家計の資産1845兆円で、国債はあと何年買い続けられるでしょうか

◎今日のグラフ:家計の資産1,845(2017年9月末、兆円)で、国債をあと何年買えるでしょうか。

日本銀行では、参考図表 2017年第3四半期の資金循環 (速報) を公表しています。この資料によると

家計 資産          1, 845兆円    ▲
家計 負債              318兆円  ▲
一般政府 資産                         568兆円     ★
一般政府 負債                     1, 276兆円       ▲
民間非金融 法人企業 資産  1, 207兆円             ★
民間非金融 法人企業 負債  1,756兆円                 ★

このうち、▲を考えます。家計の資産は1,845兆円ありますが、家計の負債が318兆円あります。従って、現在すでに政府負債に当てている1,276兆円を差し引いて、新たに政府の負債を引き受けることができるのは、残り251兆円になります。

    家計の資産1,845(2017年9月末、兆円)

家計の金融資産 1845兆円 ― 家計の負債318兆円― 一般政府負債(国債を含む)1276兆円=251兆円

なお、これ以外に民間非金融法人の資産等がありますが、次の式の通り、ほぼ全額が相殺されて、19兆円しか残りませんので、ここでは無視することとします。

一般政府資産568兆円+民間非金融法人企業資産1207兆円―民間非金融法人企業負債1756兆円=19兆円  ⇒  相殺されたと考えます。

19年後に新規国債の引き受け手がいなくなる

2018年度予算のうち、新たな国債発行は33.7兆円ですから、この数字が続くとすると251兆円÷33.7兆円=7.4年後に国債の引き受け手が無くなります。ところが、数年前から日本銀行が国債をどんどん買い始めました。日本銀行の保有する国債残高は2018年1月現在410兆円です。従って家計の残り251兆円と日本銀行が引き受けた410兆円を合計した661兆円の購入力があります。2018年度予算のうち、新たな国債発行は33.7兆円ですから、この数字が続くとすると661兆円÷33.7兆円=19年後に国債の引き受け手が無くなります。

家計以外の要素

それでは、今後19年間は今まで通り、国債の引き受け手がいて、日本人は安心して暮らしていけるのでしょうか。この問題については、様々な要素を考えなければなりません。次に挙げた要素の頭についている+の印は破綻が近付き、ーの印は破綻が遠くなる意味です。

+①国債残高増加

国債の発行額が、上記の計算では33.7兆円としましたが、日本の景気が良くなって、税収が増えれば33.7兆円も新規の国債発行をする必要はありません。逆に景気が冷え込んで税収が減れば、新しく発行する国債の額を増やさなければなりません。また、数年後に団塊の世代が後期高齢者年齢に達して、急速に社会保障費が増加するので、国債の増加要因になります。一方で、消費税などの増税をどう実現するかという問題もあります。

+②ヘッジファンドによる仕掛け

19年を待たずとも、その数年前には、ヘッジファンドが円売り、日本株売りを仕掛けて、大儲けをたくらむことは容易に想像されます。その場合、円安も一気に進みますので、インフレが急加速することが考えられます。それを抑えるために金利を上げれば、債券安となります。株安、円安、債券安のトリプル安に追い込まれる恐れがあります。

+③家計の資産が海外に逃避

既に、日本銀行及び財務省を退官した人たちは、日本円に見切りをつけて、退職金を外貨などに換えていると著名な経済評論家が言っています。その人自身も、自分の資産の半分以上を、外貨と金に変換済みだと言っています。私の知り合いも、日本銀行に勤めていた友人が、真剣にそうすることを考え始めたと言っていました。資産の海外逃避は、財政破綻の恐れがある国では、必ず起こる現象です。最近ではギリシャでも起こりました。

+④大地震(財政出動と建設需要などによるインフレ)

首都圏直下型、南海地震、東南海地震などの大地震が起きた場合、財政出動と建設需要などによるインフレが想定されます。地震の規模、被害額によっては、日本の財政状態は一気に悪化することが考えられます。また、ひどいインフレになった場合には、国債残高増加だけでなく、個人の銀行預金の実質価値が大きく減少することになります。

-⑤緩やかなインフレ(政府・日銀が目指している)

大地震による急激なインフレにならなくとも、現在の政府・日本銀行が目指している2%以上のインフレが実現して、金融緩和を止めることになった場合は、金利が高くなります。国債残高は既に1100兆円になっていますから、金利が1%高くなると、利払いだけで11兆円、金利が2%高で22兆円にもなります。消費税を1%上げると税収は2兆円増えると言われていますから、22兆円の増税を実現するには11%の消費税増税が必要です。現在の8%に11%を加えますから19%の消費税ということになります。具体的に数字で考えると、大変なことになるのが分かります。

-⑥経済成長

経済成長が進めば、歳入が増加しますから、国債発行額を減少させることが可能です。

-⑦本格的財政再建

税金を増やして、歳出を減らせば財政再建は進むかもしれませんが、そのことで景気が減速すれば、税収が減る恐れもあります。

±⑧日米金利差拡大

日米金利差が拡大すれば、当面は円安になって景気が良くなり、税収も増える可能性があります。その間にどれだけ痛みの伴う改革を実施できるかが問題です。

このように様々な要素により変動はしますが、恐らく2030年前後に日本は非常に危険な状況に陥っているのではないかと思われます。