ファンド(投資信託)はアクティブかインデックス(パッシブ)か

ファンド(投資信託)を買う時に大きな分岐点になるのが、アクティブかインデックス(パッシブ)という問題です。それぞれの定義は以下の通りです。

アクティブファンド

それぞれの運用方針に従い銘柄を選定し、市場平均以上の利益を追求したり、市場平均以下にリスクを抑制したりする運用を行う投資信託のこと。

インデックスファンド

対象ベンチマークの指数に連動する投資成果を目指して運用(パッシブ運用)する投資信託のこと。対象ベンチマークには日経平均株価(日本)、TOPIX(日本)、NYダウ(米国)、S&P500(米国)のような株価指数など様々な資産の指数(インデックス)がある。

インデックスファンドは、基本的には対象ベンチマークの構成比に合わせて個別銘柄を組み入れ、運用を行う。そのため、ファンドマネジャーが銘柄選択や個別銘柄の売買を積極的に行うアクティブファンドに比べ、運用コストは低い。

以上がそれぞれのファンドの説明ですが、このように抽象的に言われてもよく分かりません。

日経のデジタル版で、純資産総額の上位10銘柄を見てみましょう。分かり易く言うと、購入時手数料がゼロの銘柄がインデックスファンド、それ以外のものがアクティブファンドです。信託報酬も2桁違います。

日本ではインデックスファンドが発売されてから、まだ10年しかたっていませんが、上位5銘柄のうち、4銘柄がインデックスファンドです。

順位 ファンド名 運用会社 純資産総額(億円) 購入時手数料(%) 実質信託報酬(%)
1 eMAXIS Slim 米国株S&P500 三菱UFJアセット 50,865 0 0.09372
2 eMAXIS Slim 全世界株式(オール) 三菱UFJアセット 38,176 0 0.05775
3 A・バーンスタイン・米国成長株投信D アライアンス 30,667 3.3 1.72700
4 SBI・V・S&P500インデックスF SBI 17,777 0 0.09380
5 楽天・全米株式インデックス・ファンド 楽天 16,355 0 0.16200
6 世界厳選株式オープン<為替Hなし>(毎月) インベスコ 14,923 3.3 1.90300
7 A・バーンスタイン・米国成長株投信B アライアンス 14,274 3.3 1.72700
8 GSテクノロジー株式ファンド B(H無) ゴールドマン 11,920 3.3 2.09000
9 GESGハイクオリティ成長株式F(H無) AMOne 11,478 3.3 1.84800
10 ピクテグローバルインカム株式F(毎月分配) ピクテ 9,174 3.85 1.81000

インデックスファンドは、なぜ人気なのでしょうか?

対面の証券会社、銀行、郵便局に行くとアクティブファンドを勧められます。その理由は、アクティブファンドは証券会社等にとって儲かるからです。その反対側の顧客は儲かるのでしょうか。コストまで含めて考えるとアクティブファンドよりインデックスファンドの方が儲かる場合が多いのです。

インデックスファンドを推薦するのは、顧客スタンスに立っています。具体的には、投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤー、証券会社等から広告を受けていないムック、個人投資家から人気のあるブログが顧客スタンスに立っている場合が多いのです。

投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤーの上位5銘柄を見てみましょう。すべて低コストのインデックスファンドかETFです。

1位 eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー):三菱UFJ国際
2位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド:ニッセイ
3位 eMAXIS Slim米国株式(S&P500):三菱UFJ国際
4位 VANGUARD TOTAL WORLD STOCK ETF (VT):バンガード
5位 eMAXIS Slim全世界株式(除く日本):三菱UFJ国際

私は数十年前、ある証券会社の知り合いから、「投資信託だけは買ってはいけない。あれは、証券会社が儲けて顧客が損をするから。」とアドバイスを受けたことがあります。当時はまだインデックスファンドが発売されていなかったので、投資信託といえばすべてアクティブファンドだったのです。この話を、経済評論家の山崎元さんにしたところ。「それは正しい」と言われました。

