年齢別金融資産残高:日本における金融資産保有のウエイトが大きい50歳代、60歳代が買い易い金融商品に関する努力

◎今日のグラフ:年齢別金融資産残高

超高齢社会に向けた家計金融資産運用(大和総研調査季報 2015 年 夏季号 Vol.19 P7)を見ると、リスク性資産(株式・株式投信・債券・公社債投信)をたくさん保有しているのは60歳以上であることがわかります。

このグラフを見て気が付くことを、何点か申し上げたいと思います。

50歳代後半、60歳代の金融資産の伸びが顕著

先ず、20歳代~60歳前半まで、順調に1世帯当たり金融資産残高が伸びています。そして、50歳代後半と、60歳代前半の伸びが大きくなっています。50歳代後半の伸びについては、子供が独立したので家計費が減少して貯蓄に回せるお金が増えた、55歳ごろに子会社などに転籍して退職金を受け取った、などの要因が考えられます。60歳代前半の伸びについても同様に、子供にかかる経費減少、退職金受け取りなどが考えられますが、退職金が額が大きいことを考慮に入れると、それほど金融資産が伸びていません。住宅ローンの一括返済などがあるのでしょうか。

60歳以降、金融資産はほぼ横ばい

次に気が付くことは、60歳以降の金融資産がほとんど減少していないことです。金融資産の少ない人を中心に、60歳以降も雇用されて収入を得るなどして、金融資産を減らさないように努力しているのでしょうか。

日本は米欧と比べても現金・預金が多い

どちらにしても、全世代を通じて、リスク性資産(株式・株式投信・債券・公社債投信)がとても少なく、預金などが多いという結果が現れています。このことについては、日本銀行調査統計局の2017年8月の調査でも同様の結果となっています。なお、この調査では、保険・年金なども含んでいるために、現金・預金のウエイトが小さくなっています。この帯グラフは上から、日本、米国、ユーロエリアを表示しています。一番左の濃い色が現金・預金、中央の白い部分が株式等です。

日本人は企業の確定拠出年金でも9割が銀行預金

日本の家計は、米国、ユーロエリアに比べて、現金・預金がとても多いことが特徴です。この預金好きという日本人の特徴は、右の方の年金の運用にも表れています。この年金には、確定給付年金とともに確定拠出年金も含まれると思われます。確定拠出年金の運用は本人が行うのですが、運用する金融資産は9割が銀行預金だそうです。これは、私がかつて勤めていた会社で確定拠出年金の責任者をしていた時に幹事金融機関から聞いた話です。

銀行預金では今後のインフレ時代に対応できず

約30年前の日本のバブル崩壊後、デフレの時代が続いてきました。この期間は銀行預金も、守りの資産運用方法として有効だったかもしれませんが、現在は、政府・日銀ともにインフレ率2%を目標にして、更にその上もありうると言っていますので、金融資産にも欧米並みのリスクの取り方を検討した方がいいのではないかと思います。そうしないと、銀行預金は毎年目減りすることになります。

◎今日のテーマ:金融資産保有のウエイトが大きい50歳代、60歳代以上の買い易い金融商品が望まれる

日本において、金融資産を保有しているのは50歳代、60歳代以上がとても多く、人口的についても大きな塊となっています。しかも、団塊の世代は現在70歳前後で、まだ意気軒高な人がとても多い状態です。

高齢者でもリスク資産の適性が高い人がいる

ここで、不思議に思うことがあります。高齢者が投資をする場合、株式のようなリスクの高い商品への投資を減らして、国債、銀行預金のような元本確保型の商品に投資すべきだというアドバイスをいろいろなところで見ます。更に、ロボアドバイザーのアドバイスも株式の比率を下げたものが多いと思います。ところが実際の高齢者の中には、年金(厚生年金だけでなく、DC、DB、財形年金なども含めて。)で普段の生活を送ることができるので、余裕資金をできるだけ株式やETFに投資したいと思い、現にそうしている人もいるのではないでしょうか。

インターネット、ネット証券を使わずとも資産運用できることが望ましい

この人たちの中には残念ながら、インターネットの不得意な人・あるいはあまり有効活用していない人も多いようです。この人たちがインターネットを使わずに、そしてネット証券に口座を開設せずに、国内のETF、外国のETFを購入できるようになればいいのになあと思います。つまり内外のETFを買うためのハードルをぐっと下げることによって、リスク性資産を買う選択肢を広げられたらいいのにと思います。それが、このブログを立ち上げた動機の一つです。そして、私自身が、内外のETFを買うことで、何とか金融資産を増加させることができたという実績もあります。

日米最大のETFである1306とSPYは安心感のある商品

私の保有しているETFの主なものは、1306(TOPIX連動型上場投資信託)とSPY(アメリカSPDRのS&P 500の ETF)で、この2つの商品は、日本とアメリカ、それぞれのマーケットで最大の純資産額となっているので、安心感、信頼感という意味でも素晴らしい商品だと思います。ネット証券を利用することに抵抗感や不安がなく、進取の気性のある若い人達は、2018年に始まるつみたてNISAという素晴らしい選択肢があります。このような人たちは、もともと銀行の定期預金よりは投資を好むのでしょうし、この人たちの代表的存在である投資ブロガーが後押しすることも期待されていると思います。一方で、高齢者、そして日本人の中で9割を占める定期預金志向の一般人にとって、対面証券会社を利用してETFを買うことのハードルが低くなればいいと思います。

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