◎今日のテーマ:投資は一括か分散か
退職金、相続財産の投資
退職金、親からの遺産相続などで、数百万円、数千万円のまとまったお金が入ってきた時の投資は、一括投資すべきか、分散投資すべきか悩むところです。
分割投資なら50万円の機会損失
左の図は、各年100万円ずつ5回に分けて株式のETFに投資する場合です。真ん中の図は、1年目に全額を一括投資する場合です。右の図は、5年間で分散投資した場合の機会損失です。一マスが100万円としますと、マスは10個ありますから、1000万円分です。ETFの利回りが5%とすると50万円が機会損失になります。
分散投資のメリットとしては、リスクが減少することです。リスクには2種類あります。
① 高値掴みをしてしまうリスク
全額を一括投資した場合、その瞬間が相場のピークなら、損失を抱えてしまいます。逆に、同じ確率で安いこともあり得ます。数学の確率的には一括も、分散も同じですが、実際に損をした場合にはかなりのショックです。
② 最初に大きな損失が発生すると投資継続が困難
私の連れ合いは、最初の投資が2007年のサブプライム問題が表面化する直前でした。翌2008年にはリーマンショックでETFの価格が暴落しました。その後数年間、連れ合いは投資をしなくなりました。もし、毎年同額ずつを投資することとしていたら、リーマンショック直後の数年間に投資を継続していられたかもしれません。同じ時期に投資を始めて、リーマンショックによる精神的ショックで、損切りして投資をやめた人もいると聞きます。投資は、数学の確率論だけでなく、行動経済学と同様に、精神的な問題も考える必要があります。分散投資を単なる気休めと片付けて良いかどうかは難しいところです。なお、投資経験を十分に積み重ねた人なら、一括投資でも問題ないかも知れませんが、あまり経験のない人は、どちらが自分に合っているかをよく考えて決定すべきだと思います。
③ 手元に資金を置いておいた方が柔軟に対応
米国の長期金利が上昇したときに、手元に資金がないと買おうにも買えないことになります。ただし、その間、株式の相場が上がった時には、「株式を買っておけばよかった。」と思うかもしれません。多少の資金を手元に置いた方が、精神的には良いかも知れません。どちらが良いかは、本人の好みの問題かもしれません。
持株会の株式もハイリスクハイリターン
ただし、資産運用は「運」はによって左右されます。持株会の株式を例にとって、「運」をお話しします。
私の持株会株式
私は、勤めていた会社で20年以上、持株会に入っていました。積立金総額は1000万円です。退職後に、この株式価格が2倍に上昇したので、全額を売却して1306(TOPIX連動型上場投資信託のETF)に買い替えました、その直後にアベノミクス相場になり、さらに2倍以上になりました。この結果は、特に狙っていたのではなく、運良くそうなってしまった結果です。
連れ合いの持株会株式
連れ合いは、勤めていた会社で10年間にわたって、持株会に入っていました。積立金総額は400万円です。退職後も、その株式を保有していましたが、最終的に、その会社が倒産したので、すべてがパーになりました。他の株式なども持っていなかったので、損益通算などの所得税法上の恩恵も利用できませんでした。
分散投資による機会損失は保険の掛け金
持株会の株式を持ち続けるということは、リスクもリターンも大きくなるということです。投資も、まとまった資金を一括投資すれば、リスクもリターンも大きくなります。5年程度の分割投資にして、リスクを下げるのも有力な方法です。その時の機会損失は、保険の掛け金と割り切るのも良い考えかも知れません。