内視鏡検査、バリウム検査、ピロリ菌

胃カメラは、口からにしても鼻からにしても負担です。胃がんは、ピロリ菌を除去すればリスクが減りますが、特に除去後はリスクは残ります。できるだけ負担を減らすためには、それぞれの検査法の特徴を良く知る必要があります。

AIに聞いてみました。


胃部X線検査(バリウム検査)が「意味がない」といわれることがあるのは、主に胃カメラ検査(内視鏡検査)と比較した場合、精度や発見できる病変の種類に違いがあるためです。ただし、X線検査にもメリットがあり、どちらを選ぶかは状況によって異なります。

X線検査のデメリット(意味がないといわれる理由)

  • 早期がんの発見が難しい: 胃の粘膜表面にできる平坦な病変や、色調の変化を伴うような微細な初期のがんは、X線検査では見逃される可能性があります。
  • 精密検査が必要になる可能性: X線検査で異常が見つかっても、それが良性か悪性かを判断するためには、結局は胃カメラによる精密検査が必要になります。
  • 放射線被ばく: X線を使用するため、わずかではありますが放射線被ばくのリスクがあります。
  • 確定診断はできない: 病変の有無は確認できますが、組織を採取して詳しく調べる「生検」ができないため、確定診断には至りません。
  • 苦痛を伴う場合がある: バリウムを飲むことや、検査後の下剤服用が負担になることがあります。バリウムが体外に排出されないと腸閉塞のリスクもあります。

X線検査のメリット(意味がないわけではない理由)

  • 全体像を把握できる: 胃全体の形や、ひだ、大きな凹凸などを広範囲にわたって観察できるため、胃の全体像を把握するのに適しています。
  • 胃カメラ検査ができない人への代替策: 持病などで胃カメラ検査が受けられない人にとっては、有効な検査手段となります。
  • 費用が比較的安価: 一般的に、胃カメラ検査よりも費用が安く抑えられます。
  • 死亡率を減らす効果: 精度は劣るものの、定期的な検診でバリウム検査を行うことで、胃がんによる死亡率を減少させる効果があることが認められています。

どちらの検査を選ぶべきか

胃部X線検査か胃カメラ検査のどちらを選ぶかは、個人のリスクや状況によって判断が異なります。
  胃カメラ検査(内視鏡検査) 胃部X線検査(バリウム検査)
精度 高精度。小さな病変や粘膜の色調変化も確認できる。 胃カメラに劣る。大きな凹凸のある病変の発見に適している。
発見できるがん 早期のがん発見に向いている。 ある程度の大きさ、形の変化があるがん。
費用 比較的高い。 比較的安い。
確定診断 検査中に疑わしい部分の組織を採取し、確定診断ができる。 確定診断はできず、精密検査が必要になる。
苦痛 嘔吐反射などを伴う場合があるが、鎮静剤で軽減できる。 バリウムを飲むことや下剤による負担。
対象者 胃がんのリスクが高い方(ピロリ菌除菌後など)、自覚症状がある方。 健康診断などで広く行われ、全体的なチェックに適している。
早期がんの発見を重視するなら胃カメラ検査が優れていますが、会社の健康診断などで手軽に胃全体の異常を調べる目的であれば、胃部X線検査も有用です。

ピロリ菌除去後も胃がんリスクはゼロにはなりませんが、1/3程度に低下します。除去までに蓄積したダメージが胃粘膜に残り、特に萎縮性胃炎が強い場合、がんが発生しやすい状態は続くため、年に1回程度の定期的な胃カメラ検査が推奨されます。高リスクな場合は専門医による検査が重要です。

除菌後の胃がんリスクが残る理由

  • 胃粘膜へのダメージの蓄積:長期間のピロリ菌感染により、胃の粘膜が萎縮し、正常な状態に戻るのに時間がかかるためです。
  • 除菌前にすでに存在していたがん:除菌の成功が、それまでに存在していた微細ながんを消滅させるわけではありません。
  • 萎縮性胃炎:ピロリ菌が胃の粘膜を薄くする「萎縮性胃炎」の状態が残るため、がんの発生リスクが高い状態が継続します。

推奨される対応

  • 定期的な胃カメラ検査:リスクを軽減しても完全にゼロにはならないため、年に1回程度は、拡大機能のある最新鋭の内視鏡システムを用いた胃カメラ検査を受けることが重要です。
  • 高リスク群の特定と専門医による検査:高齢で除菌治療を受けた方や、内視鏡治療(ESD)後に除菌した方など、胃粘膜ダメージが大きい場合は、特に画像強調システムや拡大機能を備えた内視鏡で経験豊富な専門医が検査を受けることが推奨されます。
  • 早期発見・早期治療:除菌後も症状が出なくても、定期的な検査でがんを早期に発見し、負担の少ない治療(内視鏡治療など)を受けることが大切です。

「ピロリ菌を除菌したから大丈夫」と安心せず、適切な検査とフォローアップを継続することが、胃がんの予防と早期発見のために不可欠です。


ピロリ菌の除菌に関して

ピロリ菌の除菌は、胃酸の分泌を抑える薬と、2種類の抗生物質、計3種類の薬が使われます。3種類の薬を一週間服用することで、約8割の人が除菌に成功するといわれます。

除菌後5年の状態

ピロリ菌の除菌治療を受け、5年が経過すると胃はどのような状態になっているのでしょうか。

前提として、ピロリ菌の除菌に成功しても、胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。胃がんの成長速度を考えると、除菌後5年というタイミングは、除菌時にすでに潜在していたがんや見逃されてしまったがんが大きくなり、発見されやすいときです。

そのため、除菌後5年までは毎年内視鏡検査を受け、胃の状態をチェックしてもらうことをおすすめします。


ピロリ菌のおはなし 第2回「除菌後胃がん」

ピロリ菌に感染すると胃酸を分泌する細胞などが破壊され胃の粘膜が薄くなる「萎縮」が起ります。萎縮は胃の出口側である幽門前庭部より始まり、ピロリ菌感染を放置すれば胃全体に広がっていきます(図1)。萎縮が胃の入り口である噴門に及ばない状態を「closed typeの萎縮」、噴門を超えた状態を「open typeの萎縮」と呼び、萎縮が高度になるほど胃がんのリスクが高まります。また、萎縮が高度になると、胃の粘膜に腸の粘膜を作る細胞があらわれる「腸上皮化生」が生じます(図2)。これは遺伝子レベルの異常により、胃の細胞が消化管のいろいろな細胞を作る能力をもつ幹細胞に一度リセットされ、その後に腸の細胞になれる異常な能力を持つとともに、容易にがん化しやすい性質を獲得します。

発見された胃がんの平均年齢は76.3歳ですべて60歳以上でした。特に70代が多く、男性が女性の2倍以上でした。発見された胃がんのうち、除菌したにもかかわらず胃がんが見つかった「除菌後胃がん」が17例あり、「ピロリ菌未感染の胃がん」も3例ありました。

除菌後胃がんの除菌成功後から胃がん発見までの期間と萎縮の程度との関係をみると、76%が10年以内に発見されており、特に5年以内が40%と多く、全例open typeの萎縮でした。また除菌後10年を超える症例も4例あり、3例は80代以上でした。

除菌をすれば胃がんのリスクは低下しますが決してゼロになるわけではありません。特に除菌時すでに高度の萎縮と診断された場合は、少なくとも5年間は内視鏡胃がん検診を続けることが望ましく、また高齢であること自体発がんのリスクが高いためピロリ菌除菌後も定期的な胃がん検診を続けることが望ましいと考えられます