110円 ⇒ 125円
ドル円相場は、1年前に110円を切っていましたが、最近は125円になりました。1割以上上昇しています。アメリカのS&P500は上昇していないのに、円安になっているために評価額は過去最高を記録しています。
この円安の理由は何でしょうか?円安はどこまで行くのでしょうか?
日経CNBCの解説で勉強しましょう。
125円まで円安ドル高が急激に進んだ理由
いろいろなファンダメンタルの動向が円安ドル高にそろったのが理由です。
1.日米金利政策の差
アメリカはこれからどんどん金融を引き締める。一方日本は黒田総裁の会見でもわかるように、絶対に金利を上げないという考えです。それに、円安はトータルで見ると日本経済にとってプラスと考えているので、円安は国策と考えているということです。
2.コモディティ価格上昇 → 貿易赤字拡大
新型コロナが落ち着きを見せ始め、経済再開に伴って資源価格が上昇するとみられていましたが、それに加えて、ウクライナ紛争が勃発しました。拍車がかかった形なので、資源のほとんどを海外から輸入する日本は、資源価格が上昇すると必然的に貿易赤字が拡大します。
例えば原油だけとってみても、1日に400万バレルを輸入しますので、1バレル50ドルの時は8兆円ですが、100ドルになると17.5兆円。これが一部で予想されている150ドルになると、23,4兆円ということで、膨大な金額になります。
同様に、天然ガスなど他の資源の価格も上がってきますので、日本経済は痛手を被ります。貿易収支は赤字になりますが、経常収支は、季節性でちょっと赤字になりましたが、継続的に赤字になるには、まだ距離があるでしょう。
3.118円以上にあったノックアウトオプション
これは、ファンダメンタルというよりはマーケットの特殊事情です。輸入企業はドルや外貨を調達しなければいけないのですが、その調達のために、ドルコール・円プット・オプションを購入してヘッジします。ただ、オプションのマネーが高いので、イン・ザ・マネー・ノックアウト、つまり、今後の想定方向、コールオプションだったら、どんどん上がっていくと利益が出るのですが、途中でなくなってしまうトリガー条項を付けています。そうすると、オプションがかなり安く買えるので、皆さんは、それを付けています。それが118円から120円だったのですが、それがきれいさっぱりなくなったので、ドルを高いところで買わざるを得なくなった。それが期末の3月というタイミングだったので、売買が集中してしまいました。
4.個人投資家のドル円ショートポジション
長い間、ドルロング・円ショートというポジション、つまり、ドルを買って円を売る期間が続きました。それがなぜか、最近ドル・ショート・円・ロングのポジションになっていました。これまでは、あまり動かなかったので、上がったところで売って、下がったところで買っていたの利益が出ていましたが、いろいろな業者が自動売買、つまり、売り上がって、買い下がった商品を出していました。それが一気に反対方向に行ったようです。売っていた人たちのショートポジションの買い戻しが、円安を加速させた要因の一つでしょう。
5.大学ファンドによるドル買い
大学ファンドが買ったという噂があります。直接売買の場を見ることはできないので噂だけですが、公表資料によると、2021年度中にスタートさせ、初年度は4.5兆円の規模で始めています。グローバルのポートフォリオとしていて、7割くらいは海外なので3兆円のドル買い円売りになります。2,3月にそれだけドルが必要になるということです。
リニアに言えることではないのですが、何もないところで1兆円の買いが出ると、おそらく1円くらい上がるかなと思います。時間の経過とともにそのインパクトは消えますが、3兆円買うと、2~3円のインパクトはあると思います。
日銀が指値オペを2回実施したことで、ドル円が急騰しました。その時にノックアウトオプションがトリガーしたことも理由ですが、同時にそういう理由があったので拍車がかかった。日本もこれからインフレになるので、長期金利も上昇傾向になる。そこで、イールドカーブ・コントロールを続けて、指値オペを実施するがどこまでやり続けるのかという問題があります。
日銀バランスシート拡大 → 円安進行
↑ ↓
指値オペ ← インフレ懸念金利上昇
ヘッジ・ファンドは、今、ドル円のロングとJGBのショートを同時に持っています。確かに指値オペをすると、JGBのポジションは負けますが、JGBを売ることによって、日銀のバランスシートは膨らみます。
これまでは年間何十兆円と買っていましたが、ここ数年はほとんど買っていません。けれどもマーケットに対抗する形で、日銀が意図する以上にバランスシートが膨らむ可能性があります。日本のインフレ率が高まるという観測が進むと、投資家も入ってくるので、円安材料になり、ドル円のポジションは儲かることになります。そこで、どこかの時点で、まだ、先の話ですが、イールド・カーブ・コントロールの政策をやめる瞬間が来ると思います。
円安が進んで130円とか、140円になるとやめるので、その時にはJGBのショートはすごく儲かると思います。ドルが130円、140円になる可能性はあると思います。
日銀がこの政策を続けている間は、資源価格が高い状況が続く可能性があるので、黒田さんが辞めない限り、この政策は続くと思います。
円が買われる理由は円がものすごく安いということ。最後は、マーケットに押されるか、参院選も近づいており、議員は地元に耳を傾ける人も多いので、こんな円安では参院選を戦えない、という状況になると変わってくるかもしれません。しかし、今は国策として、円安政策をとっています。インフレにしたいという政策をとっています。黒田さんは、変えないと言っています。トータルで見ると、円安は日本にプラスだと言っています。だから、円安は進みます。それが変わるタイミングは、黒田さんが辞める来年の春ではないかとおもいます。