著名投資家のウォーレン・バフェットもインデックスファンドを勧めています。

S&P500のインデックスファンドの圧勝

バークシャー・ハサウェイ社のCEOで、21兆円の資産家ウォーレン・バフェットは2007年12月19日に10年間の賭けをしました。S&P500インデックス・ファンドの10年間のパフォーマンスが、ヘッジファンド(手数料控除後ベース)を上回れば、バフェット氏の勝ちというものです。ファンド・オブ・ヘッジファンズのプロテジェ・パートナーズ社が挑戦者になりました。そして、その結果がバークシャー・ハサウェイ社の株主への手紙の中で発表されました。結果は一番右側のS&P500のインデックスファンドの圧勝でした。

ファンド ヘッジファンドとインデックスファンドの年平均リターン
A 2.0%
B 3.6%
C 6.5%
D 0.3%
E 2.4%
S&P500インデックスファンド 8.5%

バフェットは低コストのS&P500インデックスファンドを推奨

バークシャー・ハサウェイ社の株主への手紙の中で、こう書いてあります。「長年にわたって、私は投資のアドバイスに関する質問を受けてきました。その質問に答える中で、私は人間の行動について多くのことを学びました。私はいつも低コストのS&P500インデックスファンドを勧めてきました。あまり巨額の資産を持っていない私の友人たちの立派なところは、たいていは私のアドバイスに従ってくれたことです。ところが、個人の超金持ち、資産運用機関、年金基金で、私が与えた同じアドバイスに従ったものは全くいなかったと思います。こうした投資家は、私の考えに恭しくお礼を言って私と別れた後、高いフィーを取るファンドマネージャーの誘惑の言葉に耳を傾けるのです。もしくは、多くの資産運用機関の場合には、誇大宣伝するタイプのコンサルタントの話を聴きます。」

ウォーレンバフェットは自分の死後、相続財産についても、次の遺言を残したと公表しています。

遺言:「10%を短期国債に、90%を非常に低コストのS&P500(バンガード社を勧めます。)のインデックスファンドに投資することです。」

日本の状況についても、東証マネ部!のデータを見てみましょう。


「アクティブファンドがインデックスに勝てない」根拠とは?

アクティブファンドはインデックスに勝てない?

最近、パフォーマンスにおいて「アクティブファンドはインデックス(パッシブ)ファンドに勝てない」と言われ、米国を中心にインデックス投資の規模が拡大している。

この「アクティブファンドがインデックスに勝てない」という議論について、その根拠とされているデータが、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが年に2回公表している「SPIVA (S&P Indices Versus Active)」だ。

(出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス)

SPIVAは2002年から測定されており、世界各国におけるアクティブファンドのパフォーマンスとベンチマーク指数を様々な角度から比較している。

日本における状況は?

このSPIVAデータについて、2017年10月に日本のアクティブファンドの最新データが公表されたので、ほぼ同時期に公表された米国・欧州のデータとも比較しながら、ここでチェックしてみよう。

インデックスのパフォーマンスを下回っている日本のアクティブファンドの割合(2017年6月末時点)

(出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの公表資料より東証マネ部!作成)

日本のアクティブファンドについて、長期投資の観点から過去10年で見てみると、インデックスに勝てなかったファンド(投資先別)の割合は以下となった。

「日本の大型株ファンド」  63.0%
「日本の中小型株ファンド」 65.2%
「米国株式ファンド」    87.5%
「グローバル株式ファンド」 92.0%
「新興国株式ファンド」   90.3%

日本のアクティブファンドでは、主に日本株に投資をするファンドの60%超がインデックスに勝てず、外国株に投資するファンドはほとんどが勝てていないという結果に。

次に各期間でみてみると、日本株に投資するアクティブファンドでは大きな傾向は出ていないが、外国株に投資するファンドでは、期間が過去3年以上になると勝てない割合が90%近くになった。

