◎今日のテーマ:在職老齢年金制度の見直し
収入が多いと年金が減額
現在の在職老齢年金は、一定の給与がある高齢者の厚生年金を減らす仕組みになっています。私は現在60歳代前半でパートタイマーとして働いています。給与が1か月28万円を超えると、超過分の半額を年金から減額されるので、私は勤務日数を調整して、減額しないようにしています。また、65歳以上では月47万円以上の給与の場合、年金が減額されます。私の場合、働かない日は、親の介護を行ったり、自分の趣味や勉強の時間に充てています。フルタイムで働いて厚生年金の掛け金を増やすか、あるいは、特別支給の老齢厚生年金をもらうかは、それぞれの人々の生き方の問題であるところが大きいと思います。
この減額制度をやめると、年金支給額は年間1兆円以上も増えるために、財源の手当てが課題になります。
一方、60歳代の高齢者から見ると、パートとして働くのではなく、フルタイムで働けといわれているような気もします。具体的に考えると、労働時間、業務内容、労働条件等かなり場合分けが必要で、40代はもちろん、50台になっても具体的な判断は難しいかも知れません。
また、年金が減額され無くなれば、「高額所得者優遇」との批判を招くことにもなりそうです。
しかし、このような制度とは別に、定年まで勤めていた会社にそのまま勤められるだけの余力が、その会社にあるかどうかという問題があります。例えば生命保険会社の営業員は、優秀な人であれば、70歳でも十分に能力を発揮して勤務できますが、そのような能力を持つ人は極めて稀有です。生命保険会社の営業員は100人採用しても100人が続かずに辞めていくそうです。
年金の制度が変わったとしても、現実に努められる職場があるかどうかということは、個々の会社、個々の人材の状況によって大きく変わります。
会社の社員の新陳代謝を図るために、役職定年、出向、転籍などの前倒しで進められていく中で、個人個人がどのようなスキルを身につけ、転身を図っていくかということは難しい問題です。
将来はITの一層の進展によって、現在の事務業務が減り、創造的業務のウエイトが増加するかもしれません。
今回の在職老齢年金制度の見直しは、年金が減ることを理由に高齢者が働くなるのを防いで、引き続き保険料や税金を払う「支え手」になっても売らう狙いがあるとのことですが、業務内容がどんどん変化する社会の中で、そのようなことが現実に可能なのでしょうか。特に高学歴で、管理職を長年にわたって経験してきたような人たちは、現在でも定年後に職を得られない場合が多いようです。私の知り合いの周りでは、60歳初めの年齢で既に7割がリタイアしたといっていました。今回の見直しは、フルタイムで働いている一部の人達の意見を取り入れたもので、現場の感覚とはかなりかけ離れているような気がします。