◎今日のテーマ:老後の資金と投資3
大沢真理
朝日新聞で3人の論客が老後の資金について語っているので、それらについて私の意見を書いてみようと思います。今日は大沢真理氏です。
大沢氏1953年生まれの65歳で、2019年3月まで東京大学教授でした。専門は社会保障論です。
大沢氏は、以下のような意見を述べています。
●が大沢氏の意見、
⇒が私の考えです
- 日本の高齢者は恵まれている。そう思っている人は多いのですが、全くの誤解です。バブル崩壊後、正規職につけないまま苦しい生活を続けるロスト・ジェネレーションには「年金をもらえるだけで幸せな生活」と映るのかも知れません。しかし、「豊かな高齢者」はほんの一握りです。所得格差はむしろ高齢者間の方が現役世代間よりも大きい。65歳超の貧困率は、約20%で、OECD36カ国でも高い部類です。単身高齢者の女性に限れば50%前後と、主要国で群を抜く高水準です。こうした高齢女性の貧困を生んでいるのが「男性稼ぎ主型」の年金制度です。夫が生きて働いている間は余裕があるが、先立たれたとたん、夫の勤労収入も基礎年金も無くなり、遺族年金だけになる。給付水準も不十分です。退職前に相応の金融資産を確保しなければ、年金だけで余裕がある生活を送るのは無理で働き続けなければなりません。
⇒ 恵まれていない高齢者の実態については、正直、よく分かりません。最近、年老いた女性が、ちゃんと歩けなくて困っている場面に遭遇することが、年1回ぐらいのペースであるのですが、その時「救急車を呼んだ方が良い」とアドバイスしても、「呼ばないでほしい。歩いて家に帰る。」と言い張っていました。しかし、一人で歩くのは無理なので、そこに居合わせた男3人が支えながら、住んでいるアパートまで連れて行きました。後になって気がついたのですが、その女性は、救急車に乗っても病院に支払うお金がないのではないかということです。
- 金利がもっと高ければ、高齢者が資金運用に頭を悩ますことはありませんでした。その点で政府・日銀の低金利政策が長期化したのは痛手です。
⇒ 1980年代までの金利は、5%以上だった時代もありました。しかし、日本だけでなく、ヨーロッパも低金利が続いているので、個人はそれを所与として、どう対応するかが大事なのではないでしょうか。大学教授は、政府・日銀に意見を言うのが仕事ですが、私たち庶民は発言の場がありませんから、自分がどう行動するかを考えたいと思います。
- 今の株価が好調なのは、あくまで年金積立金と日銀の株式購入によるものです。もし続かなくなれば、大暴落もあり得る。
⇒ GPIFと日銀が株式を購入すれば一時的に株価が上がるかもしれませんが、少し時間が経てば本来あるべき水準に落ち着くので、いつまでも高いままではいないと思います。
- 金融庁は預貯金に偏っている金融資産を投資へと回すことで、利回りを高めようという狙いですが、罪作りではないでしょうか。高リターンの金融商品は当然、リスクも高い。資産運用をあおるのは、高齢者にリスクがしわ寄せされるだけです。金融機関は高齢者向けに低リスク低リターンの金融商品を開発すべきです。
⇒ 金融機関が様々な商品を開発するのは望ましいことです。大切なことは、金融機関社員の高い給料を払い続けるためではなく、ユーザーのための商品を開発することだと思います。アメリカでは、バンガード社がそれを実現しています。
まとめ:大沢氏は、政府、日銀、金融機関、会社に対して提言しているので、一般大衆の資産運用面ではあまり参考になりませんでした。