富裕層の多いアメリカ
日本では、富裕層に関し野村総合研究所が定義したものが良く使われていますが、アメリカではどうなのでしょうか。フロリダの沿岸地区では、クルーザーがたくさん停留していて、数千万円から数十億円のものまであります。自宅にプールのある家も数千万件あるそうで、私の知り合いの子供もテキサスにプール付きの家に住んでいると言っていました。しかしアメリカの富はごく一部に偏在しているので、気を付けて見ないといけないと思います。
アメリカ人は本当に株式投資が多いか
たとえば、岸田総理が、「我が国、個人の金融資産は2000兆円と言われていますが、ここに日本の大きなポテンシャルがあります」と発言し、日本では家計の金融資産に占める現金・預金の割合が54%ほどなのに対し、株式や投資信託への投資はわずかに14%ほど。一方、アメリカでは株式と投資信託が51%に達しますと言う説明があります。
平均値と中央値は異なる
しかし、これは平均値であって、中央値ではありません。極端な例を言えば、国民の1%の富裕層が99%の富を保有していれば、その99%の人達は、株式を持たず、1%の富裕層だけが株式を保有しているのかもしれません。
そこで、アメリカのお金持ちについて、ブルームバーグの2022年5月24日の記事で勉強することにしましょう。以下は拙訳です。
世界で最も裕福な国には裕福の概念がない
裕福だと感じるには、どれほどのお金が必要でしょうか?裕福とは何でしょうか?お金とは何でしょうか。これらの質問は、時間は経ちましたがチャールズ・シュワブ社が2月にイー・オールデン・タイムズの中で実施した調査の結果によって提起された、難解な質問に一部に過ぎません。
ちょっと難問ではありましたが、この調査の結果、「裕福な」について人々は、新型コロナウイルス・パンデミックの始まる直前の2020年には260百万ドルだったのですが、そこから下落して220万ドルが必要だと考えていることが分かりました。「経済的ゆとりがある」について、調査の回答者は、934,000ドルから下がって774,000ドルになったと考えています。
消費者物価のインフレ率に関しては前年比で、パンデミック前は2%だったのが現在は約8%に高騰したことを考えると、「裕福な」、「経済的ゆとりがある」、「ミルクが買える」と人々が感じるのに必要な財産はもっと多いのかもしれません。その反面、パンデミックによって金額の設定の程度が低くなったのかもしれません。裕福だと感じるには、RV車、ズームの楽しい背景、コート・ダジュールの自宅事務所が必要かも知れません。
それどころか、シュワブの調査によると、雇用を考えた時に多くの回答者が価値、それも、複数の価値を高く評価していることが見受けられます。半分以上が、「より良い個人的価値や関心」を提供する企業のためには、より低い給与の仕事でも構わずに選択すると言う。もちろん、個人の価値や関心には、コート・ダジュールの個人住宅事務所を含むので、人の利点はさまざまに変わります。
それでも回答者の89%は仕事を成し遂げることを望んでいて、85%は同僚の尊敬を集め、価値観に基づいてキャリア形成をしたいと考えています。このような数字は単に意識の高く数の多いミレニアルの態度を反映していると考えるといけないので、調査の回答者の56%はジェネレーション・エックスとベビー・ブーマーであると言っておきます。
このように、おそらく、最近お金は重要性が少し低くなっているのが実態かも知れません。そして世界的に見ると、世界の年収の中央値が約12,000ドルだということを考えれば、220万ドルは途方もない金額と言えるでしょう。アメリカのスーパーの店員ーーつまり、少なくともまだセルフレジによって置き換わっていない仕事ーーは、そのような基準からすれば、裕福であるか、あるいは少なくとも経済的ゆとりがあるのです。
一方で、最近の物価はどうでしょうか。概して、経済的ゆとりのあるリタイアには、リタイア年齢の年収の10倍が必要かもしれません。シュワブ調査回答者の家計収入の中央値は68,000ドルですから、リタイアする人の中央値は68万ドル必要になるだろうと言うことを意味します。この中央値により多少なりとも、シュワブ調査回答者の中央値の家計が経済的にゆとりのあると考える774,000ドルはすぐにゆとりが無くなり、特にインフレが蝕めば直更です。
残念なことにほとんどのアメリカ人はリタイア後に生き残るために十分な資産を持っておらず、経済的にゆとりがあったり、あるいは贅沢に暮らすには一層不十分です。投資会社のシュローダーズから本日発表された別の調査――これも2月に実施され、S&P500が500ポイント高かった時です——によると、アメリカ人は、経済的にゆとりのあるリタイアをするためには110万ドル必要だと考えています。しかし、それを実際に達成すると予想しているのは4人に1人未満です。
恐ろしいことですが、シュローダーズ調査回答者でリタイアあるいはそれに近い人の半数以上が25万ドル未満しか貯蓄をしていないと言っています。そしてここでも、見方は人によって様々ですが、ほとんどの場合25万ドルは大金です。しかし、ほとんどのアメリカ人は、2022年に「経済的にゆとりがある」ということは、実はどれほどお金がかかるのかを思い知らされています。
(注) アメリカには日本の厚生年金に相当するものが無く、自分でつみたてなければいけませんから、日本人より3千万、4千万円多く貯蓄しておく必要があります。