<昨日の続き>
「2041 年、資産形成をすべての人に~5 つのターゲットと 15 のアイデア~」をもとに考えています。
「資産形成支援制度」について考えます。研究員が以下のようなコメントを出しています。
「DC は企業型を中心に普及拡大をし、初めて投資信託に触れる機会を提供してきた。企業型 DC に関する課題として、企業の規模によって、加入者への投資教育・情報提供の格差が大きいことが挙げられた。制度実施企業には従業員教育や運営管理機関評価等の責務があるが、小規模な事業会社にとっては大きな負荷となっている。従業員への投資教育の負荷に対する軽減策として、小規模会社が利用可能な教育パッケージを提供することが提案された。また、運営管理機関変更、商品の除外・見直し手続きの際には、一旦現金化しなければならないことは、加入者目線でプラン見直しをする上で妨げになっているとの指摘もされた。 」
投資教育は規模が小さい方が内容は充実
この中で「企業の規模によって、加入者への投資教育・情報提供の格差が大きい」とありますが、投資教育の有効性については私の実体験とかなりかけ離れています。私の勤めていた会社が確定拠出年金を導入した際に受けた情報提供は、金融機関の社員が講師を務める表面的・形式的なもので、実際の役には立たないものでした。この情報提供を受けた後に選んだ運用商品の90%は銀行預金であり、当時、他の会社も軒並み同じような結果だったと幹事会社の社員は言っていました。
小規模企業は具体的指標を推奨
一方、連れ合いの会社では資産運用の講習会を開いて、損保に勤めるファイナンシャルプランナーが副業としてした話の結論は、「S&P500」がおススメというものでした。
最高額の5.5万円を外国株式インデックスファンド
また私の知り合いが、会社の選択制確定拠出年金制度において、毎月1万円の銀行預金を選んでいましたが、私が「最高額の5.5万円を外国株式インデックスファンドで運用するのが良い。税制上有利だし、リターンも大きい。数十年の長期投資なら株式インデックスファンドの場合、リスクも小さくなる。商品選びの際に気を付ける点は、信託報酬が0.2%未満の外国株式インデックスファンドを選ぶこと。」とアドバイスしたところ、すぐに変更手続きを実施しました。
信託報酬0.2%未満等のポイントを教えてくれる教育
つまり、役に立たない情報提供を何時間聞いても時間の無駄であり、「外国株式インデックスファンド、S&P500、信託報酬0.2%未満」というようなポイントを、的確に教えてくれる情報提供者が必要なのです。
ハーバード大学の研究
ハーバード大学の調査によると、最も資産運用実績の良かった人は、プロからアドバイスを受けた人ではなく、素人が集まって資産運用の勉強会を開いている人達だったそうです。
具体的方法は投信ブロガーとネット証券ランキング
このアドバイスに比較的近いことを行っているのが、
- 投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year
- SBI証券、楽天証券の投資信託ランキング
に登場する上位銘柄かもしれません。「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」は、素人が推奨する銘柄であり、「SBI証券、楽天証券の投資信託ランキング」は素人が実際に買っている銘柄です。両方に共通する銘柄を選ぶのが優れた方法かもしれません。
次に、個人型DCについて述べています。
「続いて、個人型 DC に関する課題として、まず普及率が低いことが挙げられた。加入者の属性によって掛け金の限度額が異なることがその要因の一つとして考えられ、金融機関にとっても、加入者にとっても壁になっているという指摘がなされた。これに対する解決策として、厚生労働省が提供している「ねんきん情報アプリ!」の中に、各自の拠出限度額を参考情報として掲載することが提案された。さらに、手続きがオンラインで完結できないことが普及の妨げになっているとの主張もなされた。 」
2022年から制度改正
加入者の属性によって掛け金の限度額が異なることの関しては、全くその通りですし、加えて、選択制企業型確定拠出年金などの場合には、いくらになるかなどが分かりません。また、会社と労働組合の協定によってイデコの限度額が異なるというのはおかしな話です。2022年から、制度改正になるので、少しわかりやすくなりそうです。
NISA制度(一般 NISA・つみたて NISA)についても取り上げています。
「最初に、制度自体(特に一般 NISA の新制度)が複雑で、資産形成を始めようとする投資家が、投資の前にその制度の難解さから挫折してしまう危険性があること、FP や金融機関が、本来の
ライフプランニングではなく、制度の説明に時間を取られてしまうことへの問題意識についての説明がなされた。
つみたて NISA については、1 つ目の課題として、つみたて NISA の口座数は増加傾向にあるが、非稼働口座が多いことが挙げられた。その要因としてまず挙げられたのは、商品数が多く、商品選択が困難であることが指摘された。この課題への対処として販売金融機関が取扱商品を絞る、投資家の知識レベルや希望に応じて商品の選択肢を提示する仕組みを作る、商品紹介の web ページ等を見やすく、分かりやすくなるよう工夫する、同一会社内で同じ指数に連動するインデックス投信の新規設定を制限する、アドバイザーの育成・支援・普及を行う、等の施策が提案された。非稼働口座が多いもう一つの要因として、投資は「安い時に買って、高い時に売る」ものというイメージが強く、長期の積立投資を目的とした制度にも関わらず、開始するタイミングを見計らって始めらないケースがあることが紹介された。
続いて、課題の 2つ目として、DC とは異なり導入時研修のようなものが無いため、スタート時の知識レベルの差が大きすぎることが挙げられた。この点については、個人の知識レベルに応じたデジタル教育ツールの提供ができないか提案された。
3 つ目の課題として挙げられたのは、積立投資にも関わらず、早期解約が多いことである。ここでは、アドバイザー(人)とテクノロジーの両方を活用し、それぞれの役割にあわせた解決策を見いだせないかという提案がなされた。最後に、つみたて NISA に限らず、口座開設で挫折する投資家が多いことが課題として加えられた。」
つみたて NISAの口座が非稼働以前に口座開設が難しい
1 つ目の課題として、つみたて NISAの口座が非稼働であるということを挙げていますが、それ以前に、証券会社に口座を開設することが結構難しいのです。私の子供たちは、普通の社会人としてITを使っていますが、口座開設の入力をする際、金融関係の専門用語もありますので、私がそばにいてアドバイスしないと、なかなかスムーズに入力をできないようです。また、氏名に環境文字があると、結局は紙で申し込まなければならず、大きな障害であり、ストレスでした。
NISAの問題点
NISAに関する問題点を挙げると以下の通りです。
- 制度が頻繁に変わるので信頼できない
- 一般NISAは5年後、つみたてNISAは20年後どうなるか分からないので不安
- つみたてNISAの積み立て限度額が小さいので、インセンティブが働かない
住宅資金にも利用できるように、長期で安定し住宅価格に見合う限度額を設定してほしいものです。