長期・分散・低コストによる資産形成 2

<昨日の続き>

これまで資産形成が進まなかった理由・背景とその解決策

要因 理由・背景 解決策
a.生活者本人要因 • 自分には無関係というイメージ
• 悪いもの怖いものというイメージ
• 近寄りにくいイメージ
• 低い金融リテラシー
• 投機的イメージ
• リテラシーを高めるための方策
• 情報発信内容の工夫
• 情報発信ツールの工夫
b.金融機関要因 • 顧客の利益を重視しない販売姿勢
• 長期資産形成向けのサービスが少な い
• 個人向けの包括的な資産運用アドバイスサービスが不足
• アセマネビジネスに対する理解不足
• 人材不足
• 若くてリテラシーが低い人向けサービ スの不足
• 多すぎる商品
• 意識改革
• 新たなサービス・サポートの提供
• 体制強化
• 適切な商品数
c.制度等要因 • 個人の金融資産の拡大が政府全 体の課題となっていなかった
• 弱い推進体制
• 複雑な制度
• 自発性に依拠した仕組み
• 金融教育と資産形成に対する意識 的な取り組みの欠如
• 事業提供者へのインセンティブが低
• 個人の金融資産の拡大を政府 全体の課題とする
• 金融能力・金融教育に関する 国際動向の把握とフォロー
• 統計データの整備
• 制度の改善・拡充
• ナッジを考慮した制度設計
d.外部要因 セールスパワーの強い他の金融商品
の存在
• 株式投資を不要とする状況
• マーケット不振(日本株式等)
• 二つのコード(SSC、CGC)の徹底・拡充など
• 投資信託を提供する運用会社が、Engagementなどに注力し、企業価値を高める努力を産業界と一体となって実施

⇒ 問題は投資が身近でないこと

項目を整理すると、このような表になるのでしょう。しかし、問題はもっと大きなところにあるのではないかと思います。それは、投資が身近な存在ではないということです。

保険のおばちゃん

子供は、郵便貯金や銀行預金で金融機関との関わりを持つようになります。さらに、昭和の時代には、財形貯蓄をする人間が多かったのですが、それを後押ししたのが生命保険のおばちゃんでした。しかし、現在は企業への入室管理が厳しくなったので、保険のおばちゃんの活躍する機会は少なくなりました。

父親も最近の知識がない

親切に投資を教えてくれればありがたいと思うのが、父親ですが、この人達は個別株式の取引経験はあっても、資産形成の知識も経験もないというのが実態です。ましてや、低コストのインデックスファンドや株式ETFについては未知の分野のようです。

若者たちのそばに有るのがネット証券

そこで今、若者たちのそばに有るのが、SBI証券、楽天証券等のネット証券会社です。SBI、楽天の証券口座数は既に野村證券を超えました。ネット証券の加入は、友達同士の口コミで伝わっているようです。ところが、この報告書の研究会には、ネット証券が参加していないようです。ネット証券に口座を開くメリットはユーチューブで紹介され、数十万人の閲覧者がいます。しかし、今回の資料である「つみけんの報告書」を知っている人は一体どれほどいるのでしょうか。

ネット証券は売り込まない

そして、ネット証券に口座を開いた人は、どの銘柄に人気があるのかが、よくわかるようになっています。

SBI証券

例えばSBI証券の投資信託の販売金額ランキングは以下の表のとおりです。これらは証券会社が売り込む商品ではなく、個人投資家が自ら選んだ商品ですから、信託報酬の安い商品が多くなっています。1位、3位、4位の銘柄の信託報酬は0.1%ですし、2位、5位は1%程度で高いのですが、対面証券が進めるアクティブファンドに比べれば低コストで済みます。

順位 ファンド名 分類
1位 SBI-SBI・V・S&P500インデックス・ファンド積立 NISA ノーロード 国際株式
2位 SBI-SBI日本株4.3ブルNISA ノーロード(INT) ブルベア
3位 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)積立 NISA ノーロード 国際株式
4位 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim米国株式(S&P5積立 NISA ノーロード00) 国際株式
5位 大和-iFreeレバレッジ NASDAQ100積立 NISA ノーロード(INT) ブルベア

楽天証券

楽天証券の投資信託ランキングも見てみましょう。やはり、低コストインデックスファンドが1位、3位、4位を占めています。このような上位銘柄を選べば、10年後には、投資を始めてよかったと思うようになり、それを口コミで進めることになるでしょう。しかし、そこには対面証券会社の出番はあまりないかも知れません。

順位 ファンド名 アセットタイプ
1位 eMAXISSlim米国株式(S&P500) 海外株式
2位 楽天日本株4.3倍ブル その他
3位 楽天・全米株式インデックス・ファンド 海外株式
4位 eMAXISSlim全世界株式(オール・カントリー) 海外株式
5位 iFreeレバレッジ NASDAQ100 その他

ユーチューバーが原動力

20代、30代のネット世代は、容易にネット証券に口座を作って投資を始め、資産形成を進めていくでしょう。それを後押ししているのが、資産形成のポイントを紹介するユーチューバー達です。楽天証券の証券口座数が野村證券、SBI証券を抜いて間もなく1位になるようですが、その大きな要因の一つがユーチューブだそうです。

<明日に続く>

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