自分の生命・資産を守る
津波、豪雨などの災害があるときに、どのような避難指示が有効でしょうか。そして、これは災害だけでなく、自分の資産を守るためにも有効かもしれません。
このブログは、個人資産に関するものなので、どんな人たちが、自分の金融資産を海外などに避難させているか、あるいは推奨しているか列挙してみましょう。
- パックン:S&P500か全世界株式のインデックスファンド
- 厚切りジェイソン:VTIか全米株式インデックス・ファンド
- 経済評論家の豊島逸男:金融資産の過半を金または外貨で運用
- 経済評論家の藤巻健史:USMMF
- 日本銀行OB:外貨、金
- 財務省OB:外貨、金
- 投信ブロガー:ランキング上位5銘柄は外国株式インデックスファンドかETF
キャピタルフライト(資本がある国から別の国に逃避すること)は、既に始まっているかもしれません。
それでは、災害の問題に戻って、2023年4月25日のYAHOO!JAPNニュースを見ます。
「もうみんな避難していますよ」の情報が住民の行動を促す!?理由と“有効な避難指示の出し方”を研究者に聞いた
地震や大雨などの自然災害が起きた際、自治体などが出す「避難指示」。どのような文章や言い方であれば、人は避難しようと思うのだろうか?
この疑問に答えてくれる実験を、千葉大学の研究者らが行い、その結果が4月23日発行の「日本感性工学会論文誌(第22巻2号)」に公開された。 実験を行ったのは、千葉大学卒業生の池田朋矢氏(令和元年学部卒業)と千葉大学大学院の一川誠教授。自然災害が発生した際に発せられる「避難指示文書」に“他者の避難状況についての情報”を含めることで、避難行動の必要性に関する判断にどのような影響を及ぼすかを調べた。 その結果、特に危険度が低い状況において、「多くの他者が避難している」という情報が、避難の必要性に対する判断を促進することが示された。
「対象地域のほとんどがすでに避難をしています」
実験の対象は20人。まず、災害時に自治体などから発信されるエリアメールに模した文章(例:「土砂災害境界情報が発令されました。土砂災害の恐れがある地域にお住まいの方は避難を開始してください」)を提示。そして、文章には“他者の避難の状況についての情報”を加えた。 提示する文章の例としては、リリースに3種類「同調バイアスが高い条件」「同調バイアスが低い条件」「統制条件」が示されている。
【同調バイアスが高い条件】 土砂災害境界情報が発令されました。 土砂災害の恐れがある地域にお住まいの方は避難を開始してください。 対象地域のほとんどがすでに避難をしています。
【同調バイアスが低い条件】 土砂災害境界情報が発令されました。 土砂災害の恐れがある地域にお住まいの方は避難を開始してください。 対象地域の方がすでに避難をしています。
【統制条件】 土砂災害境界情報が発令されました。 土砂災害の恐れがある地域にお住まいの方は避難を開始してください。 避難所がすでに開設されています。 続いて災害状況を示す景観画像、3段階の危険度(高・中・低)のそれぞれ30枚、合計90枚のうち1枚を提示し、参加者は“画像の危険度”と“その状況を目にした場合の避難の必要性”について、7段階で評定した。
そして、画像で提示された状況の危険性や、そこから避難する必要性の認知に及ぼす影響を調べたところ、画像から感じられる危険に関する評定結果は、「他の人がすでに避難している」という情報が“危険度の中程度”や“低い状況”で、目にした状況の危険を高く評価させる効果があることを示した。
また、避難の必要性に関する評定結果も、“危険度の中程度”や“低い状況”で、避難の必要性を高く評価させる効果があることが示された。 さらに、個人の防災意識に関する項目と被災経験をあわせて分析した結果、「災害への関心」「他者指向(=他者のために何かすること、他者との連携や友好な関係の構築に積極的な傾向のこと)」「被災状況に対する想像力」が強いほど、同調による影響を受けて、避難の必要性を高く判断しやすくなることを示した。
今回の実験では、「特に危険度が低い状況において、多くの他者が避難しているという情報が避難の必要性に対する判断を促進すること」が分かったということだが、これはなぜなのか? 同調圧力が強いと言われる日本文化も関係しているのか? また、今回の結果を踏まえ、自治体は、どのようなタイミングでどのような文言で避難指示を出せばいいのか? 千葉大学大学院の一川誠教授に“有効な避難指示の出し方”を聞いた。
危険度が低い場合は「伸びしろ」が大きかった
――このような実験を行った理由は?
