日銀、長期金利の変動幅を拡大「プラスマイナス0・5%」にと発表しましたが、これは事実上の利上げの始まりです。
赤字国債発行は万死に値する
元首相の大平正芳氏は、蔵相(現財務相)時代の1975年に赤字国債の発行に追い込まれたが、元々は、「借金漬けの国家に未来はない。」という強い信念を持っていました。第1次石油ショックのあおりで、日本経済は74年に戦後初めてのマイナス成長に陥いりました。税収の落ち込みで歳入不足が生じ、どうやりくりしても赤字国債の発行は避けられなくなっていたのです。
しかし、実際に発効することとなると、「赤字国債発行は万死に値する」と言ったそうです。
その後、赤字国債が当たり前のようになり、小渕恵三内閣、安倍晋三内閣では赤字がどんどん膨らみ、特に最近の3年間は、タガが外れて借金はうなぎのぼりです。その状態を陰で支えていたのが、日本銀行の財政ファイナンスでした。
一周先行している赤字国債
この10年間、黒田日銀総裁は、安倍元首相と一緒になって国の借金をドンドン膨らませてしまいました。他の欧米諸国の例でも分かるように、多少の借金は許されるものの、日本は一周先行して借金を積み重ねています。借金に関しては周回遅れの反対です。
異次元緩和の終焉
黒田東彦日本銀行総裁の退任と共に、異次元緩和措置が終わりを告げ、膨大な国債の問題点があらわになる時代を迎えることになるでしょう。
次期総裁へのバトンタッチ
黒田総裁は、日銀総裁の任期を4か月後に控えて、次の総裁の自由度を増やすために、金融緩和策を一部終了させると思っていましたが、今回の措置は、やはり、という感じです。この程度の金融引き締め修正なら、黒田総裁のメンツをつぶさずに済みつつも、次の日銀総裁のサポートになると思ってもらえるからでしょう。
大変なのは日本の国民
しかし、今までの数十年、特にアベノミクス以降、最近の10年間に増やし続けた国の借金は、あまりに大きすぎます。次の日銀総裁は大変だという意見もありますが、大変なのは日本の国民です。
外貨資産の重要性
今後どのような変化が起こるかは分かりませんが、今、私たち国民にできることは、できるだけ金融資産を外貨で持つことです。具体的には、外国株式ETFや外国株式の低コストインデックスファンドです。
ところで、識者たちは、今回の動きをどう見ているのでしょうか。
◆豊島逸夫
日銀テーパリング、NY市場の反応は冷ややか
今週のNY市場はクリスマスモードで市場参加者も少ない。従って日銀の緩和縮小の報道が伝わっても、特にポジションを立てるモチベーションは希薄だ。日銀はNY市場のドル円売買が極めて薄い時期を狙ったと解釈されている。今週は東京市場の動きを見守り、逆に東京市場が休暇モードに入る来週以降にNY市場で本格的な反応が見られよう。
0.75%刻みの利上げを4回連続して強力な引き締めに動いているFRBに比し、日銀は「長期金利の変動幅をプラスマイナス0.25%程度から0.5%程度に拡大」、「マイナス金利は維持」との緩和縮小に留まる。引き続き周回遅れ感は否めず、これ以上の「変動幅の拡大」も考え難い。改めて日銀の政策選択肢が限定的であることが露わになった。円相場も150円超から130円台前半まで円高に振れた後のことゆえ、今回の初期反応が一巡後は円売りの材料にされかねない。
◆元参議院議員 藤巻 健史
ついに日銀が白旗を上げた
日銀、ついに白旗を上げ始めたか、が私の感想。いよいよ詰みの秒読み段階。今朝に、日銀の国債保有額が50%超えとのニュースが出た。昨日には、指値オペで10年発行国債の過半数を当日買いのニュース。今のまま0.25%の指値オペを続ければ、日銀の国債保有額はますます増え続け、入札当日買いの購入をさらに増やさなぅてはならなくなる。それでは、世界中に「日銀は財政ファイナンス実行中」の宣伝をしているようなもの。外国人主導の日本売りが発生してしまう。そうである以上、これ以上0.25%の指値オペの継続は不可能だ。それが本日の政策変更の理由。しかし、この0.5%は日銀の債務超過ぎりぎりの線。(今までは単に保有国債の評価損発生でまだ純資産)。もう日銀は何もできない。で、日銀が出来る金融引締め策は全て出し終わった。濡れぞうきんを絞り切った状態。徳俵の上に2本足でどうにか立っていたがついに片足1本まで追い込まれた。円の紙くず化は非常に近いと思う。
◆野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英
日銀の金融緩和姿勢が悪い円安を助長しているとの外部からの批判を受け入れたかのようなYCC(イールドカーブ・コントロール政策)修正を決めたのは非常に驚きだったが、足元では円安が一巡して批判が沈静化してきたこのタイミングだからこそ、YCCの修正を行っても日銀が外部からの圧力に屈したとの印象を回避できると考えたのではないか。
今回の措置は、YCC修正に強く反対してきた黒田総裁が新体制に一定程度の配慮を示し、政策移行を多少なりともスムーズにするために柔軟化姿勢に転じたことを意味すると思われる。この点から、新総裁下での政策の柔軟化を先取りしたものと解釈できるのではないか。
といっても、すぐに金融政策が大きく修正され、正常化策が講じられるわけではない。その前には、2%の物価安定目標の位置づけを中長期の目標へと修正すること、総括検証のようなものを実施すること、の2つの段取りが必要となる。
来年には景気情勢が悪化し、円高リスクが高まることから、新体制下でも日銀は正常化策の実施に慎重となるだろう。総括検証を経てマイナス金利解除などの正常化策が実施されるのは、2024年半ば以降とみておきたい。