今年の初めから新NISAが脚光を浴びていますが、優先順位は確実に節税効果のある確定拠出年金の方が上だと思います。
NISAはイギリスの制度を参考にし、確定拠出年金はアメリカの401kを参考にしています。
アメリカでは自分で年金を積み立てて貯蓄しないといけないと言われていますが、現状はどうなっているのでしょうか。
2024年3月23日のCNBC makeitの記事を読んで見ましょう。以下は拙訳です。
Here’s how much money Americans in their 30s have in their 401(k)s
30代アメリカ人の401(k)預金額
30代のアメリカ人が定年退職を迎えるまであと30年あまりあるが、快適な老後を送るための貯蓄は十分ではないかもしれない。
ノースウェスタン・ミューチュアルの2023年プランニング・アンド・プログレス調査によると、アメリカ人は快適なリタイア生活を送るためには平均して130万ドル近くが必要だと考えている。
しかし、現在30代のアメリカ人の貯蓄額はもっと低い。全米最大の401(k)プロバイダーであるフィデリティ・インベストメンツの最新データによると、30代の口座保有者の401(k)残高の中央値は約20,400ドルである。データは2023年第4四半期のものである。
この金額の低さにはいくつかの要因が考えられる。フィデリティの「2024年リタイアメント・プランニングの現状」レポートによると、アメリカ人の3分の1強が、生活費の上昇が退職後の目標達成の妨げになっていると答え、27%がクレジットカードの負債返済が障壁になっていると答えている。
フィデリティ社によると、2023年第4四半期時点のアメリカ人の年齢別401(k)預金残高は以下の通りである。
退職の専門家であり、『Your Best Financial Life』の著者でもあるアン・レスターは言う: Your Best Financial Life: Save Smart Now for the Future You Want “の著者である老後の専門家、アン・レスターは言う。
「時間はたっぷりあります」と彼女はCNBC Make Itに言う。「ただ、もっと早くから貯蓄を始めた場合よりも、少し積極的なペースで貯蓄をすることになるでしょう。
30代の人々は、雇用主とのマッチングを含めて、給与の約11%を退職貯蓄に回しており、フィデリティが推奨する貯蓄率15%をわずかに下回っている。
あまり犠牲にしているように感じずに貯蓄率を高める一つの方法は、毎年1%か2%ずつ拠出額を増やすことだとレスターは言う。多くの年金プランでは、自動エスカレーション機能によって自動的にこれを行うことができるので、毎年拠出額を変更するのを忘れないようにする必要もない。
「一度に全部やる必要はありません。コツは、本当に、本当にゆっくりやることです。」
しかし、退職のための貯蓄が何もない場合は、昇給のうち401(k)に充てる割合を増やしたり、将来のボーナスや税金の還付金の一部を積み立てるなど、短期的な犠牲を払う必要があるかもしれない、とレスターは言う。
「将来の昇給を貯蓄に回すと自分に約束すれば、それほど苦痛にはならないでしょう」と彼女は言う。
いつまでもこのような調整をする必要はないことを忘れないでください。退職金貯蓄の目標や他の経済的優先事項が順調に進んでいると感じたら、自分へのご褒美を始めてもいいとレスターは言う。
「私のお勧めは、緊急時の貯蓄を増やし、401(k)に十分な額を拠出して雇用主のマッチングを受け、休暇のような良いことのために貯蓄することです」と彼女は言う。
日本の現状を2024/01/10のNRIのレポートで見てみます。
データで見る確定拠出年金の現状~積極化に向かう確定拠出年金の資産運用~
確定拠出年金制度(DC)については、2023年12月13日に公表された資産運用立国実現プランでも、運用の保守性が強いと指摘されている。もっとも「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)」(運営管理機関連絡協議会)や「iDeCoの加入等の概況」(国民年金基金連合会)によると、未だにその程度は十分でないにせよ、運用の保守性は解消に向かいつつある。
運用資産が着実に増加する確定拠出年金
2023年3月時点の確定拠出年金(以下、DC)の加入者は企業型とiDeCo(個人型)をあわせて、前年比74万人増の1,095万人となった。運用指図者(以前に勤め先もしくは自身で掛金を拠出し、現在は拠出せず運用だけ行っている人)を含めた制度利用者数は、1,212万人(前年比83万人増)に達している。
