連れ合いの運用実績 2023年7月

15年間で2倍は少し残念な結果

現在の評価額は、元本の2倍を超え、指数では201になりました。2008年から15年間投資しているのですから、3倍くらいになってもよさそうなものですが、リーマンショックで気落ちした後、追加投資をする気力を失ってしまいました。そのころには安くETFが買えたのですから、ドルコスト平均法などを使ってコツコツと投資していれば良かったのですが、理想通りにはいかないものです。

連れ合いのポートフォリオは、外国株式ETF:国内株式ETF=6:4で、外国株式への投資を増やしたいので、来年からの新NISAでは、国内株式ETFを半分売却して、全世界株式の低コストインデックスファンドを1800万円購入する予定です。

外国株式への投資を増やしたい理由の一つが、今後見込まれる円安・インフレです。それに関して、集英社オンラインの2023年8月1日の記事を読みましょう。4回シリーズの3回目です。


日本の「財政再建」は信用を維持し続けられるのか? 防衛費の増強など「蟻の一穴」になりかねない歳出拡大の政治的誘惑

熊野英生

日本の財政再建が信用を維持できている理由

今後、日本が財政再建の信用を維持し続けるためにはどうすればよいのか。財政に関する専門用語を使うと非常に難解になるので、そうした言葉を一切使わずに説明を試みたい。

わかりやすく言うと、日本の財政再建を、企業の経営再建になぞらえるのがよいと思う。かつては、造船業界で世界屈指の競争力を誇ったある企業が、現在は国際競争力を失い、メインバンクの経営支援を受けているとする。この会社が再建されるためには、何が必要であろうか。

まず、株主や取引先、従業員など利害関係者からの信用を得るために、①数年間の経営再建計画を立てることが必須になる。企業活動では、常時、資金の貸し借りや、支払義務が生じており、そこで利害関係者はその会社が潰れないことを信用して、債権をすぐには回収せずに資金取引を継続する。従業員も同じで、働いて得た給与が遅配なしに振り込まれるなら安心して雇用契約を継続していられる。

その信用を担保するのが、経営改善計画である。日本経済の場合、基礎的財政収支(プライマリー・バランス、略してPBという人もいる)がそれに当たる。今後、数年間の財政収支の見通しを示し、いずれ債務元本の返済開始ができる計画になっている。

2023年1月に発表された「中長期の経済財政に関する試算」(内閣府)では、2025年度に黒字化する目標に対して、2026年度にそれが達成される見通しが描かれている(図表3-1-1)。この見通しは、毎年1月と7月の年2回改定されている。

日本の財政再建が信用を維持できている理由を三つの要素に分類すると、次の①~③によってだと理解できる。

①経営再建計画が存在して、それがきちんと履行されていること。先述した通りそれが確認されると、多くの利害関係者は、その会社の経営の持続性が保たれていると安心する。それが信用力の担保になっている。

着実に増えている日本の税収実績

次に、その計画を実行するときに、資金的なバックアップが必要だ。従って第二の条件は、②金融支援になる。企業の場合はそれをメインバンクが行う。日本政府の場合は、日本銀行が担う。低金利融資を続けて、発行する社債(国債)は買い入れを行っている。

ここで重要なのは、企業とメインバンクが完全な馴れ合いの関係ではなく、独立していることである。完全に馴れ合いになっていると、企業のどんな質の悪い社債でもメインバンクが買い取ってしまうと思われて、信用はがた落ちになる。日銀の独立性がそれを担保する。ただ、日銀は、実質的には超低金利を続けなくては、政府の債務管理計画は維持できない。従って、馴れ合いにならないギリギリの一線を引いて、政府との間で節度を保っている。

ここまで、財政再建が信用してもらえる方法として、①経営再建計画の発表、②十分な金融支援が必要だということを確認した。もう一つ重要なのは、③経営再建計画が実行されていることが、きちんと実績として示されていることだ。

よく経営改革では、PDCAサイクルという仕掛けを用いる。計画(Plan)→実行(Do)→確認(Check)→改善(Action)という循環プロセスである。信用は、計画だけでは十分ではなく、実行して、計画をよい方向に改善し続けていることを示さなくてはいけない。③実績を示すことは、実行・確認・改善の証拠を提示するのと同じだ。

