リタイア後の4%ルールは時代遅れか?

4%ルールとは?

「4%ルール」は資産運用に関する研究から導かれたものです。これは、毎年、資産運用額の4%未満を生活費として切り崩していれば、30年以上が経過しても資産が尽きる確率は非常に低いという内容です。どのようなポートフォリオ(資産構成)にするかなどによって数字は変わってきますが、おおむねこのような意味になります。

7%ー3%=4%

この4%ルールは、アメリカの一般的な株価の成長率(7%)から物価上昇率(3%)を差し引いて計算されたもので、要は投資で得られる利益の範囲内で生活を続ければ、半永久的に資産が目減りすることなく生活ができるという考え方です。

アーリーリタイア

そして資産運用額の4%を1年間分の生活費として切り崩すということは、逆算すれば、元となる資産は1年間の支出の25倍が必要になるということになります。
時代や国が変われば株価の成長率も、物価上昇率も異なるので、いつでもどこでも4%ルールが当てはまるわけではありません。ただし、大きな資産を築いて投資利益の範囲内で生活を続けることでアーリーリタイアが可能になるという点は、どの国、どの時代でも共通しています。

急激なインフレ

アメリカのインフレ率は、急激に上昇しているので、このルールが有効かどうかを、2022年5月22日のUSA TODAYの記事で確認しましょう。以下は拙訳です。

リタイア後の各年にどれくらい使えるかに関する4%ルールはもはや有効でない、と創設者が発言

ビル・ベンゲンは1994年に4%のリタイア・ルールを最初に考案しました。退職した人たちはそれ以来、リタイア後にどれくらい支出すべきかを決定するのに役立たせようと、このルールを当てにしてきました。このルールは比較的単純です。投資総額を計算し、リタイアの最初の年にその合計額の4%を引き出すのです。その後の年は、インフレーションに応じて引き出し額を調整します。

そこで、もし老後のために100万ドル持っているとすれば、最初の年に4万ドル使い、翌年にインフレーションが2%なら、その年に40,800ドルを引き出します。4%ルールは、リタイアした年に株式50%、債券50のポートフォリオを想定しています。

ベンゲンの元々の研究論文に基づけば、1926年以来の、大恐慌、ITバブル、2008年リーマンショックを考慮に入れたとしても、30年ごとに計算しても、退職した人のお金が不足することを防いだでしょう。しかし、高インフレおよび、株式と債券の高い市場評価が重なったために、リタイアした人は支出をある程度調整する必要があると考えています。

今は支出を削減

ベンゲンは2013年にリタイアしましたが、今日における空前の経済状況を鑑みれば、退職者は支出を削減し、引き出し率を引き下げる必要があるだろうとアドバイスしています。最近のモーニングスターの研究によれば、4%は引き出し過ぎです。その研究では、引き出し率を3.3%から始めることを推奨しています。

ここでは、株式と債券を半分半分にして、30年以上の期間にわたって90%程度の確率でお金が不足しないことを想定しています。この研究で分かった重要なことは、支出に柔軟性を持たせるほど、時間が経つにつれ、引き出し率を上げる可能性が高まるということです。

高インフレと株式の高評価の衝撃

1913年以来の平均インフレ率は3.1%でした。現在のインフレ率は8.3%ですから、4%未満の引き出し可能性はかなり増えます。これが意味することは、ポートフォリオはより高いリターンを稼ぐ必要があるか、あるいは、ポートフォリオが枯渇する可能性が高まったということです。

ベンゲンが取り上げているもう一つの問題は、株式の評価が歴史的に見て高いことです。現在、株式は過去10年にわたる企業利益の約36倍で取引されています。「これは歴史的平均の2倍です。低金利であるため、株式評価額はある程度高くなりますが、現状の株式相場は高いと思います」とベンゲンは言います。

株式評価額が高いと、その後には通常弱気相場が続き、株価は平均水準に戻ります。したがって、現在まだ景気後退か弱気相場に入っていなければ、近い将来そうなる可能性は十分にあります。このような時期には、退職者はお金が枯渇しないようにするために、引き出しをなお一層注意深くする必要があるでしょう。

リタイアと医療費:医療費に30万ドル以上かける準備をする

この支出削減をした後、株式と債券に対するリスクを引き下げることをベンゲンは勧めます。こうしておけば、もし景気後退や弱気相場になった時に、リスクを減らせます。現金や収入をもたらす不動産などの資産を保有しておけば、株が安くなった時に購入できる機会があるかも知れません。それでも退職者は用心深くなる必要があります。大事なことは市場の頃合いを測ろうとしないことですが、それは、重大な事態に陥るかも知れないからです。

現在の経済状態からすると、退職者は人気の4%ルールを再考する必要があります。専門家はこの人気ある退職者収入戦略の創設者も含め、これが時代遅れになっていて、お金が不足するリスクを管理するファイナンシャル・プランと支出を評価すべきだと考えています。重要なことは、お金に関して柔軟性を持ち、長期的観点からお金を見続けることです。