これらのデータから、外国株に投資をする日本のアクティブファンドのほとんどがインデックスに勝てていないことが分かる。外国株に関して得られる情報が限られていることから、日本株ほど資産配分や銘柄選択がうまくできていないのかもしれない。

なお本国市場への投資成績という観点から、先進国市場の「過去10年間、本国の株式へ投資するアクティブファンド」のインデックスに勝てない割合(2017年6月時点)を調べてみると、以下のようになった。

「米国」 85.4%
「欧州」 87.4%
「日本」 67.1%

米国と欧州のアクティブファンドでは、本国市場に投資する場合であっても、過去10年間でインデックスに勝てない割合は85%超となる。日本では67%ほどであり、日本のアクティブファンドは米国・欧州のファンドと比べるとまだ健闘しているといえよう。

最後に、日本のアクティブファンドが各期間の経過後にどれだけ生き残っているかを見てみよう。

日本のアクティブファンドの生存率(2017年6月末時点)

(出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの公表資料より東証マネ部!作成)

2017年6月時点における、過去10年間の日本のアクティブファンド生存率は約60-70%だ。

日本のアクティブファンドで日本株に投資するファンドでは、過去10年間の生存率は66.5%となる。同じ期間において、本国の株式市場に投資をする米国のアクティブファンドの生存率は56.9%、欧州では45.8%であり、日本のアクティブファンドの方が生存率は高くなっている。とはいえ、市場に勝ち続けるということがいかに難しいかを物語る結果となった。

こうしたデータを見る限り、「長期で資産形成をするにはパッシブファンドを選んだ方がよい」と主張することには一定の合理性があるのかもしれない。

アクティブファンドが勝てない理由

アクティブファンドがインデックスに勝てない理由として、運用コストの高さが指摘されることが多い。投資信託協会の2017年9月末時点のデータによると、日本におけるアクティブファンドとインデックスファンドの運用コスト(信託報酬)の平均は、それぞれ年1.19%と年0.48%となっている。

アクティブファンドは、独自の調査や分析に基づいて銘柄を選定するために、人手や手間がかかることがコスト高の背景と言われる。一方で、アクティブ投資の生ける伝説であるウォーレン・バフェット氏が2017年の株主への手紙で以下で述べたように、アクティブ投資の運用コストに対しては異論もある。

「ウォール街の運用会社は数兆ドルの資金を運用しており、高い運用手数料を得ているが、利益を享受しているのは主に運用マネジャーであり、顧客ではない。大手投資家や小口の投資家はともに低コストのインデックスファンドを活用すべきである。」

「アクティブ vs インデックス」の注意点

ただし、SPIVAや運用コストのデータをもとに、「ほとんどのアクティブファンドは運用コストの差で勝てない、インデックスファンドに投資すべき。」とすぐに結論を出すことには注意が必要だ。

なぜならば、これらのアクティブファンドのなかには「隠れインデックス(パッシブ)ファンド」と呼ばれる、「ほとんど中身がインデックスファンドと変わらないが、アクティブファンドと名乗っていることで運用コストが高い」ファンドが含まれている可能性があるからだ。中身がほぼ同じでコストが高ければ、インデックスファンドにパフォーマンスで勝てないのは当然だろう。

こうした「隠れインデックスファンド」を選ばない方法として、「アクティブシェア」などの指標を使って選別するべきだという意見が、独立系のアクティブファンドの運用会社から提言されている。

米国のウォーレン・バフェット氏のように、長期でパフォーマンスのよいアクティブファンドも少なからず存在する。そうしたファンドを自らの手で探し当てるというのも投資の醍醐味の1つだろう。

資産形成において、インデックスファンド、アクティブファンドのどちらか一方を必ず選ばなければいけない…というものでもない。まずは自分の投資スタイルを見つけ、それに合った商品を上手に選ぶのがよいだろう。そうした判断の際にはSPIVAのような客観的なデータをぜひ活用してみて欲しい。