長期・分散・低コストによる資産形成 1

長期・分散・低コスト

資産形成の有効な方法は、長期・分散・低コストによる投資です。

つみけん

投資信託協会が、2020年5月、資産形成に係るシンクタンク機能の強化・充実を図ることを目的として、「すべての人に世界の成長を届ける研究会 ~長期・分散・積立による資産形成を実際の行動に~(通称:つみけん)」を設置しました。

「つみけんTargets」、「モニタリング指標」

2020年度の活動となる「つみけん2020」では、2041年の資産形成のあるべき姿を数値化した5つの「つみけんTargets」を設定しました。また、この5つの「つみけんTargets」に加え、16の「モニタリング指標」を掲げています。

これらのTargets、モニタリング指標、報告書をもとに資産形成の方法を研究しましょう。

「積立」は必ずしも必要でない

ところで、「つみけん」は長期・分散・積立と言い、私は長期・分散・低コストと言っています。長期と分散は同じですが、「積立」と「低コスト」が異なります。投資信託協会が、「積立」と言っているのは、ある場合には正しいのですが、「積立」にこだわる必要はなく、1回、あるいは2回、3回で、全額を投資しても良いのです。現時点であまり貯蓄がなく、これから稼いで少しずつ積み立てる人には有効な方法ですが、既にある程度蓄えがある場合には、早めに余裕資金の全額を投資した方が効率的です。

「つみけん」には低コストが抜けている

それ以上に問題なのが、「低コスト」という考えがないことです。低コストの商品には、インデックスファンドとETFがあります。ところが、これらの商品は金融商品にとってあまり積極的には売りたくない、儲からない商品です。投資信託協会は、慈善事業ではなく、金融商品を売るに際して行っている活動の一つですから、会員である金融機関が儲からないような商品は応援したくないのです。したがって、「低コスト」を目標にできないわけです。しかし、これは個人投資家の立場に立たない方針であり、個人投資家ファーストではありません。

常に「低コスト」を意識する

したがって、これから「つみけんTargets」、16の「モニタリング指標」、報告書を検討するにあたって、アクティブファンドなど高コストの商品を推奨しようとしているのか、あるいは低コスト商品を積極的に推奨しようとしているのかに留意しながら、勉強していきたいと思います。

つみけんの報告書

2021 年 5 月 20 日、「すべての人に世界の成長を届ける研究会~“長期・分散・積立”による資産形成を実際の行動に~(通称:つみけん)」では、「2041 年、資産形成をすべての人に~5 つのターゲットと 15 のアイデア~」という報告書を出しました。

以下の記述の中で、「⇒」は私のコメントです。

「すべての人に」 ➡

「資産形成の意識を持てば経済的に実行可能なすべての人々」とする。
あまり投資に関心のない人にも行動を促す。

「世界の成長を」 ➡

日本経済・企業だけでなく、世界経済・企業への投資を通じて社会的
課題の解決や社会の持続可能性の向上を目指す。

「届ける」 ➡

資産形成において、その有効性が確認されている「長期・分散・積立」という投資手法を「個人が少額から取り組める投資信託という仕組み」を活用して実践することで「すべての人」にその長期的成果を享受してもらう。

以上の点に関しては、3点目が「長期・分散・低コスト」であれば問題ないと思います。

「2041 年の資産形成のありたい姿」は、「”すべての”人が、少しずつ時間をかけて、投資を継続し将来のために備えることが、今この瞬間を大切に生きることにつながる」。「”すべての”人にとって投資を継続することが社会への参画であり、持続可能な社会を創造することに貢献できる」と認識され、実践されている社会。」

2041年の目標:「つみけんTargets2041」

  • つみけんTarget 1 現役世代の年代別保有金融資産の中央値を2倍
  • つみけんTarget 2 つみたてNISA及びDC等による積立投資総件数を4,000万件
  • つみけんTarget 3 つみたてNISA及びDCの残高を150兆円
  • つみけんTarget 4 株式や投資信託を保有している人の割合が100%
  • つみけんTarget 5 金融教育を受けたことのある人の割合が100%

⇒「2041 年の資産形成のありたい姿」及び2041年の目標:「つみけんTargets2041」については、言いたいこともありますが、ここでは特に触れずに先に進むことにしましょう。

この研究会には、客員研究員、オブザーバー等には証券会社党金融機関関係社員、大学教授、ファイナンシャルプランナーなどがいます。これらの人々の意見が、どこまで個人投資家の立場に徹していて自分のためになっているかを判断するのは、それを受け取る人次第です。

ここで大学教授等の立ち位置について話をします

かつて、東京大学経済学部の経済史の教授と一緒に仕事をした際、「私の専門としている経済史は儲からないけど、金融関係の研究を金融機関と一緒にやっている教授は、たくさん稼いで大学に入れてくれるのでありがたい。」という趣旨の話をされていました。金融関係の教授は、金融機関と金銭面で密接につながっているということを意味しています。

ファイナンシャルプランナーは自分ファースト

ファイナンシャルプランナーに関しては、全世界に投資するバンガード社のVTという株式ETFは、顧客に勧めないそうです。なぜなら、VT一つで完全なポートフォリオが完成されるために、ファイナンシャルプランナーの仕事がなくなって、おまんまの食い上げになってしまうからだそうです。

プロに頼らないのが最も好成績

また、ハーバード大学の研究によると、最も良い投資パフォーマンスを実現したグループは、素人が集まって勉強会を開いているグループだったそうです。ファイナンシャルプランナーなどが入ると、その人たちへの料金の分だけコストがかかるので、パフォーマンスが悪くなります。

つまり、金融機関の社員はもちろん、大学教授も、ファイナンシャルプランナーも自分たちの得になるような立ち位置にいて、その分だけ個人投資家のパフォーマンスは落ちるということは、前提として理解しておいた方が良いでしょう。

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