昇給と貯蓄増額
今年も春闘の季節が始まりました。6月になると4月分まで遡って昇給するのが例年のパターンです。その時に、少しずつ天引きの貯蓄を仕組めるかどうかが重要です。今は投信積立を利用する時代ですが、40年前は財形貯蓄で蓄財する時代でした。
アメリカの昇給事情
アメリカでも昇給に合わせて貯蓄するのが、老後に困らない秘訣のようです。アメリカでも、老後に困らないための記事が多いのは日本と同じ状況です。2020年1月24日のニューヨークタイムス紙の記事をもとに、アメリカの貯蓄事情を参考にしましょう。
昇給した?貯蓄も増やすときだよ!
新しい分析によると、昇給したときに貯蓄割合を増やさない人は、リタイヤ後につらい目に遭います。
昇給してもらうことは良いことですよね。昇給するたびに支出を増やすことをしなければ結構なことです。準備しない結果として、リタイヤに必要なお金が不足することもあり得ます。
投資調査会社モーニングスターの新たな分析によると、昇給になっても、奇妙なことに「快適なリタイヤ―をかえって難しくしてしまうこともあり得る」とのことです。
問題の主たる原因は、ライフスタイルの「忍び寄り」です。給料が増えると裕福になった気がするので、高級車や大きな家を買える力がついたと感じるものだ、とモーニングスターの行動科学部長スティーブ・ウェンデルは言います。
もし年収が10万ドルから12万ドルに増え、収入の10パーセントを貯蓄し続ければ、絶対額で更に2千ドル蓄えることになります。でもリタイヤ―後にもっと豪華なライフスタイルを続けたいのなら、よりたくさん貯める必要があります。しかし多くの人はそうしない、というのが調査結果です。
モーニングスターは、たくさんのリタイヤプラン・データを分析して、昇給のあった人となかった人の貯蓄率の平均的変化を比べました。二つのグループに差はほとんどないことが分かりました。給与が増えたかどうかにかかわらず、パーセントでみると貯蓄率は同じ傾向でした。
「昇給しても貯蓄に回さない。」とウェンデル氏は言いました。
そのレポートによると、社会保障費などリタイヤ後の収入源は比較的変動しませんでした。(社会保障費は給与とともに増加しましたが、一定程度まででした。)そこで、ぜいたくな暮らしをしている人ほど、たくさん貯める必要があります。特に年齢が高いほど、リタイヤまでに追いつく時間が少ないのですから、たとえ真面目に貯蓄してきたとしても、もっとたくさん貯める必要があるのです。
どのくらいたくさん貯蓄すればよいのでしょうか?モーニングスターは大まかな原則を勧めます。昇給があるたびに、リタイヤまでの年数の2倍のパーセントを支出に回し、残りを貯蓄するのです。つまり、リタイヤまで10年なら、昇給の20パーセントを心置きなく使えるということです。
若い人は、投資を増やす時間がもっとたくさんあるので、昇給のうちもっとたくさんを使っても大丈夫です。このルールによれば、リタイヤまで30年ある人は、昇給の60%を使うことができます。
(このアドバイスを完成させるために、モーニングスターは職場の退職給与制度に参加している1619家庭を調査した、FRBの2016年消費者資金調査のデータを分析しました。昇給によってより高い生活水準をすることになりますが、理論上5%昇給すると、それに合わせてどれ程貯蓄をする必要があるかを、この分析の中で計算したのです。)
このルールは、どれほど貯蓄するべきかに焦点を当てるのではなく、どれほどたくさん支出できるかに焦点を当てているので、貧しさを感じなくて済む、とウェンデル氏は言います。
支出した時に良心の呵責を軽減するため、あらかじめ昇給の一定割合を貯蓄することが、このルールで可能になります。「将来たくさん貯蓄するよりはつらく感じない。」と彼は言います。
行動経済学研究を利用して、退職給与制度の中で給与からの拠出を毎年自動的に増加させるようにしている経営者がたくさんいます。それを「自動増額」と呼ぶことがあります。しかし、昇給の一定金額を自動的に貯蓄する方法を選ぶことはあまり一般的ではないと、モーニングスターは言います。アメリカ年金制度提供者協議会という業界団体は、企業がそのような仕組みを提供しているかどうかを調査していないと言います。
大まかな方法は、貯蓄する人が複雑な計算を単純化するのに役立つものの、リタイヤ後の資金分析をきめ細かくするには、プロフェッショナルのアドバイスが役に立つかもしれない、とウェンデル氏は言います。
リタイヤのための疑問と答えをいくつか紹介します。
昇給の一部を貯蓄することができそうもなかったとしたらどうするか?
