<昨日の続き>
不動産の囲い込み
不動産を売ろうとしている個人が気を付けなければいけないこととの一つが『不動産の囲い込み』です。囲い込みとは売却の依頼を受けた不動産業者が、他の不動産業者からの買主紹介を意図的に制限することです。
レインズ
不動産売買に関して知っておくことにレインズがあります。レインズの目的は、不動産業者同士で物件情報のやり取りを行い、物件の売買を円滑にして全国の不動産物件を流動させることです。レインズの仕組み・流れは以下のようになっています。
- 不動産仲介業者は売主から物件売却の依頼を受け、その物件情報をレインズへ登録
- レインズに物件登録すると、全国の不動産業者と物件情報が共有される
- 物件購入の依頼を受けた不動産会社は、レインズで物件の検索を行い、買主に紹介する
買い手を紹介しない
売却したい物件はレインズに登録されると、閲覧することができて、買いたいという人が現れます。しかし、売り手側の仲介業者が、「現在他のお客様と交渉中です。」などとでたらめを言って、拒否することにより、取引を成立させないことが可能です。
売り手だけなら3%、両側なら6%の手数料
なぜ、そのようなことをするかというと、仲介業者は売り手側から3%、買い手側から3%の手数料を受け取ることができるので、自分で買い手を見つければ合計6%の手数料を受け取ることができます。しかし、レインズで見つけた買い手側の仲介業者が3%の手数料を取れば、自分の手数料は3%に減ってしまいます。このため、自分で買い手を見つけるまで他の買い手を見つけないようにするのです。これが「囲い込み」です。
囲い込みの問題は次の二つです。
① 販売に要する期間が長引く
買いたいというお客様がいるのに、それを断り続ければ、売る機会が減るのですから、当然販売するのに時間がかかります。
② 販売価格が安くなる
例えば、1,000万円の物件の取引が成立すると、売り手側の仲介業者の手数料は3%の30万円ですが、囲い込みをすれば売り手側3%、買い手側3%の合計6%になるので60万円の手数料を得ることができます。物件の価格は高い方が仲介業者の手数料は高くなりますが、囲い込みができれば1,000万円で売らずにもっと安くても良い場合があります。例えば、800万円で取引が成立すれば、売り手、買い手の手数料は合計で6%の48万円ですから、1000万円の売り手手数料30万円よりも高くなります。これは、買い手にとってはもうかりますが、売り手にとっては損をします。
これから不動産業者の実態について確認しようと思いますが、私は、不動産の専門家ではありませんので、2018年6月1日公開(2020年8月21日更新)のダイヤモンド不動産研究所の資料を基に勉強したいと思います。
「両手取引」「囲い込み」は海外では違法
大手不動産仲介会社の2018年3月期の両手取引の比率を試算したところ、驚くべきことに「両手取引」が蔓延していることが判明した。日本の不動産の売買取引において、不動産仲介会社は「売り手」と「買い手」の両者から手数料を取る「両手取引」が認められているが、「囲い込み」といわれる顧客に不利益な行動につながりやすい。海外では問題が多いため違法とする「両手取引」「囲い込み」について、解説しよう。
まず下図を見てほしい。これは大手の不動産仲介会社について、2018年3月期の「両手取引の比率」と、「手数料率」とを試算したものだ。
企業名 | 両手取引比率 | 手数料率 |
イエステーション | 67.55% | 5.43% |
住友不動産販売 | 62.75% | 5.27% |
近鉄不動産 | 61.53% | 5.23% |
三井不動産リアルティグループ(三井のリハウス) | 57.53% | 5.10% |
相鉄不動産販売 | 53.64% | 4.98% |
ポラスグループ・中央住宅 | 53.37% | 4.97% |
センチュリー21・ジャパン | 44.63% | 4.69% |
東宝ハウスグループ | 42.80% | 4.63% |
住友林業ホームサービス | 42.17% | 4.61% |
大京グループ | 42.14% | 4.61% |
スターツグループ | 37.83% | 4.47% |
京王不動産 | 37.32% | 4.45% |
小田急不動産 | 37.30% | 4.45% |
朝日住宅 | 35.06% | 4.38% |
大成有楽不動産販売グループ | 33.12% | 4.31% |
東急リバブル | 28.79% | 4.17% |
長谷工リアルエステート | 28.16% | 4.15% |
三菱地所リアルエステートサービス | 26.61% | 4.10% |
三井住友トラスト不動産 | 26.11% | 4.09% |
三菱UFJ不動産販売 | 24.33% | 4.03% |
すてきナイス(連結) | 23.84% | 4.01% |
大和ハウスグループ | 23.02% | 3.99% |
野村不動産グループ | 21.94% | 3.95% |
みずほ不動産販売 | 21.73% | 3.94% |
日本土地建物販売 | 19.65% | 3.88% |
三菱地所ハウスネット | 19.60% | 3.88% |
京急不動産 | 3.83% | 3.36% |
3%、4%、5%の手数料
不動産売買における仲介手数料は、「成約価格の3%+6万円」(税別、売買価格が400万円以上の場合)が上限と宅地建物取引業法で定められている。だが、「両手取引率一覧」を見ればわかるとおり、実際の手数料率が4%を超える会社はざらであり、高いところでは5%台に達する。
両手取引
これは、不動産売買の手数料を、売り手からだけではなく、物件を購入した買い手側からも得ているからだ。このように、売り手と買い手の双方から手数料を得ることを「両手取引(両手仲介)」という。
三井のリハウス、住友不動産
当然ながら平均手数料率が高い会社ほど、「両手取引比率」が高くなる。そこで、「両手取引比率」はどのくらいなのかを試算してみたところ、大手29社のうち、6社の両手比率が50%を超えていることが分かった。特に3大不動産仲介会社のうち、三井不動産リアルティグループ(三井のリハウス)、住友不動産販売の2社が、50%を越えていた。このように日本では、不動産売買において「両手取引」が当たり前のように行われているのが実態だ。(関連記事「大手不動産が不正行為か、流出する“爆弾データ”の衝撃」)。