最近の資産増加額を見てみましょう。
- 1月は前月より 1000万円増
- 2月は前月より 500万円増
- 3月は前月より 100万円減
- 4月は前月より 700万円増
- 5月は前月より 1500万円増
- 6月は前月より 1800万円増
- 今年の前半だけで5400万円増
これはさすがに、ピッチが速すぎる気がします。しかし、バブルかと問われれば、バブルではないと答えるでしょう。日経平均で数千円規模の調整、つまり下落はあるにしても1989年のようなバブルではないと考えています。それでも、いろいろな見方があるので、見てみましょう。
日経平均株価、大台3万円超えの先の先を読む
2023/6/14東洋経済オンライン
■年末に3万6000円へ リスクは割高な米株の調整
強気派 マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
日本株が急伸した背景としてはさまざまな要因を指摘できるが、まずは基本的なことを確認したい。ファイナンス理論によれば、株式に限らずすべての証券の理論価格は将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いたものとして表される。キャッシュフローを左右するのは企業の業績で、割引率は長期金利だ。つまり、株価は企業業績を金利で割り引いたものだといえる。代表的な数式として「P=E÷r」が挙げられる。Pは株価、Eは企業業績、rは割引率(金利)を表す。
まず分母の割引率(金利)を左右する日本の金融政策について、植田・日銀の新体制になっても金融緩和が継続する見通しである。少なくとも向こう1年程度は金利が大幅に上がる可能性はそうとう低いといえる。
次に分子のEだ。今年度の上場企業の業績は増益となり、3期連続で最高益を更新する見通しだ。その牽引役が自動車産業だ。トヨタ自動車はグループ世界販売が1138万台と過去最高となり、営業利益で初の3兆円を目指す。部品メーカーにも好影響を与え、デンソーは6年ぶりの最高益になる予想。こうなると円安も業績の追い風だ。企業の想定為替レートは1㌦=130円程度。実勢に照らせば業績は上振れる可能性が高い。
このように企業業績は最高益で、それを割り引く金利が当面上がらないとなれば、「業績÷金利」で表される株価が上昇しないわけがない。日経平均株価のバブル後高値更新は当然の帰結である。
こうしたファンダメンタルズのよさに加え、需給やマクロ、政治の安定性などの要因が指摘できる。
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の日本株に対するポジティブな見方も、海外投資家の呼び水となった可能性がある。海外投資家が日本株を見直しているのには、東証によるPBR改善要請を受けて日本企業が大きく変貌する兆しを鋭く嗅ぎ取っているという理由もある。実際に、ROEの数値目標を掲げたり、増配や自己株買いなどの株主還元策を発表したりする企業が相次いでいる。
日本のマクロ環境も良好だ。消費が緩やかに回復し、インバウンドもさらに期待できる。
日経平均の予想PERはまだ14倍台。確かに過去1年でみれば14倍台は高いが、アベノミクス相場開始の2013年からの過去10年では平均PERは15倍強だ。円安効果を考えれば業績の上振れ余地は十分にある。日経平均の予想EPS(1株当たり利益)は現状の2180円から1割上方修正されて、年後半には2400円に達するだろう。それをPERの過去平均15倍で評価すれば、日経平均は年末には3万6000円に上昇すると予想する。
ただし、リスクは国内よりも海外だろう。とくに米国は景気減速の懸念が高まっている。また米株価は割高水準で、調整が起こる可能性がある。日本株相場のリスクは、米株の調整に巻き込まれるリスクオフ(投資家のリスク回避で株から安全資産に資金が移動)である。
■上昇理由はいずれも怪しい 夏場に2万7000円へ下落も
慎重派 ブーケ・ド・フルーレット 代表 馬渕治好
日本株、というよりも日経平均株価は直近では買われすぎだ。
その理由はPER(株価収益率)などで見た企業価値評価によるものではない。今、市場では①円安②欧米との金融政策の差③米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の日本株買い増し効果④東京証券取引所の要請による低PBR是正期待の4つが上昇理由とされているが、ことごとく怪しいからだ。
順に見ていこう。①「円安は輸出企業の収益を支える」というが、日本からの輸出数量は4月まで前年比7カ月連続の減少だ。これは海外景気悪化による需要減だろう。輸出金額も4月分はわずか2.6%増。円安で何とか息継ぎをしているにすぎない。しかも中国向けは前年比5カ月連続マイナスで、ゼロコロナ政策解除後も同国経済は不振が続く。
②はすでに存在しており、新たな材料ではない。
③は「バフェット効果で海外投資家が買い出動している」というが、同氏がこれから日本株を本格的に買うかどうかは保証の限りではない。ただし、バフェット氏の発言を「ネタ」と割り切って買いを入れている短期筋は多いと推察される。
④についても、日本株の経験が長い海外長期投資家たちからは、「言われて改革できるならとっくに改革しているはず」との正当で冷静な見解が聞こえる。足元は自己株買いなどによるROE引き上げの動きが広がるが、「余剰資金抱え込み」という最悪の経営を続けてきた日本企業が一部を株主に還元しているにすぎない。「手元の現金を優れた投資機会に充て、長期での高い利益成長で株主に報いる」というのが株価を上げる企業経営のはずだが、どれほどの日本企業がそこまでの経営改革に踏み切れるだろうか。
このように現在の日本株の買い材料とされているものを並べると、ことごとく「砂上の楼閣」に見える。今後は「日本株の正常化」という名の「短期株価下落」の局面が訪れそうだ。
ただし、日本株の下落は「リーマンショック」や「コロナショック」のような暴落にはなるまい。日本経済にはインバウンド消費の拡大や国内の人流の回復など、底堅さを期待させる材料が多い。むしろ悪材料は海外からやってくる。欧米では景気を犠牲にしてでもインフレを抑え込もうとの金融政策が継続。また中国も、前述のように景気悪化がうかがえる。これらが経済面から日本を圧迫し、今後海外株安と外貨安・円高が並行して日本株を押し下げるだろう。
今後訪れるのはよくある「普通の景気悪化による普通の株価下落」にすぎない。日経平均の今年の最安値は、年央から夏場にかけての2万7000円程度と見込む。その後、今年末、さらに来年に向けては、世界経済の持ち直しに沿った世界的な株価上昇の流れの中に、日本株を位置づけてよい。それは、インフレ率が緩やかながら低下を続け、一方で景気悪化が深刻化すれば、米国などの主要国で再度の金融緩和が行われると予想するからだ。これが日経平均も下支えする形で、今年末までに再度3万円の大台を奪回するだろう。