新NISAが1月から始まり、3か月が過ぎたところで、少し落ち着いて分析したいと思います。
ニッセイ基礎研究所の2024年04月11日の記事です。
新NISAからの買付にやや息切れ感も~2024年3月の投信動向~
大規模な資金流入が続いているが
インデックス型の外国株式ファンド買いに息切れ感
そもそも2月は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が1月に売れ過ぎた反動によるところが大きかった。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」には2月も2,300億円の大規模な資金流入があったが、1月の3,400億円だったため1,100億円も減少した。このように2月はこの1本の減少額が一般販売されているインデックス型の外国株式ファンド全体の減少額800億円を上回っていた。3月も「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」には1,900億円の資金流入と2月からさらに減少したが、減少額は300億円程度とかなり落ち着いてきている。
背景には成長投資枠からの買付の減少か
成長投資枠は積立投資枠と異なり使い方が自由であり、既に1月、2月に年間240万円の枠を使い切ってしまった人もいると思われる。3月のインデックス型の外国株式ファンドへの資金流入がやや息切れしてきた背景にはそういったこともありそうである。実は昨2023年11月以降、インデックス型の外国株式ファンドの売却(【図表2】赤棒グラフ)も急増している。実際に2023年11月、12月の2カ月間で売却額が6,000億円近くあった。新NISAが始まる前に一旦、売却しておいて1月、2月に成長投資枠で一気に課税口座から新NISA口座に買い替えた人が意外と多かったかもしれない。
いずれにしても一般販売されているインデックス型の外国株式ファンドには3月でも流入額が7,100億円あった。2023年以前だと最大でも2023年10月の4,000億円であったことを踏まえると、2023年以前と比べると非常に売れている状況となっている。今後も当面は流入減少が続くかもしれないが、いつ頃そしてどれくらいの金額で落ち着くのか新NISAの利用状況と合わせて注目される。
新NISAが為替に及ぼす影響を、ロイターの2024年4月16日の記事で見ます。
<貿易・サービス収支の赤字>
日米金利差とは無関係に片道切符でドル買い・円売り注文を出すプレイヤーの存在感が、近年増している。このところ、日本の貿易赤字は既往の原油価格下落の影響で縮小しているが、決済通貨別に分けてみると、ドル決済の赤字が年間22兆円程度なのに対して円決済の黒字は同10兆円前後で推移しており、モノの輸出入決済の現場では月間1兆円程度のドル不足が生じている。
サービス収支の内訳をみても、コロナ騒動収束後の訪日外国人消費の復活を受けて旅行収支の黒字は拡大中だが、それを相殺する「デジタル赤字」の拡大や恒常的な輸送収支の赤字により、全体の収支尻は赤字基調が定着している。
このうち、日本の旅行収支黒字の大半はアジア向けであり、対米収支はインバウンドとアウトバウンドが拮抗する状態なので、ドル/円の価格形成に及ぼす影響は概ね無視できそうだ。
他方、日本の企業や個人のデジタル・インフラ利用料の支払先は米国企業であるケースが多いほか、輸送収支の赤字も海上運輸の用船料を中心にドル決済が主流であるため、モノの貿易収支だけでなく、サービス収支の決済でも見かけ以上のドル買い超過になっている可能性が高い。
日本の金融収支に目を移しても、近年進んだ円安の結果、国内外の物価や人件費の格差が大きく開いて「安いニッポン」が話題なっているにもかかわらず、人口減を背景にした国内市場の収縮懸念や構造的な人手不足がネックになり、本邦企業の対外直接投資が、海外企業による対内投資を上回る流出超過が定着している。
<直接投資と新NISAの影響>
コロナ騒動が収束して世界経済の不透明感が晴れたことを受けて、過去1年間の日本の直接投資収支による資金流出超額は過去最高記録を更新しており、ステルス性の高い円売り・外貨買いの発生源になると同時に、本邦企業の海外利益の国内回帰を抑制し、構造的な円安圧力を生んでいるとみられる。
国境をまたいで取引されている証券投資に視線を移しても、自己責任による老後資金の積み立て文化が根付き始めた近年の日本では、若い働き手世代の間で実質金利がマイナス圏に水没している円金利100%の金融商品の人気は低く、相対的に成長期待の高い外国の株式を中軸に据えた国際分散型の商品が売れ筋となっている。
財務省が毎月公表している統計で確認すると、少額投資非課税制度(NISA)の枠が広がった今年1-3月期には投資信託を通じた海外への純資金流出金額が過去4年間の平均3800億円の3倍増、月間1兆1400億円ペースに加速したことが分かっている。日本の個人が安定的な「為替ヘッジ無し」の外貨購入の担い手としての存在感を強めており、無視できない需給インパクトを為替レートに及ぼす時代が到来している。
上記諸々のデータが示唆する日本の国際収支の構造変化をみるにつけ、いわゆる「成熟した債権国」への移行が進む近年の日本では、金利差の影響を受けない為替オープンのフローが形成する「根っこの需給」は、ほぼ恒常的な円売り超過に傾いている可能性が高い。
為替相場の短期の振れや中期の循環は内外金利差の変化に応じて機動的に売買の態度を変える投機筋や投資家の動きに左右されるものの、国内外の金利差の変化と関係なく一方向に流れる円売り・外貨買いのフローは、日米金利差の縮小局面でドル/円相場の下値を支える一方、金利差の拡大局面ではドル/円の上値探査を助長している可能性が高い。