問題:嫌な顧客に勧めるポートフォリオ

今日は実話をお話ししましょう

私が以前勤めていた会社で、多くの人から嫌われている役員がいました。その人は定年で退職し、貯蓄していた資産を運用することにしました。そこで、某有名証券会社の担当者を呼び出し、「どう運用すればよいか教えろ。」と言ったそうです。この担当者は、元役員のあまりに横柄な物言いに、ひどく憤慨したと言ったそうです。

憂さの晴らし仕方を考える

さて、ここまでが実話で、このような元役員の顧客に対し、どのようなポートフォリオを提案すると憂さが晴れるでしょうか。というのが今日の問題です。

顧客がやっていはいけないこと

かつて、証券会社の人が私にアドバイスしてくれたことは、「アクティブファンドの投資信託だけは買ってはいけない。あれは、証券会社が、高い信託報酬で儲けて、毎年のように買い替えを勧めて、高い売買手数料で儲ける商品だからです。そして、リスクだけは顧客が負います。」ということでした。

アセットロケーション

従って、私が普段駄目だと言い続けている商品を提案すれば、ウサが晴れます。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオが、

  • 国内株式:25%
  • 外国株式:25%
  • 国内債券:25%
  • 外国債券:25%

ですから、これをもう少し利益が出るように改良して、

国内株式:35%
外国株式:35%
国内債券: 5%
外国債券:25%

を提案します。株式の割合を高くしたのは、基本的にアクティブファンドの方が手数料が高いからです。

手数料幅の大きいアクティブファンド

国内株式については、個別株式と株式投資信託が考えられますが、嫌な顧客とあまり付き合いたくないので、1年に一回だけ買い替えすればよく、手数料幅の大きい株式投資信託を選択します。

外国株式については、手数料幅の大きいアクティブファンドを勧めます。

売れ残った社債

国内債券については、その時に法人顧客が買わなかったような不人気の社債があれば、それを勧めます。私の友人に、対面証券から社債を勧められて買ったら、償還されず、ほとんどパーになったと怒っている人がいました。個人投資家は、個別社債に手を出してはいけません。

高リスクの外貨預金

外国債券についても、やはり、不人気の社債があれば、それを勧めます。もし、倒産しても、投資は自己責任ですから。あるいは、外貨預金も手数料が高いので勧めたくなります。金利の高い、トルコリラや南アフリカランドが良いでしょう。

ラップファンド

ポートフォリオについては、以上の基本方針に従いますが、できるだけ手数料を搾り取りたいので、ラップファンドを勧めます。

ある会社のファンドラップの手数料を見てみましょう。

「ファンドラップの料金は、投資一任報酬とファンドラップ報酬の合計額となります。投資一任報酬は固定報酬制と実績報酬併用制があり、固定報酬制では最大で運用資産の0.4180%(税込み・年率)、実績報酬併用制では最大で運用資産の0.2090%(税込み・年率)+運用益の積み上げ額の11.0%(税込み)となります。ファンドラップ報酬は最大で運用資産の1.320%(税込み・年率)となります。このほかに投資信託では運用管理費用(信託報酬)(最大で信託財産の1.35%±0.70%(概算)(税込み・年率))、信託財産留保額(最大で信託財産の0.5%)、その他費用をご負担いただきます。」

次に、参考までに信託報酬の高い投資銘柄とはどの程度の水準かを見てみましょう。データは価格.COMです。

(参考)

国内株式に関し、信託報酬の高い順に並べました。信託報酬はインデックスファンドの20倍です。

名称 純資産 信託報酬 売却時費用
マネックス・アクティビスト・ファンド 『愛称:日本の未来』 15,006百万円 2.20% 0.30%
GS 日本小型株ファンド 2,800百万円 2.18% 0.30%
日興アクティブ・ダイナミクス 『愛称:投資力学』 3,500百万円 2.09% 0.50%
ノムラ日本株戦略ファンド 『愛称:Big Project-N』 46,636百万円 2.09% 0.30%
日興グローイング・ベンチャーファンド 『愛称:グローイング・ベンチャー』 9,914百万円 2.09% 0.50%

国際株式に関し、信託報酬の高い順に並べました。信託報酬は株式ETFの20倍以上です。

名称 純資産 信託報酬 売却費用
CAMベトナムファンド 5,430百万円 2.62% 0.50%
アメリカン・ドリーム・ファンド 3,903百万円 2.59% 0.30%
グロ-バル・ヘルスケア&バイオAコ-ス 『愛称:健太A』 1,929百万円 2.42% 0.30%
グロ-バル・ヘルスケア&バイオBコ-ス 『愛称:健太B』 8,686百万円 2.42% 0.30%
グロ-バル・ヘルスケア&バイオ・ファンド 『愛称:健次』 206,107百万円 2.42% 0.30%

国内債券に関し、信託報酬の高い順に並べました。

名称 純資産 信託報酬 信託財産
年金積立 日本短期債券オープン 『愛称:DC 日本短期債券オープン』 777百万円 1.10% 0.10%
ニッセイ日本インカムオープン 『愛称:Jボンド』 41,733百万円 0.94% 0.00%
ニッセイ日本インカムオープン(年1回決算型) 『愛称:Jボンド(年1回決算型)』 14,015百万円 0.94% 0.00%
ニッセイ国内債券アルファ 『愛称:Jアルファ』 4,525百万円 0.94% 0.00%
CBオープン 2,445百万円 0.77% 0.30%

国際債券に関し、信託報酬の高い順に並べました。

名称 純資産純資産用語解説 信託報酬信託報酬用語解説 信託財産
ハイインカムソブリン(毎)ヘッジなし 『愛称:ドルの贈り物』 2,699百万円 2.09% 0.30%
ピクテ・ハイインカム・ソブリン・ファンド(毎月決算型)為替ヘッジコース 『愛称:円の贈り物』 80百万円 2.09% 0.30%
JPM新興国現地通貨ソブリン・ファンド(毎月決算型) 2,347百万円 1.93% 0.00%
GSアジア・ハイ・イールド債券ファンド 米ドルコース 9,776百万円 1.90% 0.00%
GSアジア・ハイ・イールド債券ファンド 円コース 1,649百万円 1.90% 0.00%

リスクは顧客持ちで、手数料4%を搾り取る

コストの高い銘柄を選び、ラップファンドを使い、売れ残った社債を売りつけ、関連の信託銀行で外貨預金をすれば、証券会社は毎年4%近い手数料をノーリスクで手に入れることができます。もし、株式ETFや低コストインデックスファンドをバイ・アンド・ホールドすれば、毎年のコストは0.1%ですから、毎年4%を無駄にしないで済みます。

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