なぜMBAはアメリカ以外どこでも盛んなのか1

MBAの価値

最近はアメリカでMBAをとる人も多くいるような気がしていましたが、当のアメリカではあまり流行っていないのでしょうか。私が大学生の頃(40年以上前)は、就職にあたって海外留学はあまり有利に働きませんでした。それどころか、英語ができる人は逆に普通の仕事ができないというようなレッテルが貼られていました。しかし、最近は生え抜きの役員より、プロの経営者を珍重する場合も多くなって、MBAという経歴が目立つようになりました。実際はどうなのでしょうか。ビジネスウィーク(2019年12月10日)の拙訳を題材に考えてみたいと思います。

なぜMBAはアメリカ以外どこでも盛んなのか

カナダから中国まで、トップクラスのMBAプログラムは、将来の経済を見据えた志願者が増えていると発表しています。

チョット見た感じでは、MBAはトラブルを抱えているように見えます。

グラデュエイト・ マネージメント・ アドミッション・カウンシル Graduate Management Admission Council (GMAC:この委員会は、有望な学生にとって大事な指標となるGMATテストを運営しています)によると、今年世界中の上級ビジネスプログラムの志願者は6.9%減少しました。しかしアメリカ以外の世界では、話が違うようです。

GMACのデータによれば、ヨーロッパの全日制MBAプログラムの3分の2は、2019年の志願者が増加していると発表しましたが、アジアにおいても同程度増加しました。カナダのビジネススクールの過半も増加していますので、アメリカとは対照的です。アメリカでは労働市場が活況で、授業料が膨らんでいるため、全日制MBAプログラムの4分の3で、志願者が減少しています。

普通なら名門のアメリカのMBAプログラムに押し寄せるような、アメリカ人以外の学生は、トランプ政権による移民敵視環境によって追いはらわれてしまい、母国の大学に応募する結果となっています。幅広く基礎的なパワーシフトが新興国に向かい、中国などが世界の舞台で台頭してきたことによって、外から見るとMBAプログラムの人気が上がってきたのです。

ブルームバーグ・ビジネスウィークは、同誌の年次調査でカナダ、アジア、ヨーロッパにおける様々な規模、ランキングの5つのビジネススクールの学長と話しました。アメリカ以外でMBAをとることが以前にも増して重要になった理由を簡潔に説明してくれました。

1.ディング・ユアン 中欧国際工商学院ビジネススクール China Europe International Business School (CEIBS)

アジア経済の台頭のおかげで彼らのMBAプログラムは恩恵を受けたと、ディング・ユアンは信じています。日本以外のアジアにおいては、MBAの需要は何十年も少なかった、と彼は言います。地元の学生は、欧米の多国籍企業に入るための入り口として、歴史的にMBAを使っていたのです。

「このトレンドは劇的に変わりつつある」とユアンは言います。今日では、中欧商工学院出身の中国人MBA卒業生に対する募集の半分以上は、世界的な教養があり異文化のエキスパートを求める中国企業からのものです。同校のMBAの授業が英語で行われていることが役に立っています。全体としてMBA卒業生の94.3%が3か月以内に就職しましたが、これは過去10年間で最高です。

多国籍の学生が、国内3か所――北京、上海、深圳(ほかに外国が2ヶ所)――の中欧工学院キャンパスでMBA170-180人のグループに入ることも役に立ちます。今年は、モロッコとマルタから最初の学生が中国に来ました。1994年に中国政府とEUが同校を創立して以来初のことです。中欧工学院はブルームバーブ・ビジネスウィークのランキングではアジアのナンバーワンの学校ですが、このモロッコ人は絶好の機会だと思って入学しました。というのは、カサブランカと北京の間に初めて直行便が飛び、組み込まれた教育課程の中で中国内陸部に研究旅行するので、地方の慣習を理解する助けになるのです。中国と海外の学生を50-50にすることが、ユーアンの目標の一つです。「中国はすぐに世界第一位の経済になり、我が校が中国の中で重要なのですから、世界トップの学校の仲間入りをするでしょう。」

2.フィオーナ・デバイン  アライアンス・マンチェスター・ビジネス・スクール(Allliance Manchester Business School)

米国でMBAの学校が地盤を維持するのに苦労していますが、アライアンス・マンチェスター・ビジネス・スクールの学長、フィオーナ・デバインは、ヨーロッパと英国には将来があると信じています。「極めて専門的な分野出身の人材を獲得する。彼らがもし次のレベルにキャリアを進ませたいと思うなら、自分の会社が位置する場所の全体観を必要とするのだ。」と彼女は言います。

さらに、2年間のMBAプログラムは、仕事を離れるには長い期間だということが分かっているので、学ぶための三つのオプションをマンチェスター校は提供しています。12か月、15か月、または18か月のコースです。4分の3の学生は18か月プログラムを選びますが、後で変更できます。

学生は、北部イングランドに集まる地元企業と一緒に実施するマンチェスター校のプロジェクトを好む傾向にあります。そこでは授業以外で働く機会を与えられ、コンサルタントサービスを提供するのです。こうすることによってプログラムが時代遅れにならないのです。「実業界はどんどん変わりますから、経営の教育はそれに遅れずについていく必要があるのです。」と言います。「実業界としっかりとしたつながりを持つことができ、常にカリキュラムに反映させて、私たちも変化するのです。」

<明日に続く>

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