昨日に続いてMBAプログラムのヒアリング調査です。
3.アンディ・ローズ シンガポール国立大学
「真剣な経営教育に対する積もり積もった需要は大きくなる一方です。」と、シンガポール国立大学(NUS)ビジネス・スクールの学部長アンディ・ローズは言います。同大学はアジア第3位のMBAプログラムです。彼のよって立つところのおかげで、説明は簡明です。シンガポール人の45%は外国生まれ、全日制MBA在籍の88%はシンガポール以外の国の出身です。「クラスメートだけ見ても、もともと国際的なMBAを取ろうとしているのです。」
2年前、NUS MBAは大きな見直しをし、全貌を劇的に変えました。その教育コースは、業界を移りたい人のために、最も転向しやすいMBAとして位置付けたと彼は言います。MBAプログラムは現在二つのカリキュラムを提供しています。伝統的なマーケティングと財務のスキルをフルに提供する標準コース、コア部分を体験すると同時にソフトスキルやプレゼンテーションの専門技能を優先させるコースです。このコースでは、小さなチーム・プロジェクトを作って、現実のビジネスに解決策を売り込むのです。
「シンガポールが目標を設定するときには、単にアジア最高の一つを狙うのではない。」とローズは言います。「アジアのビジネススクールだけではなく、ロンドン・ビジネススクール(ヨーロッパ第3位)、INSEAD(ヨーロッパ第2位)に加え、ハーバード、スタンフォード、シカゴのブースと競争したい」のです。3校ともアメリカのランキングのトップ5に入っています。
4.フランツ・ヒューカンプ ナバラ大学IESEビジネススクール
フランツ・ヒューカンプは最近IESE学部長就任3周年を迎え、就任当時と同様にMBAの将来に関して強気です。「我々は、全てのレベルにおいて猛スピードで変化する時代に生きています。」と彼は言います。「現代社会が必要としているのは、様々なたくさんのことをできる人で、それにはジェネラリスト的な観点が本当に必要とされる。」
衰退している米国MBAプログラムと異なり、61年の歴史のあるIESE MBA――ヨーロッパランク第6位――は、過去10年間成長し続け、55カ国の学生を引き付け、平均年齢は29歳です。キャンパス内では同郷の人と座ることは許されません。「我々の独特な価値提案の一つは、グローバル・ビジネスに焦点を当てた非常に国際的なプログラムだということだ。」とヒューカンプは言います。「教育に当たっては、チームをベースにしたプロジェクトをたくさん使い、チームは多様性を最大化するように組みます。」約25パーセントのIESEの学生はアジア出身で、35%がヨーロッパ、残りが南北アメリカだ。」
ゴードン・ゲッコウ・スタイルの(利益を追求して倫理観の崩壊を招く徹底した)資本主義ではなく、持続可能性や永続するビジネスに焦点を当てて、IESEのバルセロナ校に学生を引き付けることも良くあります。ヒューカンプは、新コースを開設しました。それは、将来のビジネスを作り出すかもしれない新技術について検討するもので、将来の変化に適応できるチャンスを卒業生に与えようとしたのです。「万能で、ジェネラリストで、全体観を持った将来のリーダーが望まれていることは確かだ。倫理観も持ったそういうリーダーを、生我々は生み出すのだ。」
シャロン・ホジソン アイビー・ビジネス・スクール・ウェスタン大学
シャロン・ホッジスはカナダでトップにランクされるビジネス・スクールに、7か月前に就任したばかりです。しかしこのビジネスは衰退ではなく活況を呈しています。「統計数値を見ると、マスター・プログラムの志願者合計は全体として二けた成長を示しています。」と彼女は言います。「MBAに対する需要があることは明らかです。」
オンタリオ州ロンドンにおけるアイビーのプログラムは単なる講義というよりは、主に事例に基づく教育です。「どうやって問題を解決するか、どうやって説得できるようになるか、納得できるか、というリーダーシップスキルを、学生が身につけるために、実体験に近い経験を生み出したいのだ。」とホジソンは言います。彼女は将来の問題を熱心に解決しようとしていて、自分たちの提供する教育を再検討・強化する戦略を始動しました。重要な変化は過去との決裂でしょう。ホジソンのバックグラウンドはAIで、変化する技術にどうやって適応するかを、学生に良く理解してほしいと思っています。
就任したときに、MBA卒業生のネットワークの強さに驚きました。卒業生の総報酬の平均は103,024カナダドル(1カナダドル82円とすると、850万円)です。ほとんどがカナダ出身で、外国出身の学生は25%しかいませんが、外国人志願者からの需要は増えています。既にグローバルになった卒業生ネットワークは、ますますグローバルになることを意味しています。学生と学校との関係をしっかりと保たせたいと、ホジソンも就任時から望んでいます。「将来、どのような仕事が生まれていくのか、どれほどたくさんの転職をするのかを考えた時、キャリア管理の中で、学習と指導に取り組み続けるようにすることは大事だ。」
以上がビジネスウィークの記事でした。先日早稲田大学の学生と話をしたときに、彼は来年オレゴン州ポートランド州立大学に行くと言っていました。MBAではなく大学への短期留学だそうです。私の従妹の子供も今年、高校を卒業してオハイオ州の大学に入学しました。昔より留学する若者が増えているような気がします。1980年代、日本はジャパンアズナンバーワンと言われ、企業の時価総額の上位を占めるようになって、浮かれた時期がありました。その頃、国の借金はほとんどなかったのです。この30年間で、日本は本当にひどい状況に陥ってしまいました。しかし政治家も国民もそれを認識していないようです。若者はもっとチャレンジをするようになってほしいし、シニアも自分たちができることを考えなければならないでしょう。