パフォーマンスにおいて「アクティブファンドはインデックス(パッシブ)ファンドに勝てない」

アクティブ、パッシブのファンドの最近の状況を確認します。


マネクリの2023/05/22の記事です。

ベンチマークを上回る投資成果を目指すアクティブ運用とベンチマークに連動する投資成果を目指すパッシブ運用について話します。

4月にS&P社からSPIVA日本スコアカードと呼ばれるアクティブ運用投資信託のパフォーマンス測定結果が示されました。年2回公表されるデータですが、直近分は2022年末までの国内で取り扱われている株式ファンドについて日本から新興国まで、各アクティブファンドが対象ベンチマークに劣後(アンダーパフォーム)した割合を集計しています。

【アクティブファンドが参照指数にアンダーパフォームした割合】

1年 3年 5年 10年
日本大型株 68% 77% 90% 82%
日本中小型株 75% 50% 47% 52%
全ての日本株 70% 71% 82% 73%
米国株 53% 90% 95% 91%
グローバル株 71% 82% 82% 95%
国際株 42% 87% 96% 96%
新興国株 80% 88% 91% 100%
(期間1年は2022年、3年は2022年末までの3年を示す。S&P社レポートから小数点以下四捨五入)

長期投資の観点から過去10年に着目すると、日本中小型株でアンダーパフォーマンスの割合が半分程度と相対的に低位ですが、総じてベンチマークに勝つのは難しいことが分かります。新興国株に至っては過去10年で100%が劣後しています。インデックスファンドの26勝2敗です。

投資信託協会によると信託報酬はアクティブファンド平均年1.14% vs インデックス0.38%です(2023年3月末)。コストの高さがある分アウトパフォームが難しくなる点はあるでしょう。また過去10年のアクティブファンドの生存率は全ての日本株ファンドで62%、米国株で56%、新興国株では30%と勝ち続けることの難しさが伺えます。

では長期資産形成にはパッシブファンドが有利なのでしょうか?まずこの集計に含まれるアクティブファンドは玉石混交です。パッシブ投資と大差無いながらアクティブを名乗りコストが高いファンドが含まれる可能性があります。

アクティブファンドとは付加価値を追求する投資哲学があり、時に投資銘柄への配分が集中するなど参照指数との構成比率が大いに異なる(べき)ものです。その哲学に共感できるかは大事な判断基準となりますし、手数料が高くてもその価値には注目です。また東証が資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請する中で、変化する企業を捉えるポテンシャルはアクティブ運用に期待されるところです。

4月に金融庁から出された資産運用業高度化プログレスレポート2023によると、機関投資家は市場連動のパッシブ運用の組入割合が高いものの、アクティブ運用は調査活動によって中長期的に成長性の高い企業を発掘し、選別するという、重要な価格発見機能を担っている、とされました。日本株の成績は先ほどのデータでも相対的に良好な中でアクティブ運用の拡大余地は大きいです。

なお債券ファンドではアクティブ運用の勝率が株式の場合より高いとの分析があります。参照指数に非効率性があり、逆にアクティブ運用には収益機会となる場合や、参照指数は過度に銘柄の入れ替えが起きる、またアクティブ運用はデリバティブを活用してアルファが追求できるなどと言われています。

アクティブファンドは手数料面などで敬遠されがちですが、パッシブでは捕捉しきれない領域への運用手段として魅力的です。過去は将来を約束するものでは無いですが、先ほどの生存率の低さを見ても、ある程度これまでのパフォーマンスは参考に見るべきでしょう。投資哲学面で共感できるものや興味ある分野への投資を通じて、世界をより身近に感じられるのも魅力ではないでしょうか。

欧米で先行するアクティブ型のETFについて日本でも導入が議論されており、6月下旬にパッシブETFに限定する今の上場ルールの改正が見込まれています。こちらはETFなのでコスト面でより魅力的となるかもしれませんし、今後の展開が注目されます。


株式新聞2021/11/4の記事

パッシブファンドとアクティブファンド-それぞれに強みと弱みがあり、どちらが優れていると言うことは出来ない。パッシブファンドであれば、指数への連動を目指すという分かりやすさ、比較的多くの銘柄への分散投資、低コストなどの利点がある一方で、指数に含まれる業績低迷銘柄などにも投資するという問題がある。アクティブファンドであれば、指数を大幅に上回るリターンを獲得する可能性や、(基本的に)目的に沿った銘柄に厳選して投資するといった利点がある一方で、リターンが指数を大幅に下回るリスクやパッシブファンドに対する相対的なコストの高さなどの問題がある。どちらに重きを置くかは投資家の運用に対する考え方によるが、両者のリターンの現状を踏まえておくことは有益だろう。

国内大型株式、先進国株式(日本除く)、米国株式、新興国株式を対象に、アクティブファンドの暦年のリターンが、その属する資産を代表する指数のリターンを上回った比率を調べた。調査期間は2002-2021年の20年間で、2021年は9月末時点における年初来リターンを使用した。比率が50%であれば、指数のリターンを上回ったアクティブファンドと下回ったアクティブファンドの数が同じ、50%を超えればアクティブファンドが指数(=指数に連動するパッシブファンド)に対して優勢、下回れば劣勢となる。

国内大型株式では、モーニングスターカテゴリー「国内大型グロース」「国内大型ブレンド」「国内大型バリュー」に属するアクティブファンドの暦年のリターンを調べ、各年におけるTOPIX(配当込み)の騰落率を上回ったファンドの比率を調べた。その結果、20年間のうち50%を超えた年(アクティブ優勢年)は8年に留まった。

先進国株式(日本除く)では、カテゴリー「国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」に属するアクティブファンドを対象とし、MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円ベース)を上回ったファンドの比率を調べた。20年間のうち50%を超えたのはわずか2年であった。

米国株式では、カテゴリー「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」に属するアクティブファンドのうち、S&P500種株価指数(配当込み、円ベース)を上回ったファンドの比率を調べた。20年間のうち50%を超えたのは3年であった。

新興国株式では、カテゴリー「国際株式・エマージング・複数国(為替ヘッジなし)」に属するアクティブファンドを対象とし、MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み・円ベース)を上回ったファンドの比率を調べた。20年間のうち50%を超えたのは4年であった。

いずれも、アクティブファンドが劣勢となった。アクティブファンドの高いリターンを獲得する可能性に懸けるのであればそれも良いが、株式ファンドへの投資から安定的な収益を獲得したいのであれば、パッシブファンドをコアと位置付けた上で、アクティブファンドでリターンの上積みを図ることが妥当であろう。パッシブファンドではよりコスト水準が低いファンドが、アクティブファンドは低コストかつ良好なパフォーマンスを挙げているファンドが望ましい。なお、国内大型株式では、直近5年間(2017-2021年)のうち2018年を除く4年間でアクティブファンドの超過率が50%を超えている。国内大型株式についてはアクティブファンドに重きを置く余地もある。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です