今年のドル円は115円でスタートし、10月には150円台になりました。これほど急激な変動は、あまり経験がありません。
来年はどうなるのでしょうか。日経CNBCの2022年12月18日の放送を基に勉強しましょう。
為替相場の3大分析方法:確立された明確な分析方法がありません。
1. 購買力平価(PPP)
各国の物価水準を比較して、インフレ率格差で決まります。
2. フロー分析(貿易収支、経常収支)
貿易収支は、モノとお金の交換で不可逆。投資はお金とお金の交換ですが、貿易はモノとお金の交換、サービス収支はサービスとお金の交換。2022年は資源高なので、どうしても日本から払うお金が多くなります。
3. アセットアプローチ
投資収益の高い国に資金は流れます。金利や株価収益率が高い国、つまり投資して儲かりそうな国に資金は行くという考え方で、現代はこの資金の流れが圧倒的です。
購買力平価
海外のインフレ率の方が高いので、円高方向に向かいます。現在は圧倒的に円安が過ぎるじょうたいです。したがって、今後、円高になるかもしれません。
貿易収支
今年は20兆円くらいの赤字でしたが、足元で資源価格が落ち着いてきているので、少し赤字が減るという見方が多いのです。しかし、人によっては、長期の契約部分があると貿易収支は悪化する可能性もあるとみる人もいます。そうなると、来年も大きな赤字が続くかもしれず、円安継続、円安拡大の可能性もあります。
購購買力平価と貿易収支は逆の動きになる。
アセットアプローチ
次の要素を考えると、2023年のどこかのタイミングで円高が止まるかもしれない。
- インフレの要因:いずれも落ち着きつつある
- サプライチェーン:解消しつつある
- 不動産価格の上昇:CPIの統計上にはまだ表面化していないが、不動産価格の上昇は止まっている
- 賃金:最近ではユニット・レイバー・コストが2.4%まで下がってきているので、賃金も時間の問題と考える投資家が増えている。長期金利が上がらなくなってきているとみている。
目先はドル安円高だが、総合的にはドル高円安になりそう。
130-150円
125-155円
と見ている。
超長期的視点で見る円の評価
一方で、長期の傾向をGDPで見ます。GDPに大きく寄与するのが人口です。超長期で見ても円高にはいかないようです。
順位2022年 2050年 2075年
1 米国 中国 中国
2 中国 米国 インド
3 日本 インド 米国
4 ドイツ インドネシア インドネシア
5 インド ドイツ ナイジェリア
6 英国 日本 パキスタン
7 フランス 英国 エジプト
8 カナダ ブラジル ブラジル
9 ロシア フランス ドイツ
10 イタリア ロシア 英国
11 ブラジル メキシコ メキシコ
12 韓国 エジプト 日本
13 オーストラリア サウジアラビア ロシア
14 メキシコ カナダ フィリピン
15 スペイン ナイジェリア フランス
購買力平価(こうばいりょくへいか)
モノやサービスの値段を基準にした為替レートのこと。ある商品の価格がひとつに決まる「一物一価」を前提に、多様な商品・サービス購入時の各国・地域通貨の価値を比較して算定します。1商品だけで購買力平価を考える指数では、各国のマクドナルドのビッグマック1個の値段から為替レートを算定する「ビッグマック指数」が有名です。世界銀行が主導する「国際比較プログラム」は通貨の購買力平価を算定し、各国の国内総生産(GDP)の比較を試みています。
貿易収支(ぼうえきしゅうし)
一定期間における一国の輸出と輸入の差額を示す経済指標。輸出額が輸入額を上回れば貿易黒字、下回れば貿易赤字となります。国際収支統計の中の経常収支の一項目で、国際通貨基金(IMF)が定めた国際収支マニュアルに従って作成するため、国際比較が可能です。
経常収支(けいじょうしゅうし)
一定期間における一国の海外とのモノやサービスの取引、投資収益のやりとりなど経済取引で生じた収支を示す経済指標。国際収支統計の中の一項目で、国際通貨基金(IMF)が定めた国際収支マニュアルに従って作成するため、国際比較が可能です。
経常収支の内訳には、自動車などモノの輸出から輸入を差し引いた貿易収支、旅行や特許使用料などを対象とする「サービス収支」、配当・利子のやりとりを示す「第一次所得収支」、対価を伴わない無償資金援助などの「第二次所得収支」があります。過去最大の経常黒字は2007年の24兆9341億円。
アセット・アプローチ
アセット・アプローチとは、為替相場決定理論の1つで、国際的に統合された資産市場における各国の通貨建てで表示された資産ストックに対する需給関係から、為替相場が決定されるとする考え方です。これは、近年における各国の金融自由化、資本規制緩和に伴い、国家間の資本移動が急増し、この結果、為替取引の大部分は、実需取引ではなく、資本取引から派生していることに依っています。アセット・アプローチには、伸縮価格マネタリー・モデル、硬直価格マネタリー・モデル、ポートフォリオ・バランス・モデルなどがあります。