年金のトリセツ

私は、以前勤めていた会社で、確定拠出年金、確定給付年金、従業員持ち株会の責任者をしていました。この三つについて、当時は会社側の立場に立って仕事をしてきましたが、今日は利用する従業員の立場に立って話をしたいと思います。

1.確定拠出年金

昭和の時代には、サラリーマンの老後の資金として、

  • 退職金
  • 厚生年金
  • 企業年金
  • 財形年金
  • 年金保険

などがありました。

税制適格退職年金

このうち、退職金、企業年金の全額と厚生年金の半額は会社が負担しました。そして、その原資として税制適格退職年金という形で会社は積み立てていたのですが、経営が苦しくなった会社は、その積立金を取り崩して運転資金等にあてた結果、従業員の老後のための原資が足りなくなってしまいました。税制適格年金は税制優遇措置が取られていたにもかかわらず、ずさんな経理によって消滅してしまえば、政府の税制が問題視されることになりました。一方従業員は、もらえるはずの年金がもらえなくなったのですから悲惨なことになりました。

運用利回りは5.5%が前提

企業年金は運用利回り5.5%を前提として積み立てていたのですが、1990年の資産バブル崩壊によって、そんな高利の運用が継続できなくなったため、不足資金を会社側が補填することになりました。5.5%の運用利回りは、現役社員については、労働組合と交渉して引き下げを行うことができましたが、既に退職したOBに関しては、交渉相手が何万人という個人ですから、実質的に交渉できません。そのため、現在でも5.5%という高利の年金を支払い続けています。

会社のリスクを減らすための確定拠出年金

このように、大きな負担を強いられた会社側は、できるだけ自分の負担する将来リスクを減らしたいと考え、確定拠出年金の割合を増やすようにしたのです。

企業型確定拠出年金

企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、企業が掛金を毎月積み立て(拠出)し、従業員(加入者)が自ら年金資産の運用を行う制度です。

年金運用は自己責任

確定拠出年金の運用は、従業員が自分の責任で行うので、当時は、荒野に放り出された子羊のようで、会社はひどいことをするものだと考えました。

リスクの裏側に大きなリターン

しかし、現在のように知識・経験を積んでみると、確定拠出年金は、自分が責任を取って、大きなリターンを獲得できる可能性のある、とても良い制度だと考えるようになりました。見方が180度転換したのです。

長期なら外国株式パッシブファンド

私の勤めていた会社は、税制適格年金の資金を、40歳代後半から企業型確定拠出年金に移管しました。通常は60歳から年金を受け取りますので、受取までに15年間運用することができます。5年までの短中期ではなく、15年となれば長期ですから、ある程度のリスクをとって高リターンの運用を行うべきです。そこで、私は外国株式パッシブファンドに全額を投資しました。ファンドにはパッシブとアクティブがあって、知識のない人はアクティブのほうが恰好が良いと思いがちですが、アクティブファンドは運用会社のディーラーがアクティブに運用するためにコストがかかるのです。パッシブ(インデックス)で運用することが正しい選択だと言われています。

90%の社員は銀行預金で運用

私の勤めていた会社の社員の90%は銀行預金で運用しましたが、この90%という割合はほかの会社でも同じだと、幹事会社の担当が言っていました。銀行預金を選択した人たちはリターンがゼロでしょうから、確定拠出年金に制度変更になったことを恨んでいることでしょう。

2.3倍の人と1倍のままの人

一方、私は外国株式パッシブ(インデックス)ファンドで運用したので、元金の2.3倍に膨れました。10年後から受給する予定なので、それまでには4倍になることを期待しています。元金のまま増えない人に対して、4倍になる人もいます。運用資産の評価額は常に変動するので、10年後にどうなっているかは分かりませんが、あまり期待せずに待ちたいと思います。

2.確定給付年金

確定利回りが高ければ最長期で受給

退職金の一部と企業年金の一部を合計して確定給付年金を60歳から受け取っています。確定給付年金は会社が運用して2.5%の利回りを保証してくれています。現在のような超低金利の時代においては、2.5%はとてもありがたい利回りです。

運用方法も分散

確定給付年金を、一時金で受け取って、SPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)などの外国株式ETFで運用するのも一法ですが、運用方法は分散したほうが良いという考え方に基づいて、確定給付年金のまま20年間の分割受給にしました。2.5%という利回りを生かすには、できるだけ長期で受け取ったほうが良いという考えです。

3.従業員持ち株会

福利厚生と安定株主形成

従業員持ち株会での積み立ては、従業員の福利厚生という名目で行われ、実際に会社から数%の補助金も出ます。しかし、その反面、会社の本音は安定株主の形成という面が強いのも事実です。

長期で持ち続けるとどうなるか

私と連れ合いは、それぞれが勤めている会社で長年にわたって満額の掛け金を払い、株式を増やしてきました。私は株価が上がったところで全部売却して、1500万円の利益を得た一方で、連れ合いは勤めていた会社が倒産して400万円の損失を被りました。

私は運がよく、連れ合いは運が悪かったのです。二人の合計利益は1100万円です。もし二人が逆の立場だったら、合計で1100万円の損失になっていました。

私が、自分の子供に言ったことは次のとおりです。

「従業員持ち株会には、基本的に入らないほうが良い。ただし、管理職などになって、どうしても入らなければならない場合は、最小限の掛け金にすることだ。そして、できればこまめに引き出して、大きな金額にしないほうが良い。」

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