<注:「50歳代、60歳代のための具体的投資(70歳代以上の方もどうぞ)」については、今日はお休みです。明日から再開します。>
経済、景気にも大きな影響を与えている新型コロナのワクチン接種に関して考えます。
このワクチン接種に関しては、日本は早くて2月下旬を目指しているそうです。しかし、欧米は昨年12月から接種が始まっています。菅首相は「先手先手」で対応すると言っていますが、大幅に後れを取っています。なぜこんなにも開始が遅れているのでしょうか。そして不思議なことは、この遅れの原因をマスメディアが問題にしたり、原因を究明しようとしないことです。
最初にワクチン接種の遅れた理由を、各種ニュース等から探ってみましょう。
ワクチン対応遅れる日本、理由は <産経新聞 2021.1.15>
欧米に比べ、日本はワクチン接種への対応の遅れが目立つ。ワクチンには副作用のリスクが伴うため国内での利権が重視され、承認手続きが進んでいない。
国内では昨年12月、米製薬大手ファイザーから承認申請があり、厚生労働省は、他の先進国で承認されているなどの条件を満たせば審査手続きを簡略化する「特例承認」の手順に沿って審査を進める。
一方、日本人に投与しても安全かを確認するために原則国内でも治験が必要という方針を堅持。2月までに終了予定の日本人約160人を対象とした地検の結果を見極めて判断する。
最短で2月に承認されても、一般向けの接種は今春以降にずれ込む。まずは医療従事者から優先接種を始め、続いて上昇かリスクのある高齢者への接種態勢を整える。基礎疾患のある人、高齢者施設職員らは4月以降とみられる。
世界で最もワクチン接種が速いのがイスラエルと言われています。<NHK2021年1月25日>
世界各国で新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっていますが、スムーズに接種を進めるにあたって、課題に直面している国も少なくありません。そんな中、世界最速ともいえるペースで接種を進めているのがイスラエルです。どのような方法がとられているのか、イスラエルの曽我支局長の解説です。
Q1.イスラエルのワクチン接種 どれほど進んでいる?
(記者)
イスラエルでは2020年12月19日から、ファイザーなどが開発したワクチンの接種が始まりました。
それからおよそ1か月後、1回目の接種を終えた人は230万人を超え、人口のおよそ3割にのぼっています。
優先的に接種が行われている60歳以上となると、すでに7割を超えています。
イギリス・オックスフォード大学の研究者らがまとめている「アワー・ワールド・イン・データ」によりますと、少なくとも1回はワクチンの接種を受けた人が人口に占める割合は、1月21日の時点でイスラエルが最も多く33.93%。2位のUAE=アラブ首長国連邦の21.85%や、3位のバーレーンの8.44%を引き離し、最速ペースで進んでいます。
イスラエルではすでに2回目の接種も始まっていて、政府は3月末までに、16歳以上のすべての国民に対する接種を終えたいとしています。
Q2.なぜそんなに早く進められる?
