魅力のなくなった内外MMF
私(江戸庄蔵)は、10年前は外貨資産を外貨MMFで保有していました。しかし、世界的な低金利が進んだので、外貨MMFの利回りも数パーセントから下落して1%未満になりました。特に日本のMMFとユーロMMFの利回り低下がはなはなだしく、繰り上げ償還、つまり、廃止になってしまいました。そこで私は外貨MMFを全額売却して外国株式ETFに変換しました。現在保有している外貨MMFは、外国株式ETFの分配金として支払われるUSMMFと豪ドルMMFだけです。
ドルと豪ドルの為替レート
一方で、外国の株式ETFの評価は、全て日本円に換算して行うのですから、ドル円と豪ドル円の為替レートは気になるところです。日本は、他の先進国から見ればクレージーなほどの国債残高がが膨らみ、しかも、それを気にせずに借金を膨らませています。日本は、高齢化、人口減少が進み、産業の行く末も決して明るいものではありません。
10年ごとに事件は起きる
政府債務残高が増加したのは、リーマンショック、東日本大地震、新型コロナウイルスショック、ロシアによるウクライナ侵略のせいだと考えがちですが、このような事件は、10年に一度程度は家なら発生すると考えるべきであって、そのための準備を普段からしておかなければならないのです。
資産バブル、ITバブル、リーマンショック
1980年代はバブル経済に浮かれてはいけなかったし、1990年代は円を大事に保有していなければいかなかったのです。2000年代はITバブルやリーマンショックにあたふたせず、2010年代はコツコツとアメリカの株式に投資すべきでした。
今は外国為替に関しどのように考えればよいでしょうか。ドルと豪ドルに関して、私がいつも注目しているアナリストの意見を勉強します。
ドル円相場のトレンドを読む、天井はいつ来るのか
尾河眞樹ソニーフィナンシャルグループ執行役員兼金融市場調査部長
2022年4月28日 –
「もうはまだなり、まだはもうなり」という相場の格言がある。そろそろ天井と思ってもまだ上昇する可能性もあるし、反対にまだまだ上昇すると思っても、実はそこが天井となる場合もあるので、色々な可能性を想定すべしという意味だ。個人の思い込みや相場観への過信に対する戒めである。
<久しぶりの大相場>
実際、今回のドル円上昇は久々に見る大相場だ。3月7日の週から足元まで、ローソク足は7週連続の陽線で、約14円もの上昇幅となっている。さすがに人々の関心も高まっているようで、為替取引の有無にかかわらず、幅広い知人、友人から「まだ上がりますか?」との質問を頻繁に受けるようになった。結論から言うと、短期的には、いったんの調整局面がいつ来てもおかしくないと考えている。
理由は、1)投機筋が大きく円売りポジションに傾いていること、2)市場で年内の米国の大幅利上げが既に織り込まれていること、3)日本政府が円安に対する警戒感を強めていること、の主に3点だ。
<トレンド形成と終焉>
一方、長期的なドル円相場は、日米の実質金利差とおおむね連動している。振り返れば2012年から2015年、ドル円は4年にも及ぶ長期の上昇トレンドとなった。上昇幅は1ドル=76円台から125円台までの49円(約64%)で、「アベノミクス」が主因だった。日銀のインフレ目標設定や、「量的・質的緩和」による、「バズーカ」と言われる大規模緩和が実施された一方で、FRBの量的緩和縮小など緩和からの出口戦略が注目を集めた。この間日米実質金利差は拡大し続け、これと共にドル円が上昇していたのは記憶に新しい。日米の金融政策の方向性が完全に逆向きだったことで、ドル円の上昇ペースも速かった。
このトレンドは2015年の黒田日銀総裁による円安けん制、いわゆる「黒田ライン」発言や、米国政府がドル高への警戒感を強めたこと、2015年末から2016年年明けの原油価格急落と米株価下落などで終焉した。このように、それまで為替相場のトレンドをけん引していたテーマが終わる、あるいはほかのテーマに切り替わる時、相場のトレンドは終わりを迎えるものだ。
<ドル年末130円、来年央135円も>
黒田日銀総裁は22日、米コロンビア大学の講演で、足元のインフレは資源価格の上昇によるコストプッシュインフレであり、金融政策でコントロールできるものではないと説明した。また、日本の需要サイドによるディマンドプル型のインフレ圧力は弱く、むしろ緩和的な金融環境を維持することで経済を支える姿勢を示した。日本の金利環境は当面変わらないうえ、米国はまだタカ派に傾斜する可能性もあるとすれば、原油価格が何かのきっかけで急落するなどしない限り、ドル円相場の上昇トレンドは、今後ペースダウンしたとしても当面変わらないのではないか。
