国民年金とは、日本に住む20歳以上60歳未満の人が原則として全員が加入する義務のある年金制度を指すものです。 これに対して、老齢基礎年金とは、国民年金や厚生年金保険などに加入して保険料を納めた方が受け取る年金のことを指します。

繰り上げ受給

老齢基礎年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間でも繰り上げて受けることができます。

繰り上げ受給のリスク

私の知り合いで、独り暮らしの自営業の人がいて、60歳の時に生活を楽にしたいと思って、老齢基礎年金を繰り上げ受給した人がいました。80歳になって、何とか一人で生活しています。しかし、病気がちなので医療費もかさんでいて、繰り上げ受給しなければよかった、とぼやいていました。

繰り下げ受給

老齢年金は、65歳の時に請求せずに66歳以降70歳までの間で申し出た時から繰下げて請求できます。繰下げ受給の請求をした時点に応じて、最大で42%年金額が増額されます。繰下げには、老齢基礎年金の繰下げと老齢厚生年金の繰下げがあります。今後70歳の受給開始時期が75歳までに改正されます。75歳になると、84%増額されます。

75歳受給開始は正しいか

あるファイナンシャルプランナーは、これからは人生100年時代なので、長生きリスクがあり、75歳まで受給開始を繰り下げると言っていた人がいました。この選択は正しいのでしょうか。

考えるべき要素は以下の通りです。

  • 増額された年金の累計額
  • 74歳まで手取り6%で運用した場合の増額
  • 税・保険料を支払った後の手取り額
  • インフレによるマクロ経済スライドの影響

このうち、インフレによるマクロ経済スライドの影響は、かなり複雑な前提を置かなければいけないので、今回は省略します。ただし、大雑把に言って、1割から2割減少しますので、繰り下げ分を取り戻すには、数年の期間を要するものと思われます。

表の区分は以下の通りです。

  • ①年齢
  • ②国民年金受給額
  • ③65歳から受給の単純累計
  • ④74歳まで手取り6%の利回りで運用の累計額
  • ⑤75歳まで繰下げ運用の単純累計
  • ⑥税・保険料支払後の手取り(1割減)累計額
①年齢 ②老齢基礎年金受給額 ③65歳から受給の単純累計 ④74歳まで手取り6%の利回りで運用の累計額 ⑤75歳まで繰下げ運用の単純累計 ⑥税・保険料支払後の手取り(1割減)累計額
65 80 80 80
66 80 160 165
67 80 240 255
68 80 320 350
69 80 400 451
70 80 480 558
71 80 560 672
72 80 640 792
73 80 720 919
74 80 800 1,054
75 80 880 1,134 147 132
76 80 960 1,214 294 265
77 80 1,040 1,294 442 397
78 80 1,120 1,374 589 530
79 80 1,200 1,454 736 662
80 80 1,280 1,534 883 795
81 80 1,360 1,614 1,030 927
82 80 1,440 1,694 1,178 1,060
83 80 1,520 1,774 1,325 1,192
84 80 1,600 1,854 1,472 1,325
85 80 1,680 1,934 1,619 1,457
86 80 1,760 2,014 1,766 1,590
87 80 1,840 2,094 1,914 1,722
88 80 1,920 2,174 2,061 1,855
89 80 2,000 2,254 2,208 1,987
90 80 2,080 2,334 2,355 2,120
91 80 2,160 2,414 2,502 2,252
92 80 2,240 2,494 2,650 2,385
93 80 2,320 2,574 2,797 2,517
94 80 2,400 2,654 2,944 2,650
95 80 2,480 2,734 3,091 2,782
96 80 2,560 2,814 3,238 2,915
97 80 2,640 2,894 3,386 3,047
98 80 2,720 2,974 3,533 3,180
99 80 2,800 3,054 3,680 3,312
100 80 2,880 3,134 3,827 3,444

運用しなければ86歳で逆転

最初に、65歳から受給した場合(③)と75歳から受給した場合(⑤)の単純比較をすると、⑤の86歳(1,766万円)の時に③(1,766万円)を上回ります。つまり、86歳まで生きれば、繰り下げ分の元が取れるということです。

つみたてNISAで運用すれば90歳

しかし、65歳から74歳までの間は年金を受給しなくても生活できるのですから、その年金を受給して全額を外国株式インデックファンドのつみたてNISAで運用するとします。利回りを6%として計算したのが④です。⑤が④を上回るのは90歳です。したがって、90歳まで長生きしないと、繰り下げ分を回収できません。

手取りで比較すると95歳

更に、税・保険料の問題があります。これらは累進課税ですから、繰り下げ受給によって、短期間に多額の受給をすると、所得税、住民税、国民健康保険料(後期高齢者医療保険)も増えます。ここでは、その負担が1割増えるとして手取り額を計算したのが⑥です。65歳から受給した年金を運用しない場合の③に追いつくのが90歳、つみたてNISAなどで運用した場合の④に追いつくのが95歳です。

マクロ経済スライド効果によって100歳?

最後に、先ほど省略したマクロ経済スライドの数年間の遅れを加味すると、100歳近くまで生きないと、75歳までの繰り下げ受給が有利とはいえないかもしれません。

私は65歳から受け取り始めました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です