運用資産残高は制度創設来21期連続して増加し、23.2兆円である(図表1左図)。このようなDC残高の安定的な拡大は、掛金による資金流入に支えられている。加入者1人あたり月額掛金は1.5万円前後と大きな増減はないのだが、加入者数の増加と共に掛金総額は増加し、昨年度、1兆8,200億円まで拡大している(図表1右図)。受給の裁定請求を行う人も増えているが、その給付金や一時金による資金流出は昨年度でも5,300億円に過ぎない。これらに投信の運用損益や他制度との間の資産移受換等の「その他の要因」が加わりDCの運用資産の増減が決まるわけだが、図表1右図を見ても分かる様に、掛金要因が他に比べ多額なため、投信による運用損が相当の額に達しない限り、DCの運用資産額の増加は続くと考えられる。
図表1 確定拠出年金(DC)の運用資産総額
DC運用における保守性は改善に向かう(1)-投信で運用する人が増加-
確定拠出年金における資産運用は過度に保守的だとかねてより指摘されてきた。具体的には、預貯金や保険などの元本確保型のみで運用している者の割合が多いことや、運用資産残高に占める元本確保型商品の残高が大半を占め、投信の残高割合が低すぎる点などが、問題視されてきた。もっとも、最近ではこの問題は改善に向かっている。
図表2左図は企業型DCにおける元本確保型のみで運用している者の割合の推移を示しているが、統計が公表された2020年3月以降年々その割合が低下し、2023年3月には26.7%へと4年間で7.2%低下している。また図表2右図は元本確保型のみで運用している者と投信でも運用している者のそれぞれの人数の推移を示しているが、これをみると、元本確保型のみで運用している者は3年間で30万人減少し、投信でも運用している者が120万人増加し610万人を超えていることが分かる(注1)。
図表2 企業型DCにおける運用状況
DC運用における保守性は改善に向かう(2)-純資金流入額の9割が投信へ向かう-
また、運用残高ベースでみても元本確保型商品の割合が低下し、投信比率が高まっている。図表3左図は運用資産残高の推移を示しているが、これをみると投信比率はDC全体で2018年3月の47.1%から2023年3月の60.7%に、5年で13.6%増加している。資金流入額で見ると、一層顕著だ。元本確保型への資金流入額は数年前より減少し、投信への資金流入額は大幅に増加している。この結果、DC制度への資金流入額に占める投信への流入額の割合は、2018年3月期の51%から2022年3月期には90%にまで上昇している。この資金流入の中には、掛金による流入以外に、過去に購入してきた運用商品のスイッチング(買い換え)による資金移動も含む(注2)ため、スイッチングを行った一部の人の動向を強く反映している可能性はある。いずれにせよ、運用資産運用残高ベースでみた投信比率の上昇は、投信の投資対象資産の価格上昇ばかりでなく、加入者等の運用姿勢が総体として積極化していることも寄与していることは確かだろう。
図表3 DCの運用商品選択状況
若年層を中心に投信比率が高まる
DC資産における運用の保守性の解消は、特に若い世代で顕著である。年齢階層別の平均資産配分(図表4)をみると分かるように、かつて(例えば、2017年3月期)は、20代は30~40代に比べ長期間の運用が可能であるにも関わらず、運用が保守的になっていると指摘されていた。それが、企業型、iDeCo共に変化している。投信比率でみると、企業型の場合、2017年3月期の段階では20代は30~40代に比べ10%近く低かったが、2023年3月には、その差は数パーセントに縮小している。iDeCoの場合は、より変化が明瞭で、最近では20代の投信比率は82%まで上昇し、30~40代より高くなっている。
なお、DC資産における運用の保守性の解消は、30代以降の年代でも生じている。2017年3月から2023年3月までの6年間で30代以降のどの年齢階層でも投信比率は、企業型で10%ポイント、iDeCoで20%ポイント程度もしくはそれ以上上昇している。この間のDC向け投信の平均パフォーマンスは+40%程度であるため、誰もスイッチングも掛金の配分変更をしないと仮定すると、投信比率は企業型では5%ポイント程度、iDeCoでは12~14%ポイントしか上昇しない。これを上回る投信比率の上昇は、各年齢階層でスイッチングや掛金の配分変更を行うことによって投信比率が上がったことを意味している。
確定拠出年金における運用は、20~30代を中心に、平均的には積極化してきている。しかしながら、加入者の4人に1人は未だに元本確保型のみで運用を行っている。彼らが、他に保有する資産とのバランスを考えた上で、元本確保型を選択している場合であれば問題はないが、無関心や判断の先送りなどの結果として選択されている場合も多いと言われている。言うまでもなく、確定拠出年金では、自身の選択する資産配分が将来の給付水準に影響を及ぼす。筆者が受給期を迎えた確定拠出年金経験者に行ったアンケート調査では、制度に対する満足度と運用収益率には相関があった(注3)。加入者が受給期を迎えた時に後悔しなくて済むように各々が資産配分を行うべであり、それを支援して行くことが制度運営側の使命であろう。
図表4 確定拠出年金(DC)の投信比率(利用者の年代別)