上昇ペースのカギを握るのは、やはり米国の金融政策だ。ソニーフィナンシャルグループでは、FRBの利上げ予測を引き上げた。5月から9月まで、4回連続して50Bpsの利上げを実施、残りの2回は25Bpsで、年末の政策金利は2.75%─3.00%と予想する。これにより、米長期金利ももう一段上昇し、来年央にかけて3.4%をうかがう動きとなるとみている。日米実質金利差からみれば、日本の金利環境が変わらない限り、ドル円は年末にかけて130円付近、来年央にかけて135円付近を試す可能性が示唆される。
日米の金融政策のギャップが為替市場のテーマになっている以上は、このトレンドが終了するのは、日銀が政策を変更するか、FRBが引き締め政策を変更する、あるいはその兆しが表れた時になるだろう。しかし日銀が長期金利の上昇を許容する可能性があるとすれば、来年後半になるだろうし、米国の景気減速によって、FRBが利下げに転じるような環境になるのは、2024年以降となりそうだ。したがって少なくとも来年前半ごろまでは、緩やかなドル円の上昇が続く公算が大きい。
資源高進行で買われやすい豪ドル円、100円トライも
植野大作 2022年4月18日
ロシア・ウクライナ戦時下で豪ドル/円が堅調に推移している。3月下旬には一時、94円30銭台と2015年7月以来の高値を記録した。1月下旬に刻んだ年初来安値は80円30銭台だったので、わずか2カ月間で17%を超える値上がりだ。
その後はようやく頭打ちになり、日本の新会計年度前の利益確定や持ち高調整の売りが入ると下落に転じ、90円70銭台まで軟化する場面もあった。だが、新年度が明けるとすぐに反発し、断続的に94円前後まで買い戻される様子が観測されている。
<豪ドル支える3つの理由>
最近目撃された急騰劇はあまりに激しかったこともあり、心理的節目の95円の手前で伸び悩んでいるが、90円台をキープしながら下値は堅く、約6年8カ月ぶりの高値圏で次の方向を模索中だ。果たして今後、豪ドル/円は上下どちらに向かうのだろうか。
この先もしばらくの間、豪ドル/円は、堅調に推移するだろう。動くと早い通貨ペアなので、何かの拍子に勢いづいたら短期間で数円程度の上下動はありそうだが、基本的には「下値が堅く、上値が軽い」地合いが続きそうだ。そのように考えている理由は3つある。
<ウクライナ戦争が国際商品市況押し上げ>
第1に、ウクライナとロシアの戦争長期化による供給懸念を背景に、燃料、農林畜産物、金属材料などの市況が軒並み高騰し、資源輸出大国の通貨である豪ドルに強い追い風が吹いている。
<RBAに利上げ期待>
第2に、資源高の追い風を受けて豪州景気の回復が続く中、RBAによる利上げ期待が強まっている。2020年初頭のコロナ・パニックの荒波に飲み込まれ、2019年末まで28年間も続いていた奇跡の景気拡大記録は途切れたが、その後、すぐに豪州経済はV字回復を果たし、約1年後には実質国内総生産(GDP)の水準もコロナ前の水準に復帰した。
4月5日のRBA理事会後に公表した声明文でロウ総裁は、今後の利上げ開始時期に関して「忍耐強く」判断するとの文言を削除していた。豪州の政策金利先物市場では6月ごろからの利上げスタートが織り込まれつつあり、豪ドルの先高観を助長している。
<円に逆風>
第3に、資源輸出大国である豪州に追い風になっている国際商品市況の高騰は、輸入国である日本にとっては非常に厳しい逆風になっている。日本の輸入依存度が高い各種コモディティ価格の値上がりが痛手になり、昨年の夏ごろを境に日本の貿易収支は赤字に転じた。その後、ウクライナ戦時下で進むさらなる資源高により、最近の収支尻は季節調整後の年率換算で10兆円を超える規模まで膨らんでいる。
現在、日本の円は主要通貨圏では金融緩和の出口までの距離が最も遠い貿易赤字国の通貨となっており「売られる理由」を探すのはとても簡単だが、「買われる理由」を見つけるのが非常に難しい状態にある。
以上の3つの理由から、この先も豪ドル/円は年初来高値圏をキープしながら堅調に推移しそうだ。心理的に重要な節目にある1豪ドル=95円付近のレジスタンスを突破して勢いがついたなら、2014年12月以来となる100円超えを試しに行く可能性もあるだろう。
今年中のどこかで心理的に重要な節目であることを誰もが認める1豪ドル=100円を8年ぶりに突破した場合、おそらく相当な達成感が広がりそうだ。そこから先の上値余地は限られるのではないか。