閲覧数が多い野口悠紀雄の日本人の給与
今東洋経済ONLINEで最も閲覧数が多いのが野口 悠紀雄の「日本人は国際的に低い給料の本質をわかってない――アベノミクスにより世界5位から30位に転落した」だそうです。
アベノミクスの本質
「日本の賃金は、OECDの中で最下位グループにある。アメリカの約半分で、韓国より低い。同様の傾向がビッグマック指数でも見られる。
ところが、アベノミクス以前、日本の賃金は世界第5位だった。その後、日本で技術革新が進まず、実質賃金が上がらなかった。そして円安になったために、現在のような事態になったのだ。円安で賃金の購買力を低下させ、それによって株価を引き上げたことが、アベノミクスの本質だ。」
ハンバーガーは日本の1.5倍
私は、今年外国旅行に行っていませんが、昨年まで旅行すると、外国の物価が高いことに驚きます、ハンバーガーは日本の1.5倍くらいの値段です。スーパーマーケットの野菜や果物も品質が悪い上に、日本の1.5倍の価格です。逆に言うと、日本の物価が低すぎるのかもしれません。インバウンド景気などと言って喜んでいましたが、日本は安くて良い品質のものが手に入ったから、外国人が日本に来たのでしょう。
野口氏の意見をもう少し見てみましょう。
日本の賃金はアメリカの約半分で、韓国より低い
OECDが加盟諸国の年間平均賃金額のデータを公表している。
2020年について実際のデータを見ると、つぎのとおりだ。
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日本は3万8515ドルだ。他方でアメリカは6万9391ドル。したがって、日本の賃金はアメリカの55.5%でしかない。
ヨーロッパ諸国を見ると、ドイツが5万3745ドル、フランスが4万5581ドル、イギリスが4万7147ドルだ。
韓国の賃金は4万1960ドルであり、日本の値はこれよりも低い。
2020年において日本より賃金が低い国は、旧社会主義国と、ギリシャ、イタリア、スペイン、メキシコ、チリぐらいしかない。
日本は、賃金水準で、いまやOECDの中で最下位グループに入っていることがわかる。
だから、日本人は、日本で得た賃金を外国で使っても、あまり大したものが買えない。
こうした状況に対処しようと思えば、アメリカや英独仏、あるいは韓国などに出稼ぎに行き、日本より高い賃金を得ることだ。日本人が老後生活を送るためには、海外出稼ぎを真剣に考えなければならない時代になってきた。
「ビッグマック指数」というものが算出されている。これは、イギリスのエコノミスト誌が公表しているデータで、各国のビッグマックの価格を比較したものだ。
2021年のデータを見ると、つぎのとおりだ。
日本のビックマックは390円で、これを為替レートで換算すると3.55ドルになる。
他方で、アメリカのビックマックは5.65ドルである。したがって、日本のビックマックはその62.8%ということになる。
上で見たように、OECDの数字では、日本の賃金はアメリカの賃金の55.5%だった。ビッグマックの価格の違いも、賃金格差のデータとほぼ同じだ。
またユーロ圏のビックマックはドルに換算して5.02ドル、イギリスのビックマックが4.5ドルである。これも、賃金格差とほぼ同じ傾向だ。
さらに、韓国のビックマックは4.0ドルであり、これは日本の3.5ドルより高い値になっている。これも賃金の場合と同じだ。
アベノミクスの本質:労働者を貧しくして株価上昇
日本の賃金が国際的に見て大幅に低い状況は、本来は不均状態とはいえない。
なぜなら、もしマーケットが正常に機能していれば、日本製品の価格が安いのだから、日本の輸出が増え、円高になるはずだからだ。
この調整過程は、現在の上記の不均衡がなくなるまで続くはずだ。
しかし、円高になると、輸出の有利性は減殺される。本来は、円高を支えるために、企業が技術革新を行い、生産性を引き上げねばならない。
それが大変なので、円安を求めたのである。
手術をせずに、痛み止めの麻薬に頼ったようなものだ。
このため、日本の実質賃金は上昇しなかったのだ。
物価が上がらないのが問題なのではなく、実質賃金が上がらなかったことが問題なのだ。
賃金が上がらず、しかも円安になったために、日本の労働者は国際的に見て貧しくなった。
日本の企業が目覚ましい技術革新もなしに利益を上げられ、株価が上がったのは、日本の労働者を貧しくしたからだ。
これこそが、アベノミクスの本質だ。
就職しやすくなったり理由
20代の若い人たちは、アベノミクスの時代に就職の時期を迎え、売り手市場だからアベノミクスを高く評価する傾向にありました。しかし、アベノミクスで就職がしやすくなったのではなく、戦後の団塊の世代が退職して人手不足になったから、新卒が売り手市場になっただけなのです。
日本はコスト削減だけ
日本は1990年代、2000年代に大幅なコスト削減を実施して、円高にも耐えうる経済力をつけてきました。しかし、新しい価値を創造するようなイノベーションを起こすことはできませんでした。それを実現できたのはアメリカだけだったかもしれません。
それでは私たち日本の個人投資家はどうすればよいでしょうか。
アメリカの研究力に対して日本の研究力はかなり劣っているようです。当面は、日本株式の割合を増やさずに、アメリカへの投資に頼るしかないのかもしれません。