日本の財政の場合、まだ元本返済までは時間がかかるが、税収実績は着実に増えている。消費税率は2014年4月と2019年10月の2段階で引き上げられた。税収はそれ以前に比べて、格段に増えるようになった(図表3-1-2)。財政の信用は、痛みを伴う増税に耐えたことで上がった。特に、海外投資家からの信用は高まった。

日本の財政再建についての「きな臭い動き」

税収は、インフレによっても増える。最近は、税収70兆円も目前になるまでに増えた。政府の「中長期の経済財政に関する試算」(2023年1月)では、2022~2032年度までの11年間の成長実現ケース見通しが示されていて、税収は68・4兆円から92・9兆円へと1・36倍に増えることになっている。政府の支払能力が増えるということだ。

日本の財政が信用を保ち続け、地道に再建計画を履行していくしかない。しかし、その代償として、低金利を我慢しなくてはいけない。その低金利を我慢している間に、元本返済を開始して、税収の余裕を作る。その余裕の度合いに応じて、少しずつ日銀は政策金利水準を引き上げていくことができる。

日銀の黒田前総裁は、退任時期が迫る2022年12月に、長期金利の変動幅の上限を0・25%から0・50%へと引き上げることを決めた。短期金利を0・1%のマイナスに据え置く方針を維持しつつ、長期金利のところは変動幅を広げることを許容して、事実上の長期金利上昇を認めたかたちだ。

後任になった植田総裁は、今後本格的な利上げに動く準備をしているという見方もある。筆者は短期金利のマイナスをプラスに引き上げるのはまだ先だと予想する。企業の資金調達に影響力があるのは、短期金利を動かすことだ。

大局的に見て、基礎的財政収支の黒字化を2025年度に果たすことは、本格的に植田日銀が利上げを実行していくための前提となるだろう。そうした意味では、私たちはしばらくの間、低金利を我慢せざるを得ない。

反対に、財政再建についてかなりきな臭い動きがあることも事実だ。2022年5月から、政府はそれまで毎年、「骨太の方針」のときに確認していた2025年度に基礎的財政収支を黒字化するという目標年限を発表しなくなった。約束の曖昧化である。

その背後には政治的な駆け引きがある。岸田政権は、財政健全化の目標自体は維持しつつ、財政再建を明確にするという方針を曖昧にした。官房長官の談話では「より明確なので、既定のこととして特に記載はしていない」としている。

案の定、2022年12月に発表された翌年度の政府予算案では、歳出が大きく増える結果になっている。一般会計歳出の総額は、114・4兆円になった。前年度の当初予算107・6兆円から一気にプラス6・8兆円の増加だ。理由は、防衛費を増やすための中期計画を実行し始めたからだ。防衛費の増強のために、今後5年間で43兆円を支出することになっている。

かつて日本は「アジア諸国に配慮」とか、「軍事大国にはならない」といった自制心が働いていたが、いとも簡単に節度は失われた。2022年2月に始まったウクライナ侵攻や北朝鮮の挑発が背景にあることは間違いない。

防衛費だけを増やして国家を守れるのか?

しかし、防衛費だけを増やして国家を守れるのだろうか。ウクライナの教訓は、経済規模が小さい国でもサイバー攻撃に立ち向かうことが可能であることや、ドローン活用が戦争のあり方を変えたということだ。米国から高価な戦闘機や攻撃用ミサイルを購入しても、新しい形態の戦争への防御力が高まるとは思えない。

ロシアがウクライナに仕掛けたのは、原発を攻撃したり、電力供給を寸断して国民を不安に陥れる作戦だった。日本の原発は、北朝鮮の攻撃にさらされたときに大丈夫なのか。防衛の専門家ではなくても、防衛費を倍にしたからと言って安心かどうかには強い疑問を抱く。

今にして思えば、2025年度の財政健全化目標を明記しなかったことは大きな転換への布石だったと感じられる。こうした布石は、しばしば「蟻の一穴」と呼ばれる。どんな鉄壁のダムでも、それが崩壊するときは、小さな針穴が開いて、その穴が大きくなって崩壊に至る。財政健全化を明記しないことは、財政運用の信用を崩す「蟻の一穴」になりかねない。

防衛費が「蟻の一穴」であれば、それに続くのは子ども予算の倍増、グリーントランスフォーメーション(GX)予算あたりか。数年度にわたって計画される大型予算にとって、2025年度の財政健全化の目標は邪魔な存在なのだ。そうした歳出拡大の政治的誘惑は、日本の信用維持に対して脅威になる。

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