新型コロナ対策と国債格付け

ヨーロッパの新型コロナウイルス第2波

ヨーロッパでは先月以降、各国でことしの春を上回る水準で、新型コロナウイルスの感染が再び拡大しています。フランスでは新型コロナウイルスの感染が再び急速に広がっていて感染者はヨーロッパで最も多く120万人を超えました。1日の死者の数も27日には500人を超え、医療現場の状況も深刻化しています。

フランスの外出制限と休業補償

このため、フランスのマクロン大統領は10月30日から1か月余り、ことしの春以来となる全国一律の外出制限を行うと発表しました。外出制限に伴い、休業補償などの財政措置を求める声が大きくなってきています。

各国の財政赤字拡大

今回の新型コロナウイルスに対する措置は緊急事態ということで、各国とも財政赤字を大きく膨らませています。しかし、もともと先進諸国と比べて極端に高い国債残高のあった日本の将来を、そろそろしっかり考えるべき時です。

日本国債の低い評価

財政赤字は国債で賄っていますが、日本国債の評価は低く、それが国と企業にも重荷になっています。そこで、債券の格付けについて、確認をしましょう。

格付け機関によるランク付け

債券の格付けとは、「格付機関」が国・企業などが発行する債券の信用力や元利金の支払い能力の確実性などを分析して、その度合いをわかりやすい記号でランクづけしたものです。
格付けは第三者による意見ですが、債券の信用リスクを知る上で重要な指標の一つです。

ムーディーズ、S&P

格付けを行う「格付機関」としては、ムーディーズ(Moody’s)、スタンダード&プアーズ(Standard & Poors)、フィッチ・レーティング(Fitch Ratings)、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)などがあります。

ところで、この格付けは信用できるのでしょうか。

エンロンは格付け会社の上得意

2001年12月2日にエンロンは米連邦破産法第11条を申請しましたが、その数日前まで、格付け会社はエンロンの社債を投資適格としてきました。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。自社の社債を格付けしてほしい企業は、格付け会社にお金を払って格付けを依頼します。格付け会社にとってはお客様ですから、あまり無碍な対応ができず、甘い評価に無い安いとの指摘があります。

日本の格付け会社の評価は?

また、日本の格付け会社は、日本国債がアフリカの国債よりも低いという評価が米国の格付け会社からなされたのを機に設立されました。しかし、その評価は低く、ムーディーズ(Moody’s)やスタンダード&プアーズ(Standard & Poors)の評価の方が、信頼感が高いようです。

ムーディーズ

ムーディーズ (Moody’s Corporation) は、アメリカの民間企業で、米大手債券の格付け機関業務を行っています。スタンダード&プアーズ (S&P) と並ぶ2大格付け会社の一つで、企業や債券などの信用力を調査し、信用格付けを行っています。主に債券の発行会社から格付け手数料収入を得て、格付けを行っています。

S&P

S&P グローバル・レーティング(英: S&P Global Ratings)は、S&P グローバル(NYSE: SPGI)の一部門であり、金融商品または企業・政府などにつき、その信用状態に関する意見及び投資情報を提供する、世界最大手の格付け機関です。アメリカ合衆国・ニューヨーク市に本部を置き、世界26ヵ国にオフィスを展開しています。

日本の格付けは米国やドイツよりはるかに低く、中国と同レベル

各国の国債格付けは以下の通りです。

ムーディーズ S&P フィッチ
日本 A1 A+ A
米国 Aaa AA+ AAA
英国 Aa3 AA AA-
ドイツ Aaa AAA AAA
イタリア Baa3 BBB BBB-
スペイン Baa1 A A-
中国 A1 A+ A+
トヨタ A1 A+ A+

現在、日本国債の評価はムーディーズでは、A1ですが、過去がどうだったかを見てみましょう。1998年11月まではAaaでしたから、現在の米国、ドイツと同じ水準で最高ランクです。

自分なら中国の国債を買いたいと思うか?

現在中国の国債と同じレベルですが、もし自分が中国の国債を買うことができるとしたら、買うかということを考えてみましょう。

米国債なら4~5%

中国の国債でなく、米国債だったらどうでしょうか。米10年国債の金利は現在0.826%ですので、もう少し金利が高くないと買いたくありません。例えば、2%では買いませんが、4~5%なら、ある程度買いたいという気持ちになります。

中国国債なら10%欲しい

中国の国債は、当然米国債より高くなければ買う気になりませんから、為替変動リスクも考慮に入れると、金利10%は程度は欲しいところです。その中国国債と日本の国債が同じ格付けですから、やはり金利10%は、欲しいのです。私のように知識や経験の少ない個人投資家は、このように考えるかもしれませんが、プロの投資家が日本国債について、高金利を要求するようになるかもしれません。そのきっかけの一つが、格付けということもあり得ます。

格付けが下がれば金利上昇

今のところ、日本銀行が国債を引き受けているので、高金利になっていませんが、このまま10年、20年と買い続けるわけにはいきません。いつかは、増税、インフレの時期がやって来ます。日本国内に、自分のお金をおいているのではなく、分散を図ることしかいい知恵が浮かびません。パックンの言う「ガンガン分散」という言葉が胸に響きます。