(記者)
複数の理由が考えられますが、大きく2つの理由が考えられます。
●理由1 国民皆保険制度
1つ目が、整備された医療制度の基盤です。
イスラエルでは日本と同じように、国民皆保険制度が導入されていて、国民は「医療保険機構」への加入を義務づけられています。日本で言う「健康保険組合」のような団体です。
イスラエルの場合、保険による医療サービスの提供などは「医療保険機構」に一元化されていて、今回のワクチン接種でも、この団体が業務を一手に担っています。
接種する場所はすべて機構が準備し、自分たちで経営する病院や診療所を会場にあてているほか、ドライブスルーやスポーツ施設での接種も行っています。
人材が足りない施設では、看護師や救命救急の人員を臨時で雇い、対応にあたっているということです。
各会場の稼働時間は自治体の規模などによって異なりますが、取材をしたエルサレムのバスケットボール専用施設では、午前8時から午後10時までの1日14時間、接種を受けつけていました。
また1日あたり30人ほどが働き、2000人に接種することができるとしていました。
理由2 デジタルヘルスの推進
そして医療保険機構の業務を支えているのが、ITを取り入れた「デジタルヘルス」です。
イスラエルでは1990年代、人口の増加や高齢化にともなって、医療費の増加が課題となりました。
このため「デジタルヘルス」の推進を進め、業務の効率化を図ってきた経緯があります。
IT化によって機構は現在、国民の病歴といった膨大な個人情報を一元的に管理しています。
そうしたデータに基づいて、接種は高齢者や基礎疾患のある人など、感染によるリスクの高い人から順番に行われています。
対象者には、携帯電話のメッセージで直接連絡。
出向いてもらう日時や会場を伝え、同意する人は専用のアプリなどに登録した上、接種を行うという仕組みです。
機構は、各会場の混雑状況も一手に把握し、対象者をすいている会場に案内することで、混雑を回避する取り組みもなされています。
最大の政府系の病院「シェバ・メディカル・センター」で業務改革の責任者を務める、エイアル・ツィムリヒマン氏は「データに基づいて、対象者にすいている会場に行くよう指示できるし、ワクチンが余れば次の対象者に連絡してすぐに来てもらうこともできる。イスラエルの制度はこうしたオペレーションに非常に適している」と話していました。
Q3.ワクチンの入手は順調だった?
(記者)
イスラエルは、800万回分のワクチンをファイザーから購入することで合意しています。
ネタニヤフ首相は1月、「友人であるファイザーのCEOと17回目の会談を行い、さらなるワクチンを受け取ることで合意した」と述べ、個人的な関係をいかして調達を進めていることをアピールしています。
また報道では、他国よりも高値で契約を結び、早期の経済再開を急いだとも伝えられています。
1月17日には政府が、ファイザーとの合意文書の一部を明らかにしました。
この中では、イスラエル側がワクチンの接種状況などのデータを定期的に公開する代わりに、ファイザー側もすみやかにワクチンを提供するといった内容も含まれていました。
専門家は、迅速な接種から得られる情報は、製薬会社にとってもメリットが大きく、各国との競争においてもイスラエルは、有利な立場にあると指摘します。
「シェバ・メディカル・センター」のアルノン・アフェク副事務局長は「接種後に腕が痛くなったり頭痛がしたり、極めて少ないが深刻な副反応が起きたりといった情報はファイザーにとって非常に重要な情報だ。ファイザーは開発の最終段階で4万人に臨床試験を行ったが、イスラエルは3週間で190万人に接種できている。ファイザーにとってイスラエルにワクチンを提供した方が良いということになる」と話していました。
Q4.これまでに公開されている情報から分かることは?
(記者)
これまでのところ、生死に関わるような深刻な副反応は報告されていないということです。
一方、ワクチンの成果についても具体的なものはまだ示されていません。
ワクチンの接種が進むことで、感染はいつどういったタイミングで収束に向かうのか。世界最速ペースのイスラエルにおけるワクチン接種の進め方や、そこから得られるデータに、各国や製薬会社の注目が集まっています。
以上の記事を見る限り、ワクチン接種が世界より大幅に遅れている理由は、次の2つのようです。
-
① 過去のワクチン被害の経験から、厚生労働省が接種に慎重であること
-
② 日本政府が製薬メーカーに十分な働きかけをしなかったために、相対的に供給する順番が後回しにされたこと
一方、遅れの原因をマスメディアが究明しないことについては、その理由が分かりませんでした。
マスメディアが遅れの原因を究明することは、単に過去の責任を問いただし、次の新型ウイルスへの対応を改善するだけの意味ではありません。今回のコロナウイルスのワクチン接種を日本国民全員、あるいは集団免疫が掲載されるまで1年以上かかると考えられていますが、その期間を短縮するための秘訣が隠されているのではないかと思われるのです。マスメディアは、ぜひ、ワクチン接種開始が遅れた理由を明らかにしてほしいものです。