<昨日の続き>
ピンとこない研究会の議論
「すべての人に世界の成長を届ける研究会~“長期・分散・積立”による資産形成を実際の行動に~(通称:つみけん)」の報告書では、第 2 章 第 2 回研究会から第 7 回研究会の議論の整理 ·において、
第 2 回研究会 資産形成を促すために
第 3 回研究会 投資教育 ···
第 4 回研究会 デジタルトランスフォーメーションと資産形成
第 5 回研究会 資産形成支援制度
DC 制度(企業型・個人型)について
NISA 制度(一般 NISA・つみたて NISA)について
第 6 回研究会 ナッジ
英国におけるナッジを通じた資産形成促進策
行動経済学と財政学の視点から見た資産形成促進策
第 7 回研究会 投資家としての運用会社の役割
投資家としての運用会社の役割
ESG 投資の実態とその有効性
を議論しています。しかし、私のような個人投資家から見ると、なぜ投資が健全な形で普及しないかについての理由が、明らかにされていなくて、何のための議論をしているかが分からず、ぴんと来ないのです。
初心者の感想
以下では、40年以上にわたって、投資をぼんやり見てきた、初心者レベルの個人投資家の感想を述べます。
無駄な生命保険に加入
私は1970年代に社会人になり、間もなく、生命保険会社のおばちゃんの勧誘で、生命保険に入りました。今のように知識があれば、そのような保険に入る必要はなく、結婚して子供ができてから、勤めている会社の福利厚生で扱っている団体生命に入れば十分だったのですから、無駄なことをしました。
金融機関に暴利をむさぼられる財形に加入
生命保険とほぼ同時に、その生命保険会社の扱っている財形貯蓄を始めました。当時は財形に入るのが一般的でしたし、現在のような低コストインデックスファンドやETFもなかったので、給与天引きで無駄遣いしない財形制度は、それなりの存在価値があったようです。しかし、この制度も今から見れば大幅なコストを金融機関に払っていたことになります。
証券会社は投資信託で暴利をむさぼる
1980年代の後半に、飛行機で隣り合わせた山一証券の社員から「証券会社の投資信託だけは買ってはいけない」というアドバイスをもらいました。当時の投資信託は、低コストインデックスファンドがないので、すべて高コストのアクティブファンドばかりだったのです。しかもその投資信託を買い換えさせることによって、販売手数料を何度も稼いでいました。
証券会社は個別株式の買い替えで暴利をむさぼる
個別株式は投資信託のような信託報酬がかかりませんが、買い換えさせることによって販売手数料を稼いでいました。その時は、「耳寄りな情報があるのですが…」と言った口説き文句が、好事例として社内に配布されていました。
個人投資家は身を削って金融機関社員の給料を払う
以上の通り、1970年代、80年代は、高コストの投資信託の買い替え、個別株式の買い替えによって手数料を稼いでいたのです。この結果、個人投資家が受け取るリターンのかなりの部分を証券会社がかすめ取っていました。また、生命保険会社なども、商品のコスト、リターンをブラックボックスの中に閉じ込めて、個人投資家には渡さず、金融機関の利益になっていたのです。
インデックスファンド、ETF、インターネットで可視化
この仕組みがはっきりと分かるようになったのは、アメリカにおいてインデックスファンドや、ETFが販売され、コスト、リターンが透明になった後でした。ただし、SPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)などの実績は2000年代になって徐々に個人投資家にも知られるところとなりましたが、その理由はインターネットが普及し、誰でもデータを見れるようになったことも大きな理由の一つです。つまり、インデックスファンド、ETF、インターネットによって、個人投資家がどれほど高いコストを支払ってきたかということが、はっきり分かるようになったのです。
20世紀は個人投資家は知らされず
証券会社や保険会社の社員は当然、このようにぼろもうけをしていたことを知っていたのですが、それは個人投資家が知るところとはなりませんでした。
1990年代も個人投資家は高コストを負担
1990年に株式バブルが崩壊し、その後土地バブルがはじけると、金融機関は経営が苦しくなり、資本体質を強化せざるを得なくなりました。このため、個人投資家は高コストを負担し続け、利益を受け取れる状態にはなりませんでした。
株式や投資は怖いという意識が定着
この1990年代は山一証券をはじめとする金融機関の自主廃業が頻繁に起こり、株価もどんどん下落しました。このため、個人投資家は株式は怖いものだ、投資はしない方が良い、銀行預金が安心だと思うようになり、投資はどんどん遠い存在になりました。それまでは時々購入していた、お金に関する月刊誌も、低利回り商品の記事しかなくなったので買うことを止め、投資からは距離を置くようになりました。
2000年頃はITバブル崩壊、エンロン不正会計事件
更に、日本の資産バブルの後、アメリカにおいてもITバブルが崩壊し、エンロンの不正会計事件が発生しました。
ITバブル
IT(インターネット)バブルとは、1990年代前期から2000年代初期にかけて、アメリカ合衆国の市場を中心に起こった、インターネット関連企業の実需投資や株式投資が、実態を伴わない異常な高値になったことです。「ドットコム会社」と呼ばれる多くのIT関連ベンチャーが設立され、1999年から2000年までの足掛け2年間に亘って株価が異常に上昇したが、2001年には完全にバブルは弾けました。私の知り合いも、ITバブルに乗じて、ストックオプションを行使したお金でクルーザーを買いましたが、家族で一度海に出たら船酔いして2度と乗ることはありませんでした。その後、浮気をして、結局は離婚しました。
不正会計事件
一方、米国の総合エネルギー会社エンロンが起こした不正会計事件は、デリバティブなどの金融技術とITを駆使した革新的なビジネスモデルを確立し、一時は優良企業とみなされていましたが、2001年に特定目的会社(SPC)を利用した巨額の粉飾決算が発覚し倒産しました。この事件を契機にコーポレートガバナンスが重視されるようになり、2002年、企業の不祥事に対する厳しい罰則を盛り込んだ企業改革法(SOX法)が導入されました。