年金のポートフォリオと運用実績

GPIFの資産構成割合

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産構成割合は、内外の株式・債券が25%ずつです。国債中心の運用から、国内株式・外国株式の割合を大幅に増やしたために、運用益が増加しました。

異次元金融緩和で収益改善

その結果、運用状況は改善されました。2001年以降の累積収益グラフの右軸は累積収益額で、+70.0兆円となっています。左軸は累積収益率で35%程度で、年率では+2.97%、ただし、国内の株式については、日本銀行の異次元金融緩和に支えられた業績なので、実力で収益が改善したわけではなく、不安はあります。また、外国株式についても、リーマンショック、新型コロナショックへの対策として、金融緩和を進めてきていますので、必ずしも喜んでばかりはいられません。

 

ここで過去の基本ポートフォリオを見てみましょう。

第1期中期目標期間(2006~2009年度)

第1期中期目標では、「年金財政は、実質的な運用利回り(賃金上昇率を上回る運用利回り)が確保される限り基本的には影響を受けないことから、年金財政上の諸前提における実質的な運用利回りを確保するよう、長期的に維持すべき資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定め、これに基づき管理を行うこと」とされました。

第1期中期計画においては、年金財政との整合性や長期的な積立金の下方リスクを最小化することに留意にした上で、リスク水準を国内債券による市場運用のリスクと同程度に抑えつつ実質的な運用利回り1.1%(名目運用利回り3.2%)が確保されるよう、以下の基本ポートフォリオを策定しました。

国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
資産構成割合 67% 11% 8% 9% 5%

第2期中期目標期間(2010~2014年度)

①2010年4月~2013年6月

第2期中期目標期間については、年金制度の抜本的な見直しを予定していることなどから暫定的な運用目標が示されたため、第1期の基本ポートフォリオを検証・確認の上、同じものを第2期中期計画における基本ポートフォリオとして定めました。

②2013年6月~2014年10月

2012年10月の会計検査院による指摘を踏まえ、暫定的に設定された基本ポートフォリオについて運用委員会において直近のデータ等を用いて検証しました。その結果に基づき、2013年6月、新たな基本ポートフォリオを以下のように定めました。

国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
資産構成割合 60% 12% 11% 12% 5%

③2014年10月~2015年3月

2014年6月、五年に一度実施される公的年金の財政検証の結果が公表され、併せて、厚労大臣から基本ポートフォリオの見直しを前倒しで行うよう要請があったことから、当時の運用委員会において新たな財政検証を踏まえた検討を行いました。その結果、デフレ脱却など、長期的に経済・運用環境が変化し、物価・賃金の上昇が想定される中で、従来の国内債券中心のポートフォリオでは、年金財政上必要な運用利回り(実質的な運用利回り1.7%)を達成することは困難と判断しました。

名目賃金上昇率から下振れリスクが全額国内債券運用の場合を超えないこと、株式等は想定よりも下振れ確率が大きい場合があることも十分に考慮し、予定された積立金額を下回る可能性の大きさを適切に評価するとともに、リスクシナリオ等による検証について、より踏み込んだ複数のシナリオで実施した上で、厚労大臣から与えられた運用目標(実質的な運用利回り1.7%)が確保されるよう、2014年10 月31日に以下の基本ポートフォリオに変更しました。

国内債券 国内株式 外国債券 外国株式
資産構成割合 35% 25% 15% 25%

第3期中期目標期間(2015~2019年度)

2014年10月に変更した基本ポートフォリオは、第3期中期目標期間において、定期的な検証を行ったうえで、引き続き同じものを用いました。

そして、2020年度からは現在の4等分のポートフォリオに変わりました。現在のポートフォリオは、昔からある典型的な投資パターンです。ただし、債券が内外合わせて半分になっている状態は、現在のような超低金利では効率的であるとは言えません。個人投資家なら、もっと債権を減らして株式の割合を増やす方が合理的であると考えられます。

外国の年金ポートフォリオ

それでは外国の年金のポートフォリオはどうなっているのでしょうか。いくつか例を挙げてみましょう。

名称 資産規模(兆円)
CalPERS (アメリカ)カリフォルニア州職員退職年金基金 40
CPPIB (カナダ)カナダ年金制度投資委員会 33
GPF-G (ノルウェー)ノルウェー政府年金基金-グローバル 115
GPIF 年金積立金管理運用独立行政法人 159

GPIF以外は、いずれも株式の割合が50%を超えていますので、株式中心主義であることが分かります。

運用実績の推移は下の折れ線グラフの通りです。紫色がGPIFで、他の年金に比べて低めで推移していますが、リーマンショックの2008年度だけは傷が浅かったことが分かります。

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