今回の実験を行ったきっかけは、自然災害が発生した時、自治体からの避難指示に従う住民の少なさに衝撃を受けたことです。
たとえば、2018年8月の西日本豪雨に関しては、避難指示・勧告対象者は約863万人でしたが、実際に避難所に避難した人は対象者の0.5%に満たない4万2000人でした。
また、2019年7月に九州地方を襲った大雨では、鹿児島県、宮崎県で合わせて約110万人に避難勧告や避難指示が出ましたが、実際に避難所に来たのは1%程度の1万1353人程度でした。
避難指示に対する、住民の消極的な対応の基礎には「認知バイアス」や「ヒューリスティクス」があることが、認知科学や認知心理学の研究によって、しばしば指摘されてきました。
「認知バイアス」は、判断が合理性から体系的に逸脱する傾向のことです。様々な要因によって引き起こされ、知覚の歪み、不正確な判断、非論理的な解釈などを引き起こすことがあります。
「ヒューリスティクス」は、十分な情報が利用できないのに短時間での判断が迫られた場合などに採択されやすい、暗黙のうちに用いられるルールや方法のことです。
ただ、認知心理学の研究者としては、このように避難行動を抑制する「認知バイアス」や「ヒューリスティクス」は、避難行動を促進する可能性もあるように思われました。そこで、この問題に関心を持っていた当時のゼミ生の池田朋矢君と、認知バイアスが避難行動を促進しうるのかを検討する実験を実施することにしました。
――「特に危険度が低い状況において、多くの他者が避難しているという情報が避難の必要性に対する判断を促進する」。これはなぜ?
危険度が高い状況では、「多くの他者が避難している」という情報がなくても、多くの人が「避難が必要」と考えていました。
“危険度が低い”場合は、まだ「伸びしろ」が大きかったため、同調バイアス(=周りの人たちの行動に自分の行動を合わせてしまう心理状態のこと)の効果が大きく生じたのだと思います。
危険度が高い場合は「伸びしろ」が小さい
――危険度が“中程度や低い状況”というのは、たとえば、どのような状況のこと? 今回の実験では、予備実験を行い、水害、火災、震災、津波、竜巻、土砂崩れ、噴火の画像と、自然災害の生じていない日常風景を写した画像の計97枚について、「どちらでもない」を中心に、「非常に危険」から「非常に安全」までの7段階の印象評定を行ってもらいました。 そこで、上記の画像を見て、「危険でも安全のどちらでもない」というニュートラルな印象の状態よりも、統計的に有意に「安全」と感じるような画像30枚を提示した条件が「危険度の低い状況」でした。 「危険でも安全のどちらでもない」というニュートラルな印象の状態よりも、統計的に有意に「危険」で、「やや危険」と感じる画像30枚を提示した条件が「危険度が中程度の状況」でした。 なお、ニュートラルな印象の状態よりも、統計的に有意に「危険」で、「とても危険」と感じる画像30枚を提示した条件が「危険度が高程度の状況」でした。 ――多くの他者が避難しているという情報は、危険度が高い状況ではあまり効果がなかった? そもそも、“危険度が高い”状況では、避難所の情報がなくても「避難の必要性がとても高い」と判断されていました。「伸びしろ」が小さく、避難所の情報を示しても、そのことによって避難の必要性についての判断の変動が小さかったものと考えられます。 ただ、“危険度が高い”状況でも、「同調バイアスが高い条件」「同調バイアスが低い条件」で、避難の必要性が「統制条件」より高く評価されたので、「伸びしろ」が小さく、変動は小さいなりに、ちゃんと同調バイアスの効果は出ていたようです。
有効な避難指示の出し方は?
――今回の結果、どのように受け止めた? 今回、「対象地域のほとんどがすでに避難をしています」という“同調バイアスが高い条件”だけではなく、特に人数を示さない「対象地域の方がすでに避難をしています」という文を示した“同調バイアスが低い条件”でも、避難の必要性が「統制条件」より高く評価されたという結果が得られました。 「対象地域のほとんどがすでに避難をしています」という状況は実際にあまり見られないと思いますが、より現実的で、嘘にならない「対象地域の方がすでに避難をしています」でも、有意に避難を促進する効果が認められたことは重要な結果だったと思っています。 同調バイアスを使った避難指示を行うことで、自治体などからの避難指示に従う人が増えるといいなと思っています。 ―――今回の結果を踏まえ、有効な避難指示の出し方は? 今回、大きな効果は、“低い危険度”の状況で認められましたが、“高い危険度”の状況でも、“同調バイアスが高い条件”、“同調バイアスが低い条件”で避難行動が促進されることが示されました。 自治体がエリアメールなどで嘘をつくわけにはいかないでしょうから、避難所を開設し、避難する人が少しずつ集まり出した段階で、「対象地域の方がすでに避難をしています」という“同調バイアスが低い条件”と同様の情報を示すのは有効と思います。 特に、まだ状況が悪化しておらず、避難中に危険に遭遇する可能性が低い時期に、こうした情報を示すのが、避難中の被災を避けるためにも有効だと考えています。 一川教授によると、避難所に避難する人が集まり出した段階で、「対象地域の方がすでに避難をしています」という文言で避難指示を出すのが有効ということだった。 また、日本人の特性も関係しているのかについては、「今回の実験は、特に日本人の特性を調べようとして行ったものではなく、実験の結果自体は、日本人に限定的なものとは考えていなかった。日本文化は、同調圧力が強いということはしばしば指摘されてきたのは確かだと思うが、その確認のためには、他の文化圏でも同様の実験を実施し、データを比較する必要があると思う」と語っていた。 避難をせずに犠牲になる人を減らすためにも、有効な避難指示が確立されることを期待したい。