理想的ではないが、他のアドバイスが役立つ可能性がある、とモーニングスターは考えます。昇給のパーセント割合の「年齢分を貯蓄する」も有ります。もし30歳であれば、昇給の30パーセント、50歳なら半分を貯蓄する。
別の方法としては、昇給額の少なくとも33%を貯蓄するのです。もし手取り額が1000ドル増えたら、少なくとも333ドルを貯蓄した方がよいのです。
しかし、この2つの別法は20代、30代、40代にはうまくいくのですが、年齢が増えるとともに効果的でなくなります。「リタイヤまでの年数の2倍を使う」というルールは、たいていは最も多くのお金を貯蓄することになるので、すべての年代でうまくいくと、レポートは言います。それでもまだ、金銭面で行動に移すのが難しい人たちもいるかも知れません。
職場に退職給与制度が導入されていなかったらどうする?
もし個人の退職勘定を持っていればうまくいくけど、自分自身で注意深くなる必要があるかもしれません。理想的には、もしIRA(個人退職積立勘定)で貯蓄をしていたら、給与振込口座からIRAに必ず振り替える(あるいは給与を分割振込にする)ようにするべきです。それは、お金を使う誘惑に負けないように、給与振り込み時に合わせることです。
「もし給料支払日が15日なら、17日に振り替えるようにセットしておくのです。」と, マサチューセッツ州フレーミングハムのファイナンシャル・プランナーであるシェリル・A・コスタは言います。
従って、昇給があったときには、振り替える金額も増やすのです。
取り入れるべき考え方は同じだとウェンデル言います。「昇給の一部を必ず貯蓄する」ということです。
お金はギリギリ、昇給は必ずあるわけでない。何ができるのか?
まあまあ満足のいく程度に貯蓄することです。そして、もし少額から始めなくてはならなくても気にしないことです、とAARP公共政策協会の経済・消費者保障担当副会長のゲーリー・コウニングは言います。この協会は高齢アメリカ人に関する問題に焦点を当てています。
給与の10%から15%をためるというような、よく耳にするアドバイスを聞いてがっかりする人もいますが、彼らはやってみようとも思いません、と彼は言います。でも、退職貯蓄の大きな障害は、始めることです。退職金制度に参加すること、IRA口座を開くこと、給料の1%を蓄えることによって動き出すことができるのですし、そこから構築できるのです。
「それは大きな一歩だ」とコウエンは言います。
ボーナス、所得税還付、職場の柔軟性のある消費勘定からの償還金のような余計な現金があったら、リタイヤ用にするのです、とフィーオンリーのファイナンシャル・プランナー・グループである、全国個人ファイナンシャル・アドバイザー・協会は助言します。
「思いがけないお金を手にしたら、一定のパーセントを貯蓄にまわす、という方針にするのです」と、アラスカ州バーミンガムのファイナンシャル・プランナーであるタイラー・リーブズは言います。
パートタイムの仕事は貯蓄のための追加の現金を生み出す役に立つかもしれないと、コスタ女史は言います。新たなギグ・エコノミー(インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方)は柔軟性を提供すると彼女は言います。週末に犬の散歩を数時間するなど仕事をオンライン・サービス経由で契約することも可能ですが、それはメインの仕事と相反することはなさそうです。
もし自制心があるなら、フィデリティやシュワブなどのキャッシュバック・クレディット・カードを検討することです。これは、支出に対する一定のパーセントを自動的に、関連する退職勘定に拠出するのです。でも、毎月カード残高全額を完済しないといけません。そうでないとカードで支払うことになる利子で貯蓄が破滅してしまうのです。
そして、無理のない範囲内で、自分に報酬を与えるのです。貯蓄目標を達成したら、素晴らしいレストランでディナーを食べるなど、少し褒美を自分にあげるのです。
「そういう時には人生を楽しむためのお金を分け与えるのです。」と彼は言います。