最近、30代の知り合いから、貯蓄を始めたいがどうしたらよいか、と聞かれました。
結論から言うと、
- SBI証券に口座を開設し、
- 7月から毎月66,666円ずつ、つみたてNISAを積み立てる。
銘柄は、次の3銘柄のうち好きなものを選べば良いが、分からなければ22,222円ずつ3銘柄を買ってもよい。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
そして、年末が近づいたら、来年から始まる新NISAの予約を入れて、積み立てを継続する。
それでは、最初の質問についてもう少し詳しく検討します。考えるべき要素はいくつかあります。
- 確定拠出年金
- NISAとつみたてNISAの選択
- 現在まとめて貯蓄できる金額と今後毎月貯蓄できる金額
- 将来引き出す可能性の高い時期
- 2024年からの新NISA
- 貯蓄の癖
以下、具体的に検討します。
1.確定拠出年金
貯蓄で節税効果があるのは、確定拠出年金、NISA、つみたてNISAですから、これらをフルに利用した後まで余裕があれば、課税される口座(通常は特定口座)を使った投信積立が考えられます。
確定拠出年金は、企業型、個人型(イデコ)、選択制があります。
掛金拠出時においては、事業主掛金は損金算入が可能で、加入者掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となります。運用時には運用益が非課税とされ、受給時(老齢給付金)においては、年金は公的年金等控除、一時金は退職所得控除の対象となります。このため、税制面で有利なのですが、原則として60歳まで引き出せないという特徴がありますので、そこがNISAとの違いです。
30代という年齢を考えると、まず、確定拠出年金をフルに利用して、余った余裕資金をNISAに使うのが賢明でしょう。この30代の人の場合、選択制確定拠出年金を毎月55000円かけていますので、貯蓄・投資の優先順位として、二番目にNISAを検討していますから、問題ありません。
2.NISAとつみたてNISAの選択
3.現在まとめて貯蓄できる金額と今後毎月貯蓄できる金額
4.将来引き出す可能性の高い時期
この3要素は一緒に考えます。
「つみたてNISA」の場合は、非課税投資枠は年間40万円で非課税期間は最大20年。制度のイメージを一言で説明するなら「少額で長期」です。
一方、従来の「NISA」の非課税投資枠は年間120万円、非課税期間は最大5年なので、「高額で短期」と言えます。
また、「つみたてNISA」と従来の「NISA」では、利用できる投資方法が異なります。「つみたてNISA」では、「毎月1回」など定期的に買い付ける積立投資しか選べません。従来の「NISA」の場合は、一括で購入してもいいし、積立で投資することも可能で、「つみたてNISA」に比べて自由度が高くなっています。
投資対象商品にも違いがあります。従来の「NISA」では、上場株式、ETF(上場投資信託)、リート(不動産投資信託)、投資信託と、幅広い商品が非課税投資の対象です。対する「つみたてNISA」は、金融庁による一定要件を満たした投資信託とETFのみが投資対象です。
現在のNISAは年間最高120万円、つみたてNISAは40万円投資できます。金額的には3倍の違いがあり、120万円というまとまったお金があれば、NISAに投資するのが効率的かもしれません。ただし、この考えは、NISAが今までロールオーバー可能で、これからも可能だという前提を置いた場合の話であって、NISAは5年後に終了することが決定しまいたので、今までの考えはそのまま通用しません。つみたてNISAは、20年間有効ですが、それ以前に引き出すかもしれません。例えば、10年後に引き出すとすれば、40万円のつみたてNISAよりも5年後に満期を迎えるNISAの方が有利です。120万円は40万円の3倍ですから、つみたてNISAの期間も3倍据え置くと、同じリターンがある(実際には複利効果が働きますので、つみたてNISAで15年間運用した方が得です)と考えられます。
5.2024年からの新NISA
2024年からの新NISAは、ぜひ利用すべきお得な制度です。それをスタートから順調に利用するためには、今年、NISAかつみたてNISAを利用しておいたほうが良いそうです。
SBI証券のQAを見てみましょう。
Q:現行のNISAを既に利用していますが、新しいNISAを始めるために別途手続きが必要ですか?
A:2023年中に一般NISA、つみたてNISA口座をお持ちのお客さまは、諸手続きなしで自動的に新しいNISA口座が2024年に開設されます。2024年以降に新しいNISA口座を開設される場合の手続き方法は現在調整中となりますので、SBI証券のホームページにて随時ご案内いたします。
さらに、口座開設だけでなく、自動的に積み立てる手順なども、今年中に慣れておけば、新NISAになった時もスムーズに運用できるでしょう。
6.貯蓄の癖
イデコやNISAは節税を利用できる良い制度ですが、もっと大事なことは、自動的に積み立てる癖を作ることです。昭和の時代は財形貯蓄(勤労者財産形成貯蓄制度)があって、生命保険のおばちゃんが手取り足取り世話を焼いてくれましたが、現在は、そのおばちゃんたちが会社内に入れず、財形の利回りも1%以下になったので、インフレ分もカバーできない状態です。
一方で、ネット証券が誕生・成長し、低コストインデックスファンドが手軽に利用できるようになったのですから、貯蓄の癖をつけてしまえば、昭和の時代よりもはるかに有利な貯蓄・投資が可能な時代になりました。
新NISAの始まる来年からでなく、是非とも今年中に貯蓄の癖を付けたいものです。