長期・分散・低コストによる資産形成 4

<昨日の続き>

21世紀の新制度、新商品

1990年代の暗い時代を過ごした後、2000年代に入ると投資に人気が出るきっかけになる商品、制度も登場し始めました。

ETFは登場したが低リターン

2001年には、1306(TOPIX連動型上場投資信託(ETF))も発売され、透明性のある低コスト商品も登場したのですが、日本においては最も重要な要素であるリターンが低いのですから、魅力はなく、一般の個人投資家を惹きつけることは無かったようです。また、ETFは証券会社から見れば、儲からない商品ですから、積極的に売ることはせず、相も変わらずアクティブファンドの販売に血道をあげていました。

企業型確定拠出年金

この時期に登場した、新制度が企業型確定拠出年金(DC)でした。この制度は、1962年に導入された適格退職年金を廃止しその後継として設立され、企業が国税庁の承認の下で退職金を外部の金融機関を利用して積み立てる仕組みでした。

従業員の9割は銀行預金等を選択

適格退職年金が5%以上の利回りを前提として設計し、従業員も高い利回りを期待していましたが、その制度が破綻し、従業員は突然自分で資金を運用しろと言われたので、「なんと冷たい制度」だと感じた人もたくさんいました。それまで、ほとんどのサラリーマンは投資経験がありませんでしたから、なんと9割の人が銀行預金などの元本保証型を選んでしまいました。ところがアメリカの退職口座は、株式などにかなりの割合を投資することがデフォルト化されていて、その後資産が増えていきました。日本は、個人の年金資産運用に失敗しただけでなく、将来の日本経済を支える投資にも失敗したことになります。

経営者、労働組合の責任

確定拠出年金に関しては、運用商品を従業員が選択するわけですから、投資に消極的な従業員に責任があるという見方もできるかもしれませんが、アメリカなどのように株式など投資するタイプをデフォルトとしなかった、経営者、労働組合の責任もあったでしょう。誰もリスクをとって責任を果たそうとしなかったのです。

チャンスを逸した日本

結局、大きなチャンスだった、ETFも確定拠出年金もあまり成功しませんでした。そうこうしているうちに、アメリカでサブプライムのバブルが発生し、その後リーマンショックに見舞われました。投資経験と余裕資金のある人は、この機に儲けた人もいたでしょうが、一般の人たちは、投資からさらに遠ざかり、あるいは、人によって失業、リストラを受ける人も増えました。

チャンス到来

しかし、その後、日本銀行の金融緩和政策などで2013年頃から、投資が拡大するチャンスを迎えます。

  • リーマンショックからの世界経済の立ち直り
  • 日本銀行の金融緩和政策
  • ニッセイをはじめとする低コストインデックスファンドの誕生
  • 個人型確定拠出年金
  • S&P500などアメリカの主要ETFの好成績
  • NISA、つみたてNISAの誕生
  • ネット証券の成長と対面証券の没落
  • ブロガー・ユーチューバーの活躍
  • 金融庁による個人投資家ファーストの実現

これらの項目については、多くの人が指摘しているものもありますが、あまり取り上げられていないものもあります。したがって、大手新聞などが扱っていないいくつかの項目についてコメントしたいと思います。

① ニッセイをはじめとする低コストインデックスファンドの誕生

2013年12月に<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドが発売されました。当時としては、画期的な低コストインデックスファンドであり、投信ブロガーがその年のグランプリに選びました。しかし、あまりに低コストだったせいでしょうが、社内の批判を受け、授賞式に誰も登壇しないという異例の式典になりました。逆に言えば、それほどのショッキングな出来事であり、金融機関ファーストなのか、あるいは顧客ファーストなのかをせめぎ合う象徴的な出来事だったのです。その後、eMAXIS Slimシリーズ等が競合商品を発売し、低コスト競争を繰り広げることになりました。

② S&P500などアメリカの主要ETFの好成績

日本のシニア層に比べて、アメリカのシニア層は最近30年間でかなり裕福になりました。それはアメリカの株価が好調だったことにもよります。制度が良く、コストが低くても、リターンが低ければ個人投資家は投資をしません。投資で好成績をあげている日本人にとって、S&P500などアメリカの主要ETFは重要な投資先ですから、投資をするならS&P500に関する知識をある程度身につける必要があるでしょう。そして、伝説的投資家のウォーレン・バフェットがなぜこの銘柄を推奨しているのかを考える必要があるでしょう。

③ ネット証券の成長と対面証券の没落

私と連れ合いは野村証券1社で投資を続けていますが、子供達にはSBI証券を勧めました。実は子供達にも数年前に野村証券の口座を作らせたのですが、低コスト・インデックスファンドを発売せず、株式ETFや外国為替の手数料が相変わらず高いことから、野村證券には見切りをつけ、SBI証券に口座を開設させました。つまり、我が家では、対面証券がすでに没落したのです。そして、いったん没落した以上、復活の可能性はないでしょう。30年後に、私の孫の時代に、低コストインデックスファンド、低手数料などが実現していれば選択の余地があるかもしれませんが、私の子供たちがSBI証券で満足していれば、利用の仕方が良くわかるSBI証券を利用させるでしょう。

④ 投信ブロガー・ユーチューバーの活躍

イデコ、つみたてNISAという新制度が始まり、低コストインデックスファンド、外国株式ETFが成長する中で、何を信じ、誰の意見を聞けば良いのかに関し迷っている人は多いようです。そこで注目を浴びているのが投信ブロガー・ユーチューバーです。

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」の授賞式には日経新聞のキャスターなど、メディア関係者なども見学に来ています。無視できない存在になっているのでしょう。また、最近楽天証券の証券口座数が野村證券、SBI証券を抜いて第1位に躍り出る勢いですが、その原動力の一つがユーチューバーの存在だと言われています。実際、SBI証券と比べると楽天の方がユーチューブの数、内容において勝っているように思えます。なお、松井証券やマネックス証券には、ユーチューバーによるユーチューブがないので、口座数解説において不利な状況にあるようです。時代の変化が激しい中、先輩や父親は頼りにならず、投信ブログやユーチューブの果たす役割は重要になっています。

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