<昨日の続き:「行動経済学を応用した消費者詐欺被害の予防に関する一考察」―金融広報中央委員会(事務局 日本銀行情報サービス局内)福原 敏恭ーという論文の勉強です>
(注)⇒は私の意見です。
さらに、詐欺被害を未然に防止する取組みとして、
①金融機関職員による顧客への声掛けや、警察への通報奨励など被害の水際阻止策、
②高齢者の振込上限額の引下げ、
③預貯金口座や携帯電話の売買取締りなどの加害者対策、
などの活動も推進されている。
こうした消費者詐欺による被害は、わが国のみならず欧米でも社会的な問題となっている。例えば、米国での被害件数は、近年増加の一途を辿っている。このため、海外においても大規模な消費者調査や、詐欺被害の原因究明、被害防止教育など、様々な対応策が展開されている。
そこで、本章では、わが国および米英における消費者詐欺被害の状況を確認する。本節では、それに先立ち国内外における消費者詐欺の定義を比較する。
まず、わが国については、警察庁が特殊詐欺を「面識のない不特定の者に対し、電話その他の通信手段を用いて、預貯金口座への振込みその他の方法により、現金等を騙し取る詐欺」と定義している。なお、警察庁が把握している認知件数ベースでみると、特殊詐欺のうち振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺および還付金等詐欺)が 98%を占めている。
一方、米英などでは、“consumer fraud”、 “mass-marketed scam”などと呼ばれることが多い。英国の定義をみると、「面識のない消費者に対し、電話などの通信手段を通じて金銭を騙し取るために、作り話を持ちかける行為」とされている。また、米国における定義も、「詐欺的行為のうち、消費者個人から金銭を詐取するもの」となっており、いずれも、やや抽象的ではあるが、基本的にはわが国の特殊詐欺の定義と類似している。
また、消費者詐欺の具体的な手口は、わが国と英米では、文化的背景や社会事情等が異なるため、加害者が用いるシナリオや、被害者との通信手段、資金授受方法等は異なるが、家族の愛情や利得心につけ込もうとする点には共通しているところが多い。
具体例を挙げると、英米においても、わが国のオレオレ詐欺に相当する“Grandparents scam”(孫を騙って祖父母にアプローチする詐欺)や、“Familyemergency scam”(家族の緊急事態を騙った詐欺)などの手口が存在する。このほか、架空の投資話を持ちかける投資利殖商法や実体のない宝くじに当選したと持ちかける当選商法など、利得勧誘系の詐欺も多発している。
留守電が有効
⇒ 有効な方法として、留守電にすることがあげられます。そして相手が何を話しているかを聞いてから返答するか、「はい」と言って出るだけで、こちらの名前を名乗らないようにしています。
また、最近は、ガス点検、トイレ修理などで手荒な犯罪があるようですから、ニュースなどで対応策を考えておく必要があります。
(2)消費者詐欺被害に関する統計
本節では、国内外の関連統計を用いて、被害状況を確認する。
(消費者詐欺の被害遭遇率)
過去1年間における被害遭遇率をみると、わが国で利用可能な調査では、3%程度となっている。海外の調査によると、米国では 10%台となっている一方、英国は 6%程度となっており、総じてわが国よりも高い値となっている。
ただし、国際比較に当たっては、調査方法が国や調査機関によって異なることが大きな影響を及ぼしている可能性があることに留意が必要である。
詐欺被害調査の場合、各国に共通して、詐欺に遭ったことを認めたがらな い傾向が調査結果に大きな影響を及ぼすことが知られている。また、被害率は、回答方法によっても異なっており、例えば米国の調査例をみると、匿名のアンケート調査では 11%であったのに対し、面談調査では 4%と、大きな違いがみられた。
さらに、被害届出ベースの統計は、過小推計傾向があるといわれており、例えば、わが国でも、詐欺や悪徳商法の被害経験時に消費生活センターや警察に連絡したとの回答割合は、38%に止まっている。
(消費者詐欺被害者の属性)
消費者詐欺被害の防止策を講ずる際に、被害者に共通する特徴点を明らかにできれば、対象となる消費者層を絞り込むことができる。このため、国内外では、詐欺被害者の性別、年齢、経済環境、家族構成など属性面に関する調査が行われている。
まず、わが国の振り込め詐欺の被害者属性を確認すると、被害者の 62%は、70 歳代以上が占め、そのうち約 8 割を女性が占めている。
これを振り込め詐欺の類型別にみると、オレオレ詐欺の被害は、高齢の女性が非常に多い一方で、融資保証金詐欺では、男性・50 歳代以下の被害が目立つ。このような属性の違いには、高齢・女性が日中在宅していて電話をとる機会が多いこと、融資資金ニーズのある個人事業者は男性・50歳代である確率が相対的に高いことが影響している。
一方、米英の被害者調査をみると、「詐欺の被害者になり得るか」という観点からの総体的なデータ分析では、属性による特徴的な傾向は確認されていない。
例えば、英国当局は 2006 年、1.1 万人の消費者を対象とした大規模な被害調査を実施した。その結果、被害者全体でみると、性別・年代・学歴などに大きな偏りはみられず、「誰でも詐欺被害者となり得る」との結論を示している。
また、米国スタンフォード大学は、2012 年に詐欺被害状況に関する報告書を公表している。同調査では、性別や年齢別のみならず、学歴、家族構成、人種、住居環境などの属性についても調査しているが、全体としてみると、明確な特徴は確認できず、「典型的な被害者」は存在しないと述べている。
もっとも、米国で実施された架空投資詐欺と宝くじ詐欺に特化した被害調査では、性別や年収によってどちらのタイプの詐欺に陥り易いかを窺うことができる。
以上のように、国内外で、詐欺のタイプ(=誘因)別に被害者属性の特徴をある程度捉えることは可能であるが、「およそ詐欺に陥り易い普遍的な属性」というものは、確認されていない。このため、詐欺被害の分析や予防策の検討に当たっては、実際の詐欺事例を分析することで、具体的な議論を深めていくことが重要である。
誰でも詐欺に遭いそう
⇒ 女性はオレオレ詐欺の被害が多いぐらいで、どんな詐欺に遭ってもおかしくないようです。ニュースで最新の手口を確認して用心しておくしかありません。昔よりは物騒な時代ですが、それでも世界に比べると、安全な方なのでしょう。