個別株式、株式ファンド、銀行預金のリスク

リスクの大きさ

株式はリスクが大きく、銀行預金はリスクが小さいと思っている人が多いのですが、本当にそうでしょうか。

リスクとリターン

リスクと一緒に考えるのがリターンです。そしてリスクとリターンは比例する関係にあります。リスクが大きいのにリターンが小さければ、投資家はそのような商品に投資しませんから、消滅してしまいます。リスクが大きければ、リターンも大きい商品に投資をするわけです。

銀行預金

一方、銀行預金は、株式投資とは異なり、銀行が責任を持って利息と元本の支払を保証しています。銀行は預金者から預った預金を、企業に貸し出したりして運用をして、収益を上げることを目指します。預金者には、利率どおりの利息を支払う代わりに、当初約束した利率以上に収益が上がったときでも、その超過分は支払いません。逆に、運用がうまくいかずに約束した利率どおりの利息を支払うのが難しいときでも利息の支払を保証しています。

銀行預金と株式投資のリスク・リターン

このように、銀行預金はリスクも小さい代わりに、リターンも小さく、「ローリスク・ローリターン」です。一方、株式投資は値動きの幅が大きくなりがちで、リスクも大きい代わりに大きなリターンも期待できる「ハイリスク・ハイリターン」です。

今もハイリスク・ハイリターンか?

このような説明が一般的です。しかし、現在でもこの説明が正しいのでしょうか。代表的な投資対象である、

① 個別株式

② ETF

③ 銀行預金

について考えてみましょう。

① 個別株式

倒産、自主廃業、上場廃止などによって株式の価値が大きく損なわれることがあります。現に連れ合いの勤めていた会社は、倒産し株式価値がゼロになりました。私の父親は山一証券の株式を保有していましたが、これも紙切れになりました。これらの例からもわかるように個別株式のリスクは大きいのです。もし個別株式を保有するなら様々な業種の数十銘柄に分散して保有することが望まれます。購入後も、リバランス、売却の意思決定など普通の人には難しい投資対象であるので、結局年々リスクは高まっていく可能性があります。しかし株式ですからリターンも比較的大きいと言えます。なお、私も連れ合いも現在個別株式は保有していません。

② ETF

1306(TOPIX連動型上場投資信託のETF)やSPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)を代表とするようなETFは、業種、銘柄、地域の分散が可能です。しかも、低コストなため、リターンは株式を十分に分散した場合と同レベルです。株式取引市場が発達する以前は、少数の投資対象しかなく、その情報に関しても透明性が低い時代がありました。その頃のリスクは本当に大きかったと言えますが、現在のETFは分散性、透明性において以前とは全く異なります。100年に一度と言われたリーマンショックでさえも数年で回復することができました。ETFに関するリスクは、1年単位のリスクなので、10年、20年という長期で見たリスクはもっと低くなります。代表的な株式ETFの場合、ハイリスク・ハイリターンではなく、ミドルリスク・ハイリターンだと考えます。

③ 銀行預金

銀行預金は一行当たり1000万円まで元本が保証されます。しかし、インフレへの対応はできません。経済評論家によっては、インフレが始まってから、外貨、不動産、日本株式などに逃避させればよい、という考えの人もいます。しかし、銀行預金しか持ったことのない人が、急に始まったインフレに対応して適切な対応ができるのでしょうか。銀行の窓口で相談して、新興国の外貨預金や、複雑な外貨保険などを買ってしまうのではないでしょうか。あるいはそれ以前に日本政府が、キャピタル・フライト(資本逃避)を避けるために、外貨との交換を制限する可能性もあります。銀行預金しか持っていないことは、大きなリスクかも知れません。